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封戦機構《リミット・アリーナ》  作者: Y.M
第1シーズン

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17/25

「同格干渉体」

《“個体による世界定義干渉”を許可》


 その一行は消えなかった。


 佐倉 恒一が瞬きをしても、黒板の奥に焼き付いたまま残っている。


(許可……ってことは)


(もう“俺の発言が世界に影響する状態”ってことか)


 だが、喜びはない。


 代わりにあるのは、妙な警戒感だった。


(これ、俺だけじゃないだろ)


 その予感は、すぐに形になる。


 教室の空気が一瞬だけ“二重”になる。


 重なった別の層が、音もなく割り込んでくる。


《干渉信号検知》


《同格未確定体:接近》


「……同格?」


 佐倉は立ち上がる。


 その瞬間、教室の机が一列だけ消える。


 いや、違う。


 “最初からそこに存在しなかった状態”に戻っている。


 次の瞬間。


 空間の中央に、もう一人“立っていた”。


 佐倉と同じくらいの年齢。


 だが目だけが違う。


 そこには「理解している側」の光がある。


「やっと会えたな」


 その少年は静かに言った。


「お前も……未確定か」


 佐倉は即座に構える。


 だが少年は攻撃しない。


 むしろ、観察している。


《同格干渉体:識別成功》


《コード:未確定法則・副生成体》


「副生成体……?」


 佐倉が呟くと、少年は小さく笑う。


「そういう扱いになるのか」


「まあいい。説明するより早い」


 少年は軽く手を振る。


 その瞬間、教室の空間が一瞬“書き換えられる”。


 机の配置が変わる。


 窓の外が一瞬だけ別の都市になる。


「見えるか?」


「この世界、全部“分岐してる”」


 佐倉は目を細める。


「分岐?」


「お前が今ここにいる時点で、いくつもの“可能性の世界”が同時に走ってる」


「その中で俺たちは“未確定のまま残った枝”だ」


 佐倉の中で、記録がざわつく。


(こいつ……俺と同じ)


(でも、もっと前から気づいてる)


「じゃあお前は何だ」


 佐倉が問う。


 少年は少しだけ間を置く。


「観測された未確定体」


「お前より一段早く“気づいた側”だ」


 その言葉で、空気が変わる。


(先に気づいたやつがいる)


(俺だけじゃない)


 その瞬間、空間に新しい表示が出る。


《同格干渉体:統合候補》


「統合?」


 佐倉は顔をしかめる。


 少年は少しだけ肩をすくめる。


「たぶん、ここからが本番だ」


 空間が揺れる。


 教室の“外側”が一瞬だけ見える。


 そこには、第0層でも第3層でもない構造がある。


 さらに別の層。


 さらに複数の“未確定”が並んでいる気配。


《未確定集合領域:接続準備》


 少年が言う。


「俺たちは個別じゃ弱い」


「でも“同じ状態”なら話は別だ」


 佐倉は一歩前に出る。


「つまり?」


 少年は答える。


「世界に対して、“未確定のまま連結する”」


 その瞬間。


 教室が完全に静止する。


《統合プロトコル開始》


 佐倉は直感する。


(これ、選択じゃない)


(流れだ)


 だが、そのとき。


 空間の奥で“別の視線”が動く。


 今までとは違う圧。


 明確な敵意でも観測でもない。


 もっと上位の“拒絶”。


《上位層干渉検知》


 少年の表情が一瞬だけ変わる。


「……来たか」


 佐倉は息を吐く。


「何が来てる」


 少年は短く言う。


「“統合を許さない側”だ」


 その瞬間。


 教室の空間が割れる。


 黒でも白でもない、“断絶そのもの”が流れ込んでくる。


《統合中断》


《未確定集合:分断処理》


 佐倉は笑う。


(やっぱりそう簡単にはいかないか)


 少年が横を見る。


「選べ」


「今ここで“統合側”に乗るか」


「それとも——」


 空間が崩れる。


「敵になるかだ」

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