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大混乱の嵐

こころ視点です

 お昼を回っても、桃坂先輩はまだ帰ってこなかった。

 お昼ごはんどうするんだろう。

 待っているのにも飽きたので、桃坂先輩を探しに行くことにしました。



 桃坂先輩だったらどこへ行くんだろう。

 駅前? 公園? それとも。


 ぶらぶらと歩いているうちに、中学校の校庭が見えてきた。

 ああ。私、ついいつものランニングコースを歩いてたんだ。

 冬休みの校庭に、人の姿はなかった。

 ここじゃないとすると、誰かの家に行ったか、駅前にいるのかな。

 そうなると歩きまわっていても遭遇するのは難しい。

 校庭を取り巻くフェンスに沿って、ぐるりと一周してから家に戻ろう。

 そう思って歩き出したとき、微かに人の声が聞こえた。


 私の歩いていく方向にいるのだろうか。

 人の話し声はだんだんはっきりと聞こえてきた。

 一人は桃坂先輩?

 もう一人は、女の子。

 この声って。


「……夏輝と先輩だけの秘密にします。だから……」


 夏輝。酒井さんだ。


 その時、建物の影に隠れていた人影が、突然目に飛び込んできた。





 ……………………。





 くるり。

 私は回れ右をした。

 右左右左。

 足を動かして歩く。

 右左。

 二人は。

 右左。

 何してた?

 右左。

 抱き合ってた、よね?

 右左。

 顔がすごく近くて。

 右左。

 キスしてた?

 え?


 …………。




 うそーーーーーーー!!!!!!?






 心臓がばくばくいってる。

 なんだか目の前の風景も歪んで見える。

 なんでなんでなんで。

 ちょっと待って。

 よく分からない。

 


 気が付いたら家に戻っていた。

 人間の習性って怖いよね。

 無意識に桃坂家に帰ってたよ。

 でもこれからどうしよう。

 あんな現場を見て、冷静でいられる自信はない。

 何時になるかは分からないけど、桃坂先輩も帰ってくるんだろうし。

 絶対に普通に対応できない自信はある。



 ……逃げよう。



 とりあえず荷物をまとめてマンションに避難しよう。

 あと何日かしたら学校が始まるから、逃げても無駄かも知れないけど。

 でも今顔を合わせて、どんな顔をしたらいいのか全然分からない。


 決めたら即行動だ。

 二階の雅人さんの部屋に行って、荷物をまとめる。

 カバンを出して、持ってきていた参考書を詰めて、あとは身の周りのものを掻き集める。

 たったそれだけのことなのに、動揺しているせいか、棚の上のものを落として散乱させたり、気がつくと不必要なものまでカバンに入れようとしていたりして、なかなか仕事がはかどらない。

 何やってるんだろう私。

 散らかった部屋の真ん中で座り込んでいたら、涙が出てきた。


 何泣いてるの。私。

 どんどん困った状況に追い込まれてくだけじゃない。

 そうは思っても、もうどうしていいか分からない。


 とにかく涙を止めて、荷物を詰めて。

 現実に立ち向かわなきゃダメだ。


 私は腕でぐいっと涙をぬぐった。 


 




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