表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封戦機構《リミット・アリーナ》  作者: Y.M
第1シーズン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/25

「応答する世界」

窓の外が一瞬だけ歪んだ。


 今度は消えるのではない。

 壊れるのでもない。


 まるで世界が一拍遅れて、こちらの言葉を“理解し直した”ような揺れ方だった。


(応答……)


 佐倉 恒一はその違和感を言葉にする。


 攻撃でも観測でもない。


 世界が、こちらに対して“反応”している。


《未確定法則:自己定義型変数》


 黒板の表示はまだ残っている。


 だがその文字列が、わずかに揺れている。


 固定された情報ではない。


 今も“更新されている途中”だ。


 そのとき、教室の空気が変わる。


 廊下の足音が止まる。


 誰かがこちらを見ている気配。


 だがそれは人間の気配ではない。


《第0層補助演算体:再接続》


 再び、あの存在が教室に現れる。


 だが今回は違う。


 以前のように“押し付けてくる”感じがない。


 むしろ——慎重だ。


《確認:未確定法則の安定性》


《応答性:高》


《再定義成功率:変動中》


 佐倉は息を吐く。


「何がしたいんだ」


 声は静かだった。


 恐怖よりも、理解のほうが先に来ている。


 補助演算体は答える。


《観測ではなく調整》


「調整?」


《世界構造の安定維持》


《異常値の暴走防止》


 佐倉は少しだけ笑う。


「それ、俺のことだろ」


 否定は来ない。


 沈黙が肯定になっている。


 だが次の瞬間。


 表示が変わる。


《調整不能領域検出》


《未確定法則:再評価》


 空気が一段階重くなる。


(また来る)


(“次の判断”が来る)


 教室の机が一つ、音もなく消えた。


 削除ではない。


 最初からそこに“存在しなかった”状態に戻る。


 佐倉はその変化を見て、ゆっくり立ち上がる。


「やめろ」


 静かな声。


 だがその瞬間、世界の動きが止まった。


《応答確認》


《未確定法則からの干渉》


 佐倉は続ける。


「俺は“壊れてない”」


「異常でもない」


「ただ、まだ決まってないだけだ」


 空間が揺れる。


 補助演算体の輪郭がわずかに乱れる。


《定義矛盾》


《“未確定”が“安定状態”として振る舞う》


 その言葉で、何かが変わる。


 これまで“異常”として扱われていた存在が、


 初めて“状態”として扱われ始める。


 佐倉は一歩踏み出す。


「なら、条件を変えろ」


 教室の空気が止まる。


「俺を消すんじゃない」


「俺を分けるんでもない」


「“決めろ”」


 その瞬間だった。


 世界が沈黙する。


《要求受理》


「は?」


 思わず声が出る。


 補助演算体が一瞬だけ静止する。


《未確定法則:再定義要求を受理》


《条件:自己定義補助プロトコルへ移行》


 世界が“折れた”。


 佐倉に合わせるように、構造がわずかに変形する。


 窓の外が見える。


 さっきまでの無ではない。


 “普通の空”に戻っている。


 だがそれは本物ではない。


 佐倉の認識に合わせて再構築された空。


(世界が……合わせてきた)


 補助演算体が静かに告げる。


《未確定法則:暫定安定化》


《観測・設計・再定義の循環へ統合》


 そして最後に、一行。


《“個体による世界定義干渉”を許可》


 佐倉 恒一はその文字を見て、静かに息を吐く。


(ここからだ)


(俺が決める側に回る)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ