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国際交流会 閉会

アルシェイドに連れられ、僕はカフェに入る。外ではなく、店の中の席に座った。

チョコラーターをアルシェイドが二つ注文する。


「ルキノ、なんか言いたいことない?」

「僕は砂糖漬けになって乾燥させた果物が買いたい」

「ルキノ? そういうことじゃなくてさ、お前幻術類効かないだろ」

「最初のうちはかかってたよ。で? 何か問題あるの?」

「ルキノがないならないよ」

「なら、問題ないな」


アルシェイドはため息をつく。


「ルキノの判断基準はどうなっているんだ?」

「僕にとって危険かどうかだけど?」

「オレは安全判定なのか?」

「僕より強いけど、何かするつもりないだろ?」


僕より強い相手なんていくらでもいる。そんな相手に狙われたら困るけど、アルシェイドはよき隣人だ。

内包する魔力が人と違っていたとしても、逃げ出さなきゃいけない相手ではなかった。


一杯で大銅貨一枚と銅貨五枚するチョコラータはおいしい。甘くて、とろりとしていて、深い味わいがある。


「アドのおすすめなだけはあったな」

「帝国在住の人?」

「そう、食べ歩きが趣味だから」


アルシェイドがアドルに聞き出した帝国の食事事情によると、何を食べてもおいしいなんて店はないらしい。どの店もなぜこれをメニューにのせたのか不思議でならないものがあるそうだ。

しかし、その店でしか楽しめないうまいものも隠れている。


ゆっくりと味わいながら飲んでいると魔物の気配が、一つ一つ消えていく。もうすぐ鎮圧されるだろう。


「ルキノはこれからどうする予定?」

「買い物はいろいろしたいね。帝国にしかないものと帝国のほうが安いものは買っておきたい」


今日の騒ぎで、狙っていた店が営業しているかどうか不安ではある。


「そっちは?」

「アド待ち。終わったらここに来るから」

「結界消えたから、あんま待たなくていいかもな」

「それなら、ルキノも待ってろよ。道案内さすから」


のんびりと待っていると、アドルが来る。その頃にはもう魔物の気配はなくて、僕らが街へ向かったときには事後処理が始まっていた。




砂糖漬けにして煮込み乾燥させた果物を扱う専門店に連れて行ってもらう。色とりどりの商品が並んでいた。

なぜかアルドか二十種類くらい買ってくれる。高いけどいいのかな。もらわないなんて選択はしないけど。


次に向かったのは素材屋。個人にも売っているが、問屋よりの店だった。見たことのない素材を数個づつ選ぶ。店主に変わったものが好きならと、店を二つ紹介してもらった。

先に向かったのは紙を売っている店。魔術加工された紙が何種類もあって、銀貨が必要なほど買ってしまう。


次に向かったのは錬金術士の店だ。

高かったので、見るだけであきらめる。魔具は欲しいというより分解したい。加工された鉱物より、加工前の素材としての鉱物のほうが気になる。


アドルとは店を出たところで別れ、アルシェイドに半分荷物を持ってもらい宿へ向かった。

壊れた建物や血痕を見つける。かなり広範囲に魔物の被害が出ているようだ。




翌日、昨日の午後中止になった国際交流会の試合が、午前中に行われる。午後、予定より時間をずらして閉会式が始まった。

夜には予定通り、懇親会が行われる。


参加国の選手団は全員参加となっており、ドレスコードもあった。立食パティーの作法なんて習ってない。

僕は周囲をうかがいつつ、立ち回りを思案する。


聞き耳を立てていれば、西の方の国から勇者が来ているようだ。個人戦で優勝し、魔物の討伐にも積極的に参加していたらしい。


さすがは戦うために召喚された者だ。武勇の誉れ高い。

人だかりの中心にいるようで、姿は見えないが、強い魔力を感じられた。


しかし、魔人を相手にするには足りないように感じる。だからこそ、現在力を得るために学校に属し訓練しているらしい。学校に属しどうにかなるものなのか、疑問だ。


今回の国際交流会で名を売るために、学校に属して出てきただけな気がする。勇者の強さを宣伝するためにいるようだ。

勇者の隣に王族の姫がいるのも舞台劇を見ている気分にさせる。


一試合くらい見ておけばよかった。


勇者の魔力は強い。だか、魔力の強さ以外はどうなんだろう。勇者が大陸に安寧を与えてくれるならいいが、そこまでの力はなさそう。


僕は勇者に怖さを感じない。それは人の味方だからや、安全な存在ということではなく、敵になったとしても対処できるからだ。

正面から相手はできないけど、罠には落としこめる。勇者からは強さからくる慢心を感じた。


「サム、勇者の試合見た?」

「二試合、見たぞ」

「どんな感じ?」

「ハデな魔術を連発して、ゴリ押す」


どうやら魔術発動が速いようで、一度防御にまわると押しきられてしまうらしい。


「勇者と試合したかった?」

「もっと技術がついたあとなら」


それは、魔力以外はダメってことだろ?


サムイルはたいして勇者に興味がないようだ。

僕らは取り巻きになれるような地位はないから、食事を楽しませてもらう。帝国伝統料理は避け、地方料理やめずらしい果物なんかを狙う。

食事が終われば、ダンスになんて参加しない。さっさと会場をあとにする。




帝国議会が勇者召喚を示唆。

帝国新聞にそんな見出しがついた日、僕らはガイナート帝国を後にした。

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