時間を潰せ
とにかく十秒間で逃げられるところまで逃げなければならない。
さて、どこに行くか。
見晴らしがいいところに行けば、多勢に無勢になるしな。かといって、あまりに狭いところに行けば、袋小路になる恐れがある。
それにしても毎度毎度、赤世姉さんの弟を中心にしたイタズラには困ったもんだよ。
どうやら他の新入生がスタートしたようだ。何やら歓声らしいものが聞こえた。
十秒経つのって早いな。
走っていると、木がたくさん植えられている広場に出た。
ここなら、適度に見渡し易いし、障害物もある。
僕は木の上に登った。
そして様子を見ていたら、新入生らしき者達が通り過ぎていく。
うわぁ、かなりの人数だよな。
こんなもの、見つかっただけでほとんどアウトだと思うけど……。
いきなり広場には十数人の新入生が目の色を変えて現れた。
ま、僕を捕まえるだけで、生徒会から豪華なプレゼントがもらえるんだから、そりゃ頑張るよね。
とりあえずここで、時間を潰せるだけ潰そう。
その時、頭に直接声が届いた。
これは、シンボル?
「さて、新入生諸君! 始まったばかりだが首尾はどうだ?」
この声はアカ姉?
「今諸君らの頭には、直接声が届いてるはずだ。これはもちろんシンボル能力だ。このように、どんな能力を使用してもいいぞ!」
やっぱりシンボルだったか。
僕は赤世姉さんの声を聞きながら、自分の考えが正しかったことに満足した。
ん~でも誰の能力だろ?
アカ姉は、こんなシンボル能力じゃないし、僕の知ってる中では誰一人いない。
「おっと、伝え忘れたことを教えるぞ」
僕が思案してると赤世姉さんが思い出したように話し出した。
「実はな、十分ごとにオニが減っていくから覚えておけ」
ん? どういうことかな?
「今回参加した新入生は、164名。十分経つごとに、二分の一ずつ減っていく。つまり後八分弱で、参加し続けられるオニが82名になる。ちなみに脱落者を決めるのはランダムだ。始まる前に渡した名前の書いた札が脱落者の分は破壊される」
へぇ、そんなもの配られていたんだ。
でもなるほど、ということは時間が経てば経つほど、僕にとっては有利になるってことか。
「そういうわけだ。脱落者になりたくなきゃ、今のうちに捕まえるんだな。なんせラスト十分には僅か4名になるんだしな」
赤世姉さんは楽しくて仕方が無いといった様子で話す。
赤世姉さんの通信が終わった瞬間、急に周りの空気が変わった。
こ、これは……皆さんピリピリしだしたんだけど。
と、とにかく時間を稼がなきゃ。
その時、背筋に冷たいものが走った。