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咎人ニ愛ノ手ヲ  作者: 蜂矢ミツ
1/5

此処は、あの世と呼ばれる処。


天国でも、地獄でもなく。


この目に映し出されるのは、思い描いた景色。


自分の、誰かの。



『眠れや、眠れ。全て忘れてしまうまで』



眠りを誘う声だけが、静かに響く。



『全て忘れてしまえたら。新たな生を与えよう』



そう、全て忘れてしまえたなら。


どんなにか、良いことだろう。


やり切れぬ想いを抱えた咎人たちは、眠ることすらゆるされず。


此の地を、彷徨う。






川が流れている。


三途の川、というべきか。


あの世といえば、おのずと浮かび上がるもの。


此処は、そういうものでできている。


誰に知らされたわけでもないが、そう悟る。




此処では、名を名乗ってはいけない。呼ばれてもいけない。


全て、忘れなくてはならないのだから。


代わりに、一輪の花が授けられる。


それを、己の証とするように。




たおやかな、白色のガーベラ。


かつての私であれば、喜んで、髪にでも挿しただろうか。


何と皮肉なことだろう。


煤けて、汚泥に塗れた今の私には、身につけることすら耐え難い。


手放すこともできない。


ただ、この手の中で、持て余すばかり。




多くが眠る静寂の中、水の流れる音だけが鮮明だ。


あらゆるものを、洗い流すかのように。


その音に心地よさを覚え、砂利を踏みしめながら、川辺に沿って歩いてゆく。


どうせ行く宛てなど、どこにもありはしないのだ。


いっそのこと、この川の果てでも目指してみようか。

全4話。


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