技校祭
技校祭開催まで一週間をきった。
僕は魔術学院に欠席届けを出す。レオナに借りた妖精の髪飾りに夢中になってなければ、もう少し余裕があった。でも、過ぎてしまったことは仕方ない。
個人展示の最低出品数が二十。できれば三十ほしい。
試しに技術学校で求人を出してみる。大銅貨でつれば、希望者は集まったが、僕の望む技術をもっていなかった。
技術の高い人は個人展示で現在忙しいし、そういう人を手助けできる人はだいぶ前から雇いいれられている。ぎりぎりで求人を出しても、たいした人は残っていなかった。
仕方ない。サムイルとアルシェイドに手伝ってもらう。
「これは、いいのか?」
「革使っているから、革作品だ」
アルシェイドは長方形の革に耐熱魔方陣を魔力で刻んでいる。魔力持ちにはあまり必要ないが、火種を持ち歩く人の火傷を防ぐのに使えた。
本当は小袋にしたかったが、加工技術持ちがつかまらなかったので長方形のままにする。技術学校で需要はないかもしれないが、旅商人を相手にしているギルドなら買取ってくれだろう。
サムイルは正方形の革に保温魔方陣を刻んでいる。これをコースターにすれば、上に乗せたカップの温度が下がりにくくなるはず。
完全に下がらないほど強力ではない。現在なべ敷きサイズでティーポットを乗っけて使用実験中。これで、作業中にお茶を淹れなくても暖かいお茶が飲める。
僕は二人が刻んだ魔方陣に動力となる魔石をはめこむ。クズ魔石を砕いて使うので、革製品であり魔具でもある作品になった。
どっちも六十づつ作っておけば、展示台の上は埋まるだろう。これで、最低条件は満たしているし、あとはいっぱいいある牙猪の牙を加工しよう。
展示品、牙猪ばかりになるけど、素材についての規定はなかったから問題ない。
問題のある点について、担任の先生に相談に行く。ラムセイル先生に相談に行くように言われた。
併用入学はよくわからないらしい。
「技校祭と演習がかぶっているんですが、どうしたらいいですか? 僕としては技校祭を優先したいです」
「前日のチーム分けの不参加は大丈夫だ。チームメイトに技校に話し合いに行ってもらってもいい。だか、演習はダメだ」
だよね。最終学年以外は病欠以外認められていない。
病欠も治癒魔術使える先生がいるからほぼ成立しないし、実質強制参加だ。
「でも、展示販売なので、売り子としていないといけないんですが?」
「技校のクラスメイトとに頼めないのか?」
「僕、個人展示です。クラスメイト知らないし、技校の担任の先生には近寄りたくない」
「こっちで問い合わせておく」
「お願いします」
売り子といっても常に客が来ることもないだろう。ひまつぶしがいるな。安売りするつもりもないし、昼飯とおやつも用意して、のんびりしていよう。
技校祭最終日は不参加で、魔術学院の演習を優先しなくてはいけないようだ。なので、僕が参加するのは四日間になる。
個人展示者に与えられるねは体育館だ。紐で一人分の枠に区切られている。体育館の真ん中あたりは、実績のある生徒で、ない生徒が壁にそった場所だ。
僕は技校祭における実績はないが、夏に賞を取っているので、出入り口に近い壁沿いだった。
場所の確認が終わると、技術学校で借りられる物を見に行く。展示作品を並べる机くらいは借りたいが、貸し出しは早いもの順だ。
貸し出し申請の列は長い。長時間待った挙句借りられるのが、普段授業で使ってキズ汚れありの机だ。
僕は列に並ぶ労力を別のことに使うことにする。
魔術学院に戻ると、工房をこもった。
移動を考えて、机は組み立て式にしよう。あと、四日間居心地よく過ごすためにイスの座り心地にはこだわりたい。
当日は大荷物になるが、採取鞄になら全部入るだろう。
あとは、お釣りの準備しておけばいいか。
技校祭初日。
僕は早起きした。お昼のお弁当を作って、おやつも作って、水筒も用意する。そんな準備が終わってから朝食を作っていると、アルシェイドが起きてきた。
「おはよう」
「今日からだったか? 技校祭」
「うん。食べたら行く」
どうにも展示場に物を放置するのが嫌で、毎日設置と撤収をする。
展示用の机や僕のくつろぎ用の机やイス。あと、ひまつぶし素材を採取鞄に入れている。手には食べ物を入れた鞄と展示販売する作品を入れた鞄の二つだ。
技術学校には余裕を持って着いたが、すでに作業している人は多い。僕はまず、自分の割り当て場所を魔術で掃除した。
通路ぎりぎりに展示台を一つ置く。残りの場所は僕のくつろぎ空間だ。ど真ん中に作業台を設置する。
あとは使い心地よく配置すれば終わりた。
始業時間になると先生たちが見回りにくる。僕のところに来たのは知らない先生だった。
値段設置に驚かれる。
「魔方陣を刻んで、魔石をはめこんだ魔具ですよ? 銅貨では売れません」
技校祭の僕の参加最終日なら、展示台も作業台もイスも売ってもいい。木で作るより軽かったから、海底ダンジョンの魔物素材で作っている。大銀貨が必要になるから、売れることは期待していない。
コースターと耐熱革は展示台に二十枚づつ並べる。牙猪の牙で作ったナイフは五つ並べた。
技校祭の開催を展示台のそばで待つ。
開催と同時に人がたくさん入ってくる。在校生ばかりかと思っていたら大人の姿も多い。保護者がかなり混じっているようだ。
僕は展示台の上にしかっりと値段表示をしている。うかつに近寄って来る人はいなかった。誰も寄ってこないようなので、僕は作業台まで引っ込む。
時間はありそうなので、少し凝った物を作ってみたい。牙猪の革を前に何にするか悩んでいたら、隣の人に声をかけられた。両隣も客がいないからひまらしい。
「お前、その値段設置マジ?」
「うん。魔具だから、ここで売れるとは思ってないけど」
「なら、赤字じゃないか」
「技校祭終わったらギルドに売りに行くから大丈夫」
もともと実習で狩ってきたものだから、赤字の心配はしていない。
「商業ギルドで買ってくれるのか?」
「いや、数が多いから販売委託になるんじゃないかな」
話していると、隣には客が来た。僕は作業台に意識を向け、構想を練る。買い物鞄にしよう。採取鞄ほど大きくなくていいけど、重さは軽減させたい。温度の違うものを一緒に入れられるようにするのもいいな。
技校祭初日の午前中は平和に過ぎていった。




