どんどん深みにはまっているような気がします
「おはようございまーす」
「おはよう」
校門の前には生徒指導の先生と、数人の風紀委員の生徒が立っていた。
寒いのにご苦労様です。
「おはようございます」
みんなと同じように、先生の前を頭を下げて通り過ぎる。
「おはよう。お前ら青春はいいけど、学生らしい交際しろよ」
……は?
先生、何言ってるんですか?
男女が並んで登校しただけでそんな注意を受けるものなの?
「はーい。わかってまーす」
先生が何を言っているのか理解できないでいる私の隣で、桃坂先輩が先生に返事をしていた。
なになに? 何を分かってるの? はっ。
その時になって、私はようやく気がついた。
まだ手つないだままじゃん!
真壁先輩のせいですっかり忘れてたよー!!
がーんという漫画のような効果音が頭の中で鳴り響く。
学校に着くまで、一体何人の人に見られてたんだろう。
ショックが大きすぎて、手を振り払う気力も出てこない。
先輩に手を引かれたままふらふらと生徒用玄関に入り、やっと先輩と別れて上履きに履き替える。
なのに下駄箱を出たところで、またもや桃坂先輩に捕まりました。
「ちょちょちょっと先輩。どこ行くんですか?」
そっちは一年生教室ですよ。
二年生はあっちですよ。
「教室まで送ってってやるよ」
いやいやお気遣い結構ですから。
教室まで送ってくれる必要もないし、今までそんなことしてなかったでしょ。
てかなんでまた手をつないでるの!?
離してくださいー!
「せせせんぱい」
なんとか手を取り返そうとするけれど、さすが元バスケ選手。
先輩握力半端ないよ。
秘かな攻防を繰り広げながら、桃坂先輩はどんどん一年生教室の前の廊下を歩いていく。
ひー。
すれ違う人たちからはもちろん、教室の中からも視線をびしばし感じます。
私は透明人間。
見えないみえないミエナテナイ。
「じゃーなー。帰りも迎えに来るからなー」
桃坂先輩は上機嫌で手を振りながら自分の教室に帰っていった。
その後ろ姿を見送って、自分の机にたどり着いた私はそのまま机に突っ伏した。
終わった。なんか色々終わったような気がする。
力尽きた私の周りに、さっちゃんたちが集まってきた。
「ねーねー、こころ。らぷらぷがパワーアップしてるんだけどー」
「ほんとー。冬休みは何してたのー?」
「いいなー。私も彼氏欲しいー」
冷やかすようなさっちゃんたちの声に、反論する気力もなく顔を伏せていると。
「やっと本格的に付き合い始めたんだもんね。そりゃらぶらぶでしょ」
頭の上から爆弾が落とされました。
この声は。
……いいんちょー。
きゃーっというみんなの悲鳴が響き渡る中、黙って恨めしげに委員長を見つめていると、委員長がきょとんとした顔で首を傾げた。
「あれ? 初詣でで会った時、桃坂先輩言ってたよね? クリスマスイブに付き合うことになったって」
委員長がそう言った途端、教室にまたもや黄色い悲鳴が響き渡った。
ごめんなさいもう勘弁してください。
私は無言でがくりと机に顔を伏せた。




