作戦会議という名の雑談
「という訳でお前ら、ただいまだ」
「ただいま帰りましたぞ」
会議室と今決めた部屋の円形のテーブルについたそれぞれの隊の隊長の前で切り出す。
ジェントー、マッスル、ファル、マーガレット、バング。あと田中と佐々木。
たかだか一週間だが、懐かしい顔ぶれである。
ピエールがいないのは、先程鋼牙が呼びに行った時。
『中庭にて』
ピエールがベンチに例のあの人を彷彿とさせるポーズで座っている。
その前を一人の男、ここ重要、男♂が通りすがった。
その男♂をピエール♂が
「おい」
呼び止めた。
「はい、なんでしょうか?」
丁寧な物腰で答える男♂。ピエールは
「これを見ろ」
と、そう言いながら着ていたシャツのボタンを引きちぎった。
――バリバリッ――
ボタンが弾け飛び、マッスルほどではないが鍛え上げられた胸筋とキレイに割れた腹筋が現れる。
その躰を見た男♂が一言。
「ウホッ、いい男♂」
一部始終を見ていた鋼牙は気付かれないように中庭を後にした。
「お帰りなさい。で?ファルちゃんを泣かせてまで行った旅行の目的はなんだったの?」
「ああ、話すと長くなるんだが……」
『鋼牙説明中』
「なるほど……。お前は優しいのか卑怯なのか分からんところがあるよな」
「そうゆうミーハーなところが短所であり、長所であると思っております。でだ、その村でブローディアンの兵士と一戦交えてな、もしかしたら国際問題になるかも」
「ブローディアン!?」
バングが目を見開き、立ち上がる。
「どっ、どうした!?」
「あ、ああいや、なんでもない……」
いや、なんかあるだろ。と鋼牙は思ったが、触れないであげた。さすが鋼牙君優しい!!と鋼牙は思った。
「で、だ。かくかくしかじか、アブラカタブラゴコウノスリキレって感じで、村を活性化することになった」
『…………』
「ど、どうしたみんな」
「いや……いきなり村の活性化とか……」
「ぶっ飛び過ぎてて、どこから突っ込めばいいやら……」
「まあ、コウガがやると言うのなら協力するぞっ!!」
「サンキューマッスル。で、今からその村にみんなで行くぞ」
『…………』
「ど、どうしたみんな」
「コウガ殿……我々はもう二百人規模の大集団になっているのですぞ?」
「六人だったころみたいに、メルカバで移動なんかできないのよ?」
「そりゃそうだな。でも大丈夫!!こんなこともあろうかと、この屋敷は既に改造済みだ」
「もうなんでもありですな……」
「い、いつの間に……」
「みんなが出てる時に、自称高位のハウスゴーストに手伝ってもらってな」
「あー、屋敷を買って数日間あっちこっちでコウガ様とゴーストさんを見たのは、あれ改造してたんですか」
「そういえば、コウガちゃんよく地下室行ってたわね。あの時も作業中だったのかしら」
「ああ。今は亡きフライングホームは、強度不十分という理由で墜落した。だから100%タイタニウムで土台作ってやったよ!!」
「た、タイタニウムって、鋼牙氏の刀の材料の……?」
「あのクソ硬い金属ですかな!?」
「おう。これで万に一つも壊れることはねぇ。家を守る結界発生装置も作ったしな」
「へ、へぇ……」
なにしろデカイため、浮かすだけでもハンパない魔力がいるが、こないだのドラゴンの魔石を城から貰ってなんとか作った。
地球の魔力が溢れかえっているお陰で直ぐにまた溜まったが。
「そういう訳で、全隊員に通知しといてくれ。つってもなんにもしなくても飛んでくけどな」
「便利ですなぁ……」
「便利過ぎて怖いわよ。本来国家事業レベルの作業でやっと作る飛行船を、一人で作り出せるのだもの」
「国王になんと言うつもりなのでしょうね……」
鋼牙の魔道具を軍事利用したら最強になれるだろう。アーティファクトは一人で国を滅ぼせる。
阿弥陀にしても、ガントレットにしても。鋼牙の義手だけでもかなりの戦力であろう。
しかもまだまだ大量のアーティファクトが、ストレージストーンの中に収納されているのだ。
地球であれば、一週間足らずで全世界を制圧できるであろう。
この世界には勇者がいるので出来ないが。
「あ、そうだよ勇者。俺がいない間、なんか動きあったか?」
「あ、そうそう。伝えようとしたのを忘れてたわ」
マーガレットが取り出すのは一刷の新聞。広げてみると、一面にデカデカと書かれていた。
『勇者様一行、ダンジョンでの修行を完了!!』
勇者様一行は今日未明、ダンジョンの最深層から帰還された。この度の長期攻略により、『勇者』様、『賢者』様のレベルは世界最大の350へと到達した。
このレベルは古の賢者のレベル336を凌ぐ大記録であり、勇者様の強さが伺える。
修行を終えられた勇者様は個々での行動を開始。メイザス王国は勿論、周辺諸国の魔物関連の問題に駆け付ける体制をとっている。
また、同じく召喚された聖女様は総本山である神聖国家『ライカン』を訪れた後、各国の教会を巡られるご予定である。
「350。350ってなんだよあんのチーターが!!!」
「人のこと言えないでありますよ鋼鉄牙氏」
「努力もせずにそれほどの力を得る方がよっぽどズルですぞ」
「まあ、国からいなくなる俺達には関係無いよな!!」
田中と佐々木は思った。(あれこれフラグじゃね?)と。




