三、ガーベラ(下)
私は知っている。
誰よりも知っている。
人の心が、どう動くのか。
その表情に、仕草に、どのように現れるのか。
生きているのを装うことは、斯くも容易い。
この目の奥の光が消えていることに、気づけるものなどいない。
それなのに、私は此処にいる。
生きながら、死に続けている。
この頬をつたう涙の意味するところは、もう分からない。
うずくまって眠ることもできない。
ならば歩こう。
結局、そこに行き着く。
足は自然と、丘へ向かう。
あの、四角く白い建物へと。
このような果ての地まで来て、私は、気づいてしまった。
いや、気づかされてしまった。
リコとシロ。
あのように、誰かと手を取り合って、生きられたなら。
山茶花。
あのように、深く一人を愛しながら、生きられたなら。
全て失くしたこの身でも、全うに生きてゆける。
山茶花。
すでに潰えたこの胸が尚痛むほど、乞い願う。
ああ、どうか、私に。
その手を、握らせてくれやしないか。
完。
以下、おまけ
前回同様、作品の雰囲気を大事にしたい方は見ないでください。
(ことさらにぶち壊しです)
かまわんよ、という方はスクロール↓
↓
台無しなおまけ3
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白衣の男と女の子と犬が、建物の陰から様子を伺っている。
「……どうしよう?」
「そんなの、がばっといって手をにぎって、ぎゅーってすればいいじゃん。
ついでにちゅーしろちゅー」
「世の中では、それを痴漢というんだよ」
「……(骨ガムに夢中)」




