爆弾発言は突然に
土曜日のショッピングモール。
明日一緒にチョコを作ろうと理子先輩と約束したので、友チョコの材料を買いに来ました。
レジを済ませたところで、なにやら人だかりに遭遇した。
なんだろう。
こんなところに芸能人でもいるんだろうか。
遠巻きにして眺めていると、人だかりがわやわやと崩れて、中から超可愛い女の子が現れた。
うわ。
真理奈先輩だよ。
私服だと可愛さがレベルアップしてるよ。
読者モデルしてるのは知ってたけど、これはもはや一般人の可愛さじゃありません。
ちょっとしたアイドルより可愛いんじゃないかな。
ぽかんと口を開いて眺めていたら、真理奈先輩に気付かれてしまった。
「あら、こころちゃん。こんなところで会うなんて奇遇ねー。折角だからお茶しましょ」
相変わらず強引な真理奈先輩に腕を引かれ、絶対に私が入らないようなお洒落なカフェへ連行されました。
お洒落なカフェでお洒落な紅茶セットからお洒落なカップに紅茶を注ぐ真理奈先輩は、雑誌のグラビアページみたいにお洒落です。
あ、私は無難にカフェオレです。
難しい名前の飲み物を頼む勇気はありません。
「もうすぐバレンタインだけど、こころちゃんは手作り派?」
「はい。簡単なものですけど」
「ふうん。すごいなあ。私は手作りなんて無理。美味しいんだろうなあ、こころちゃんの手作りチョコ」
「いえいえ。簡単なブラウニーですから」
「えー。私ブラウニー大好き。いいなー」
「えっと……」
これは欲しいと言ってるんだろうか。
目をキラキラさせて、いいないいなと連呼する真理奈先輩。
いやでも真理奈先輩の持っている、誰もが知っている有名ブランドの大きな紙袋に入っている高級チョコの方が、断然豪華で美味しいと思いますけど。
「じゃあバレンタインの日に真理奈先輩の分も持って来ましょうか?」
私が尋ねると、真理奈先輩の目が大きく見開かれた。
いやちょっとそんなに大きな目開いたら、落っこちませんか!?
上も下もまつ毛ながっ。
「ほんとっ!? 約束だよっ! 絶対絶対だよ!?」
はいはい分かりましたからちょっと静かにしようか?
お洒落なカフェですからね?
「やったー。こころちゃんのチョコゲットだー。うれしいなー」
そんなに喜んでいただけるものかどうかは分かりませんが。
「ところでこころちゃん、桃坂にはチョコあげるの?」
「ふへっ?」
唐突に聞かれて、変な声が出たよ。
「こころちゃんたちが別れたって噂が流れた時は嘘だろうと思ってたけど。最近、こころちゃん三年の先輩と仲いいよね? とうとう桃坂のこと振っちゃったの?」
「いやえっとあの」
どうして私が桃坂先輩を振った側になるんでしょう。
どちらかというと、私が桃坂先輩に振られる確率の方が高いと思うんだけど。
「そうだよねー。言いにくいよねー。まあ想像するに、桃坂に告白されて返事出来てないとかかなー」
「なんでっ……」
なんで分かったのかと口走りそうになったのを、必死に飲みこむ。
なのに真理奈先輩は嬉しそうにうんうんうなづいた
「だよねー。うんうん。こころちゃんの気持ちわかるっ」
これは一体どう対処したらいいんだろう。
絶対私が何を言おうが、真理奈先輩聞いてくれないよね!?
てか、正確に読み取られてるのが怖いんですが。
「桃坂の彼女なんて、大変そうだもん。あの三年の先輩、どうなの? 結構お似合いなんじゃない?」
「ないですないです」
「まさかこころちゃん、本気で桃坂と付き合おうとか悩んでるわけ? あの自己中男子と? デートだって自分の好きなとこにしか連れてってくれなさそうじゃない?」
確かにそうかも知れない。
ついついこの間の遊園地を思い出して、遠い目をしてしまった。
いや、楽しくなかった訳じゃないんだけど。
「だめだめ。こころちゃんは優し過ぎるから、桃坂に振り回されて疲れちゃう。桃坂の彼女には、桃坂を振り回すくらい勢いのある子じゃないと……」
「……」
そうだよね。
確かに、桃坂先輩の彼女に私なんか釣り合わないと思う。
桃坂先輩の隣に相応しいのは、もっと元気で明るくて可愛い……。
「あれ? んー? そう考えると私って結構、桃坂とお似合いなんじゃない? バレンタインに桃坂に告白してみようかなあ」
「えっ!?」
真理奈先輩の思いがけない言葉に、思わずカップを落としそうになった。




