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私の大好きな先輩なんです

「佐倉ー」


 と廊下の方から呼ぶ声に振り向くと。


「!!」


 宣言通り教室までお迎えに来た桃坂先輩の後ろに、理子先輩の姿を発見しました。

 理子先輩だ!!

 久しぶりの実物理子先輩にテンションアップしまくりです。

 来年は大学受験があるからと、今年のお正月は家族で海外旅行に行っていた理子先輩。

 携帯で連絡は取り合ってたけど、帰ってきてからも休み中は佐藤先輩が独占していたから、理子先輩に会うのは本当に久しぶりだ。


「あのさー……」


 なにやら言いかけた桃坂先輩の横をスルーして、一目散に理子先輩に抱きつく。


「わーい。理子先輩ー。久しぶりですー」

「元気だった? 冬休みは楽しかった?」

「元気でしたー。でも理子先輩に会えなかったから淋しかったですー」

「私も淋しかったよ」


 よしよしと理子先輩が頭を撫でてくれる。

 幸せだ。

 ひゅるり~と寒い風が背中に吹いているような気がするけど、今日の私は気にしません。


「ほらほら。佐藤が壊れる前に行くぞ」


 理子先輩を満喫していたのに、ひょいと襟首を掴まれ後ろに引っ張られる。

 わー。私の至福の時間ー。

 桃坂先輩に襟首を掴まれてじたばたしているうちに、理子先輩が佐藤先輩に捕獲されてしまった。

 あーあ。残念。

 

「お前ってほんと一之瀬のことが大好きなのな」


 呆れたような桃坂先輩の声。


「当たり前じゃないですか。理子先輩のこと世界で一番好きなのは私ですから」


 でも理子先輩は私よりも大事な人が出来ちゃったみたいだけど……。

 佐藤先輩とあーだこーだ言い合っている理子先輩は、言い合ってるんだけどどこか楽しそう。

 折角久しぶりに会えたのに、なんだか余計に淋しく感じるのは、贅沢なのかな。


「なーにしょぼくれてんだよ。ほら、カバン持って。行くよ?」


 私の通学鞄を持ってきてくれた桃坂先輩は、私にそれを渡すついでに私の髪をぐしゃぐしゃにして、楽しそうに笑った。




 久しぶりに四人で歩く帰り道。

 今日は始業式ということでお昼前に学校が終わったから、どこかへ食べに行こうということになりました。

 やったー。

 理子先輩と一緒にいる時間が増えた。

 それだけで淋しさを忘れて浮かれてしまう私は単純でしょうか。




「ちょっと佐藤」


 桃坂先輩がスマホをいじりながら、私たちの前を理子先輩と並んで歩く佐藤先輩を呼んだ。


「これ期間限定だって。俺、これ食べたい」


 スマホを見せる桃坂先輩の隣に佐藤先輩がやってきた。


「またファストフード? お前好きだね」

「いいじゃん。期間限定だよ? いま食べなきゃだよ?」

「僕はいいけど、理子は……」

「じゃあ佐倉、一之瀬にこれでいいか聞いてきて」


 そう言って桃坂先輩がスマホを私に見せる。

 私が?

 なんで佐藤先輩に言わないんだろう。

 佐藤先輩もどこか不思議そうな顔で桃坂先輩を見ている。


「ほら早く」

「はあい」


 まあいいか。

 ほんと、桃坂先輩って何考えてるのか分かんない時あるんだよね。

 でも理子先輩は大好きだから、喜んで伝書鳩します。


「理子先輩。桃坂先輩が期間限定バーガー食べたいって言ってますよ」

「じゃあショッピングモールの方? いいよ。ちょうど買いたいものもあるし」

「はーい」


 桃坂先輩に理子先輩の返事を伝えようと、後ろを振り向くと、桃坂先輩は佐藤先輩と何やら熱心に話しこんでいた。

 

「桃坂先輩、理子先輩いいって言ってますよ」


 そう言いながら、桃坂先輩の隣に戻ろうとすると、なぜか桃坂先輩に手でしっしと追い払われてしまった。

 なんですか。私は犬じゃありませんよ。


「了解。俺佐藤と話があるから、そのまま前歩いてて」


 佐藤先輩とお話って、学校ですればいいのに。

 あ、でももしかしたら学校でも佐藤先輩は理子先輩にべったりくっついてるのかな。

 もしそうなら、桃坂先輩が佐藤先輩と話ができる貴重な時間なのかも知れない。

 桃坂先輩って佐藤先輩のこと好きだからなあ。

 そしてもちろん私にとっても貴重な時間なのであって。


 よし。

 ショッピングモールに着くまで、理子先輩の隣で幸せな時間を満喫しちゃうぞ。


 

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