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どうやら外見天使の王子サマと私の話し声は扉の向こうまで聞こえていたらしい。

コンコン、とノックの音がして「フェリクス様?」と男の人の声がした。そうか、王子サマはフェリクスって言うのか。

ん?なんか、どこかで聞いたような声な気が……?


「リック!部屋に妙な女がいるのだ!!」

「ちょっ!?妙なって、アンタ!?」


ってか、リックってどっかで聞いた名前だぞ!?

リックってあのリックさん?

とか思っている内に、フェリクス君が不審者発言をしたせいだろうけど、勢いよく扉が開けられて既に抜剣した状態のリックが部屋に駆け込んで来た。

……ああー。なんか、デジャビュ?前回も似たような展開だったよねぇ……。

うん。私を見てちょっと驚いてるってことは間違いなさそう。二日ぶりですね、リックさん。


「……君は、確かマリエル様の部屋に居た……ミア?」

「はあ……。正しくはミヤコなんですが。お騒がせいたしております」


ぺこり、と頭を下げた私をリックさんは微妙な顔で見つめる。剣は抜き身のままだけど、何となくどうしようか迷っている気がする。


「ミアコ。何故フェリクス様の部屋に?」


やー。何故と言われましても、何と言えばいいのやら。

それにね?


「私、そちらの部屋には入っていませんよ」


私はお風呂場の扉を開けただけ。フェリクス君の部屋には踏み込んでいないのだ!

だって、帰れなくなったら困るじゃないか!それ以前にお風呂場が使えなくなって困っているけどな!

はああ、と盛大に溜息を吐いて、私は状況をリックさんに説明する。信じてもらえるかどうかなんてわからないけど。


「どうもうちのお風呂場がそちらの坊ちゃんの部屋と繋がっちゃったらしくて」

「は?」

「風呂場?」


フェリクスくんとリックさんがぽかーんとこちらを見つめる。

私、そんなに変な事言ったかな?――――言ったか。

相変わらず体育座りのまま、もう一度溜息を吐く。

別にね?

知らないどこかに行きたいとか、冒険がしたいとか、思っているわけでもないのよ?

なのに、安息の場所の筈の我が家は勝手に知らない世界に繋がっちゃうし、知らない世界の住人は銃刀法なんか無いらしくて危険物所持してるし。

不思議ハウスになっちゃった我が家で、これから先暮らしていけるんだろうか、ってちょっとばかりナーバスになっても仕方ないよね?

とか思って項垂れてたら、なんか視界が陰った。


「以前とは違うが……やはり狭いな。物置、……ではないのだったか」


リックさんが物置と口にした瞬間、ギロリと睨んでやったので途中で訂正したっぽい。よし、勝った!――って、ちがーう!

あ、首が痛くなった。項垂れよう。


「で、ミアコ。何をそんなにしょぼくれている?」


聞き慣れない音がして顔を上げるとリックさんは剣を鞘に納めていて、不思議そうに私を見ていた。

とりあえず斬られる心配は去ったようだ。


「お風呂が……」

「風呂が?」

「どこかに行っちゃいました……」

「……は?」

「なにをばかな事を言っている?風呂がどうやっていなくなると言うのだ」

「それが解ればこんなに悩んだりしてませんよっ!むしろ、なんでうちのお風呂場と坊ちゃんの部屋が入れ換わったのか、私が教えてもらいたいわよっ!!」

「坊ちゃん!?それは僕のことか!?」

「君以外に誰がいるのよ!」

「リックとか!」

「はあ?何言っちゃってんの、このお子ちゃまは!」


年齢差をものともせず(私が大人げないとも言う)舌戦を繰り広げる私たちの頭上から、呆れたような溜息が落ちた。


「御二人とも、少し落ち着きなさい」

「む」

「うっ」


こっち側とあっち側で同時に口を噤む私達。

くっ……!いくら不思議ハウスに動揺していたとはいえ、自分の半分にも満たない子供と口喧嘩をやらかすとは!!はずかし~~!!

ほっぺが熱いってことはアレだ。赤くなってるという事で。

私は顔を隠すように膝の間に埋める。くぅう!なんか、居た堪れないぞ!

そんな私の頭の上から小さく、くすりと笑ったような音が聞こえた。

え?もしかして私、リックさんに笑われてる?――や、笑われても仕方ないけどさ―。


「ミアコ。つまり、君はお風呂に入りたいのですね?」

「はあ……、まあ、そうなんですが」

「では、そこでしゃがんでいないで此方へおいでなさい」

「え?」


ぱっと顔を上げてリックさんを見ると、何だか「しょうがないなあ」みたいな顔で笑ってた。

でもね?

おいでって言われてもね。うっかりそっちへ行って戻れなかったらどうしようってね?

きっと私は迷うように視線をうろうろ彷徨わせていたんだろう。


「その扉は開けておきましょう。不安なら見張っておいてあげますよ」


いや、たかがお風呂の事でそんなに気を使ってもらうなんて――。

リックさん、とっても良い人だったんだね。

思わずほろり、としたんだけど。

そこのお子ちゃまが瞳をきらっきらさせてこっち側をガン見してるよ!?

嫌な予感しかしないよ!?

っていうかね!?

私がこんなに動揺してるのに、どうしてリックさん達はそんなに落ち着いていられるのさ!?

どゆことーーー!?


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