表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封戦機構《リミット・アリーナ》  作者: Y.M
第1シーズン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/25

「観測の逆転」

《“観測そのもの”に干渉開始》


 その一文が出た瞬間、空間の“上下”が崩れた。


 これまで佐倉 恒一たちが見上げていたものが、ゆっくりと裏返る。


 上位観測体はまだそこにある。

 だが、その“目”が一瞬だけ戸惑ったように揺れた。


「……逆転してる」


 隣の少年が低く呟く。


 声に、わずかな緊張が混じっている。


 佐倉は空間を見上げる。


 そこには“観測している何か”があるはずだった。


 だが今は違う。


(こっちが……見返してる)


《第0観測前領域:応答継続》


《観測対象の再定義を検出》


 上位観測体の“視線”が揺れる。


 これまで固定されていた「評価する側の位置」が、ほんの少しだけズレる。


 佐倉の中に違和感が走る。


(これ、力じゃない)


(干渉でもない)


(“視点の位置”そのものが変わってる)


 少年が言う。


「気づいたか」


「今起きてるのは、干渉じゃない」


「“主従の入れ替え”だ」


「主従……?」


 佐倉が聞き返す。


 少年は短く頷く。


「観測する側とされる側の境界が崩れてる」


 その瞬間。


 空間の奥で“音”がした。


 初めて聞く種類の音。


 何かが壊れる音ではない。


 “定義が更新される音”。


《観測構造:再構築》


《観測主体の再配置》


 上位観測体が初めて“沈黙する”。


 沈黙というより、“処理待ち”に近い。


 佐倉は気づく。


(これ、効いてる)


(俺たちが勝ってるわけじゃないけど……揺らしてる)


 だがその瞬間だった。


 空間のさらに奥が“開く”。


 今までのどの層とも違う。


 “観測されることを前提としない領域”。


《第0観測前領域:遮断》


《外部観測を一時停止》


 世界が一瞬だけ“無音”になる。


 少年が顔をしかめる。


「まずいな……来るぞ」


「何が」


 佐倉の問いに、少年は答えない。


 代わりに空間を見上げる。


 そこに“何か”が降りてくる。


 形ではない。


 意思でもない。


 もっと根本的な、“決定前の圧”。


《観測前存在:接続》


 佐倉の呼吸が一瞬止まる。


(今までの全部より上だ)


(これは“見てる側”ですらない)


 少年が小さく言う。


「これが……本体側だ」


 空間がゆっくりと沈む。


 上位観測体が“観測対象”として固定され始める。


 逆に、こちらはまだ揺れている。


《観測構造の反転確認》


《観測前存在による全体再評価》


 佐倉は一歩後ろに下がる。


 だが少年は動かない。


「逃げても意味ない」


「これは位置じゃなくて、“概念”の問題だ」


 その瞬間、佐倉の中で何かが繋がる。


(そうか)


(観測をひっくり返すんじゃない)


(“観測される前”に戻してる)


 空間が揺れる。


 上位観測体が初めて“明確に崩れ始める”。


《観測対象:未確定集合》


《状態:未成立へ遡行》


 佐倉はその言葉を聞いて、息を吐く。


(戻されてる……?)


 少年が静かに言う。


「違う」


「“始まる前に戻されてる”」


 その瞬間。


 佐倉 恒一の視界が白くなる。


 そして、声だけが残る。


《第0観測前領域:再起動》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ