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カカオに案内されて、晩餐が催される広場に足を踏み入れた。
煌びやかなシャンデリアの明るさに、まずは目を細める。
今日は急遽ということもあり、パーティーは行われず、宮殿に勤めている貴族を呼ぶこともなく、王族だけでの晩餐。
リクとリリエルと、そしてあたしだけ。
ああ、カカオまって去っていかないで!
あたしは目で訴えかけるけど、カカオは勘違いしたらしくて。
「ごゆっくり、お楽しみくださいねサクラ様」
ぎゅるるるる。
腹がなる。
背に腹は変えられない、戦にも飯は必須じゃあ!!!
あたしは、目の前のたくさんある豪華そうな料理を適当にフォークとスプーンをもって平らげていく。
あまりのスピードに、給仕係りも吃驚しているようだ。
骨付きチキンを、手でつかんでそのまま食べたら、一番遠くの席にいたリクが顔をしかめた。
「そなた、テーブルマナーも知らんのか。異界からきたといっても、所詮は下賎の出か?」
むかっ。
どうせ一般市民ですよ!
王族なんかと比べたらそりゃ雲泥の差でしょうね!
あたしは、骨になったものをリクの顔めがけて、投げた。
「うりゃああ!ホームラアアアン!!!」
席をわざわざ立って、野球のボールを投げるように力をこめて。骨はリクの顔に見事に当たり、リクは椅子ごと床にバタンと倒れた。
「リク陛下!」
「ポッポーポッポー」
リクは鳩のように鳴いて気絶した。
「だめだ、しばらく放置するしかなかろう」
近衛騎士が近寄り、リクの様子を見るが、目を回したリクを放置する作戦を選んだ。
普通、不敬罪とかで捕まるのかと思った。
正直、あたしはそれでもいいと思った。理不尽にいきなりこんな世界に連れてこられて、王妃になれとかさ。
でも、少し考えを改めさせられる。
「サクラ殿、気にせず好きなだけお食べくださいまし。今日は料理長が殊更手をかけた名物料理ばかりですぞ」
近衛騎士の一人が、あたしが投げた骨を拾って、それを皿の上に置いた。
「うん」
にこりと。
自然と、あたしの顔から笑みが零れる。
「これが、新しいテーブルマナーなのね!」
ガツガツガツムシャムシャ。
あたしの前の席に座っていたリリエルは、あたしの食べ方の真似をし始めた。
最初は大人しく上品に食べていたのに。
「そう、これがあたしの世界の上品な食べ方なの、リリエル!!」
へっへっへ。
「母さま、と呼ぶには早いし…サクラって呼んでもいい?」
ややうつむきがちに上目遣いで覗き込んでくる蒼い目。
フランス人形のような容姿。もじもじとしたもどかしい仕草。
い、いかん。
「い、いいよ」
ブバー!
あたしは、また鼻血を吹きだしていた。どうしてこう、ツボにくるストライク系を見ると鼻血を出すのだろう、あたしは。
給仕係りから、慌てて手ぬぐいを受け取り、それでなんとか鼻血を止めた。
そして、リリエルと二人で楽しく晩餐を過ごす。
スープはもちろん音を食べて飲むし、他の食事も音を立てて食べる。フォークとかスプーン、ナイフの持ち方なんて適当。作法なんてあったもんじゃない。
きっと、リリエルの教育係りとかリクが後で知ったら、がっかりするだろうリリエルのテーブルマナーの崩壊。
でも、あたしは自然でいいんじゃないかなって思う。
王族だからって、世辞に縛られなくてもさ。
自由気ままにあたしは生きます。
あたしには王がいる。
リクじゃない。
あたしだけの王が。
それは、あたし自身なのだから。
リクが目を覚まして、そして静かにテーブルマナーを守って食事を開始する。
あたしとリリエルはもう食べた後で、給仕係りが運んでくれた果物のドリンクを飲んでいた。
「先ほどは言い過ぎた。撤回する」
「あ、うん」
ずずーっと、ストローから音をたてて飲むドリンクは炭酸がきいていて美味しかった。
「そなた、正妃になるつもりはないか?はじめて見た時は少し貧相と感じたが、こうして見ると傾国とまではいかぬが美姫だ」
「ないわ」
傾国ねぇ。そんなに美人じゃないって。まぁ言われて嬉しいけどさ。
「そうか。ならば寵姫として宮殿に留めるしかないな」
「そんなのもいらない。あたしは何の身分も欲しくない」
「それでは、こちらが困る。宮殿に住まうのなら、相応の身分がなくては。ここは召使以外は貴族以上が住んでいる」
「え。サレイやリンドウも貴族なの?」
そういえば、サレイは向こうの世界で、自分で貴族の血を引いているといってたっけ。
「いや、サレイは平民出身だ。まぁ、上流貴族の大臣の養子になって今は貴族となっているが。リンドウは生粋の貴族だな」
はぁぁぁ。
高嶺の花かぁ。
リンドウかっこいいのに。




