第8.5話 勇者召喚(された)
二話目です。あんまり寝てないです。自分のせいなのでお気になさらず…
日本 ○○県△△市 七月二十八日
「はぁ…」
自室のベランダで夜風に当たりながら物思いにふける。
響谷が事故で亡くなって、三ヶ月を過ぎた。
当時俺はしばらくそれを受け入れられずに、何度も彼の携帯にメッセージや電話を掛けた。
無論応答があるはずもなく、電話口から流れるのは使われていない電話番号だと伝える無機質な機械音声だけ。
「…ッ」
それを思い出すと、なんであの時仕事を放り出してでもいてやれなかったのか、どうしてあの日事故になんて遭ってしまったのか。
ずっと後悔と自責の念がグルグルと頭の中を支配する。
もう一つ、信じられないのは、
───自ら道路に飛び出した、という事だ。
特に自殺願望があるような人間では無いし、ましてそんな様子なんて少しも見せなかった。
…けど、自分の心情を隠すのは上手かった。
俺や周りが気づいていないだけで、心の奥底では死にたいなんて思っていたのかもしれない。
「…今更、だよな」
少し気晴らしにと、月明かりを頼りに外へと繰り出した。
静かな住宅街から商店街、河川敷へと抜ける。
気持ちが落ち着いたら帰ろうかと、堤防へ腰掛けようとした瞬間、突然酷い頭痛が襲った。
「ぅあッ!?」
視界が揺らぎ、足下も覚束なくなり転倒する。
だが、それを気にする余裕もなく、痛みにのたうち回る。
しばらくして痛みが引き…
「──いっ痛ぅ……ここは…?」
痛みから思考が戻ってくると、いつの間にか知らない場所へと座り込んでいた。
理解できない。ただでさえ突然の頭痛で頭がこんがらがっていると言うのに、さらに理解不能な状況に叩き込まれた。
「陛下…召喚は成功のようです」
「うむ」
陛下?召喚?一体何の話だ。
「勇者よ。突然の事で申し訳ない。まずは、貴殿の名を教えてはもらえぬだろうか」
「え、月海 悠ですけど…」
「ツキミ ユウ殿か。ユウ殿、どうか我らに力を…」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
いきなり話を進めないで欲しい。こっちは何も理解出来ていないのだ。説明が欲しい。
「ふむ、こちらも説明不足であったな。なんなりと聞いてくれ」
意外と親切な人みたいだ。この際気になることは全部聞いてしまおう。
「まず、なんで俺はここにいるんですか」
「我らが勇者召喚を行い、貴殿が選ばれたからだ」
「その『勇者』ってなんですか」
「貴殿のように召喚された異界の民の事だ。貴殿は聞いたことがあるだろう。かつての勇者達が言っていた『あーるぴーじー』とやらが語源だそうだ」
質問を重ねるにつれて、色々分かった。
人間と魔族は戦争中で、魔王が人間の暮らす地域を侵略しようとしている。
だが、昔の勇者達のせいで被害が大きくなりすぎて、中々戦争が終わらないという状況に陥ってしまった。
それを止めるために、魔王討伐という名目で条約を結びに行くというのが今回の勇者、俺の役割だそうだ。
「だがもし決裂した場合、ユウ殿の命が危険だ。よって、万が一に備えパーティメンバーを用意した。こっちへ…ん?もう一人いなかったか?」
「どうやら魔力酔いをしてしまったようで…」
「そうか…まぁ良い、後ほど会えるだろう。では、頼む」
そう言うと、国王と入れ替わるように二人の女性が前に出てきた。
「私はシャルロット・アルシオン。アルシオン公爵家の長女だ。『剣聖』の称号を賜っている」
「エリィはエリーゼ・フォン・ラーディンスです。国民の方々からは『聖女』と呼ばれています」
「月海 悠です。よろしくお願いします」
見た目こそ違うとはいえ、二人とも日本では考えられないほどの美女と美少女だ。
今はいないが、もう一人もそうなんだろうか。
「では、ユウ殿の恩恵を確認させてもらいたい。同行願えるか?」
「あ、はい」
俺は国王の後に続いて、部屋を出る。
…よくよく考えたらこれって異世界転移だよね?
え?マジ?今更だけど超興奮してきた。
ガッツポーズしていいかな。…ダメだよね、ここでガッツポーズしたら頭おかしいヤツだよね。
案内された部屋へ入ると、いかにもな雰囲気の老人が水晶を手に座っていた。
「…あなた様が、勇者様ですかな?」
「は、はい。そうらしいです」
「では…こちらの水晶に、手を…」
差し出された水晶に手を乗せると、老人はブツブツと何かを唱えだした。
「■■■■■■■■■…『鑑定』」
すると水晶が激しく発光し、それが収まると老人の手に一枚の紙が握られていた。
「陛下…これが、勇者様の恩恵です…」
「うむ…──ユウ殿にも見せてやれ」
「かしこまりました…」
俺は紙を受け取り、サッと目を通した。
…なんか一ヶ所文字化けしてるのがあるな。
「この文字化けしてるのって何ですか」
「…残念ながら、私の力及ばず…その恩恵は鑑定できませんでした…」
「そう、ですか…」
結構不安だが、どうしようもないしな…後々考えよう。
そう思っていると、国王から声がかかった。
「ユウ殿。すまないが、我はこれからやらねばならぬことがある。詳細は後程伝える故、パーティメンバーと待機していて欲しい。もう一人とはそこで顔を合わせるといいだろう」
「分かりました」
「では、待機室へ案内いたします。こちらへ」
そうして俺は部屋を後にした。
そうして、メンバーのいる待機室に着いたわけだが…
──すごく入りづらい…!
だって女の子の部屋じゃん!違うけど!!
女の子しかいない部屋じゃん!!!
案内の人に本当に入っていいのか何度も聞いていたら、呆れられてついには一人にされてしまった。
だが外で待っているわけにもいかないので、意を決して中に入ることに。
「えーっと、失礼します?」
自分の事ながら、何で疑問形なんだと思いながら扉を開けた。




