紫陽花が咲く頃
僕はあの夏を忘れない。電車に飛び乗った可憐な女の子は、まるで天使が舞い降りてきたようだった。僕は黙って、いつまでもその美しさに見とれていた。電車に揺られて夏の風を感じた、あの日、『思い出に残るだろう』と僕は思っていた。
朝の電車に天使が
乗り込んできた時には
めまいがしたよ
君に魅せられて
釘付けになった
電車に揺られて、
紫陽花が見える頃、
君は窓に寄りかかって、
優しく笑っていたね
濡れた瞳が綺麗だった
君は鞄からハンカチを出しおでこと首筋の汗を拭いてしばらく放心していた
窓から夏の風が吹いくる
スカートが揺れていた
白い肌に艶の良い長い髪
甘い臭いに若さが溢れて
君は照れて戸惑っていたね
海の香りがしてきたよ
昨日の雨で砂浜が湿り
雨上がりの空を遮るカモメ君は窓から顔を出して
紫陽花に手を振っていた
セーラー服のスカートに
跳び跳ねた土の汚れがあり慌ててスカートを太股の間に挟んで焦っていたよね
ポケットからティッシュを取ると汚れを落として
そのままカバンに入れた
「オッス」と隣の車両から女の子がやってきたので、君は大きく腕を広げて
友達を強く抱きしめると
「オッス」と返して笑った
女性は花のように見える
あどけなさが残る笑顔
『そのままでいて欲しい』『変わらないでほしい』と強く願ってしまったよ
青春の只中にいる天使
輝く未来を期待する天使
『幸せになってね』と、
僕は心の中で呟いていた
ありがとうございました!




