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ここで新キャラ登場ですか?

 登下校でも昼休みでも廊下でも、桃坂先輩の顔を見なくなって、しんみりしていたのは数日だけだった。

 佐倉こころ。

 なんだか桃坂先輩よりもめんどくさい人にとりつかれてます。

 助けてください。



「おー。ぐーぜん。こころっちも今帰りー?」


 靴を履き替えていると、下駄箱の影から長身の茶髪男子がひょっこりと顔を覗かせた。

 偶然じゃないですよね?

 絶対待ち伏せしてましたよね?

 

「ちょーっと。なんで無視するかなー。夜道は危険がいっぱいだから一緒に帰ろうよー」


 まるっと無視して歩きだす私の隣に、譲先輩が大型犬みたいな勢いで駆け寄ってきた。

 ほんとこの人、先輩っていうより犬だよね。

 人間の言葉が通じないっていう意味でも。


 人通りのある道しか通らないから大丈夫だと、何度繰り返しても聞いてないし。

 しつこい相手には反応するなという桃坂先輩の教えに従って無視してみても。


「こころっちって、ほんとちっこいねー」


 勝手に人の隣を歩いて人の頭をぽんぽんして、毎度変わらない感想を述べている。

 いやいや。私が小さいのは事実だけど、先輩が大き過ぎるんじゃないですか?

 てかやたら頭を叩かないでもらえますか?

 これ以上小さくなったら困りますから。


 私の隣を歩くこの人、三年の譲先輩という。

 ちなみになぜ下の名前で呼んでいるかというと、名字を教えてくれないから。

 何度か尋ねたけど、「いいよ~。譲で」と言って答えてくれない。

 誰かに聞けば簡単に分かるんだろうけど、調べたら負けのような気がするので放置です。

 

 この譲先輩、私と桃坂先輩が一緒に登下校しなくなって本格的に別れたという噂が流れた直後に、何を思ったのか告白してきました。

 もちろん即断ったよ?

 気を持たせるなんてことは、一切しなかったはず。

 なのにこの人、諦めてくれなかった。

 何度困ると言っても、全スルー。

 桃坂先輩もそういうとこあったけど、この人も強引さでは桃坂先輩に負けてないよ。


「ねえねえ。こころっちはまだ桃坂に未練があるの? それとも未練たっぷりなのは桃坂の方なのかな?」


 しかもこの譲先輩、バスケ部だったそうで、桃坂先輩のことをよく知っているらしい。

 

「どっちにしろ、もう終わった恋をひきずっても仕方ないし、俺と新しい恋に生きてみよ!」


 終わったもなにも、まだ始まってもいないのですが。


「ねえねえ。こんどの土曜日、一緒に遊びに行こうよ」

「先輩、受験でしょ?」

「やったー。本日のこころっちの初コメントいただきー。心配しなくても大丈夫だよ。俺バスケで大学決まってるから。いやーうれしいなー。どこ行こうかなー。やっぱ初デートは映画かなー」


 いやいや。行くとは言ってませんから。


「先輩は大学決まって後は遊ぶだけかも知れませんけど、私はテストがあるから無理です」

「あーそっかー。そういや来週からテストだもんねー。じゃあさー俺が勉強見てあげるよ。これでも成績は優秀なんだぜっ」

「結構です」

「んーと、じゃあ図書館で十時にどう?」

「だから行きませんって」

「え? 早い? じゃあお昼からがいい? ならお洒落なカフェでお昼食べながらってどう?」

「……」


 ダメだ。全然会話にならない。

 まあいいか。

 別に約束した訳じゃないし、行かなきゃいいんだしね。

 

「もうすぐバレンタインだよねー。こころっちからチョコもらえると、俺チョーうれしいんですけど」


 私が無言になっても全然お構いなし。

 譲先輩の勢いは衰えない。

 ある意味感心するほど。

 それにしてもどうしてこの人私にこんなに関わろうとするのかな。

 背も高いし、顔もそんなに悪くもない。

 もてない感じはしないのに。


「あ、俺このバス停だから。こころっち、気をつけて帰ってね」


 その声に顔を上げると、バス停の前で立ち止まった譲先輩は、完全に無言だった私に気を悪くした様子もなくにこにこ笑って手を振っていた。

 無理にマンションまで付いてこようとはしないあたり、悪い人ではないんだろうけどねえ。


 軽くため息をついて、私は一人で歩き続けた。



  

 

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