慣れてくる学校生活
どうも!お久しぶりです。
まぁ、待ってる人はあまりいないと思いますが、
久しぶりの新作です。
最近は『幻想殺し』の方にばかりだったので、
こっちは一か月ぶりですかね?
まっ、細かい事はあとがきに書くので、
今回の前書きはこれだけで…
まずは行きます18話!!
入学式から二週間経ち。一年生達が新しい生活に慣れだした頃。
「うおォォォ!!」
「どけェェえェェ!!」
「それは俺のだ!!!」
「うっせェ!!手ぇ放せ!!」
一年生達は、激しい罵声と悲鳴が渦巻く過酷なこの状況にも慣れだしていた。
まるで戦争のようなおぞましい光景が広がるこの場所は、学校の売店。
弁当を持って来なかった者達の昼食を全て賄っている昼食無き者達の恵みの泉である。しかし、全ての人間がこの水を飲める訳ではなく、ここでは毎日のように今のような学生同士の醜い争いが巻き起こっていた。
「ウォリャァァ!!どけェェェ!!」
そして、その戦場を翔る小夜月朝日もまた彼らと同じくこの戦いに身を委ねていた。
スタイルが良く茶色い髪を腰の辺りまで伸ばし凛とした美しさを醸し出す彼女は美少女と表現しても反論する者はいないだろう。だが、今の彼女は、
「邪魔だァァァ!!道を開けろォォォ!!!」
美少女と言うには程遠く。前に進む為に近くの男の襟を掴み後ろに引っ張り、邪魔な者に容赦なくパンチをお見舞いするその姿は、美少女よりは鬼と表現した方が正しいかもしれない。普段は誰もが美少女と納得するであろう彼女をここまで醜い生物に変えてしまうのから、まったくもって人間の空腹とは恐ろしいモノとしか言いようがない。
「よしッ!そこだァァァ!!」
蔓延る敵を薙ぎ払い売店の一番前に出た小夜月は、押し迫る学生達へ必死に昼食を売りさばいている店のおばちゃんに五〇〇円玉を突き付けて大声で叫ぶ。
「おばちゃぁぁん!コロッケパンとクリームメロンパンね!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おかえり~朝日ちゃん。わ~今日も大量だね~」
戦場から舞い戻った小夜月を向かえたのは、既にクラスのマスコットに任命されている二四時間癒し系オーラを出し続ける少女。愛川笑美。彼女は小夜月の持つ戦利品をまじまじと見つめると本気で感心した様子で手をパチパチと叩いて小夜月を称賛し始めた。
「売店はいつもすごい人なのに…朝日ちゃんは凄いね~」
「フフンッ!私に掛かればこのくらい朝飯前。っていうか昼飯前ね」
得意げな顔で獲得したパンを自慢すると、次に小夜月は昼になるといつも空いている愛川の後ろにある席へ腰かけ、愛川はそれに向かう為に今まで前を向いていた椅子を反対へと向きを変え、小夜月と向かい合って食べる準備をした。
「何だ小夜月…またパンか?」
すると途中、小夜月の後ろで、今二人がしようとしているような状態で大河と向かい合って昼食の弁当を食べている夏火が尋ねた。
「何だよ?別にいいだろ…」
その指摘に気分でも害されたのか、小夜月は戦利品であるパンを噛り付くかのように口へと運ぶ。
「いや~でもほら、やっぱ女子はかわいいお弁当を作って来て、友達とお弁当見せ合いっこするのが女子高生っぽい昼食だと思うのよ。俺は…」
「おっ、大河の分際でまともな事いうじゃねえか。その通りだ。ほらっ、愛川を見習え、コイツ自分で朝早く起きて作ったりもするからな」
「そっ、そんな…私はお母さんをちょっと手伝ってるだけだよ…」
と照れた感じに愛川は笑って返したが、このご時世に態々母親とお弁当を作る少女が何人いるだろうか、普通の学生なら親がやってくれると言えば全て任せてしまうのが当たり前であろう。斯く言う小夜月も自分で作ったり親の手伝いをすると言った事は一切せず親が忙しく作れない時は学校の売店のパンですませてしまう普通の学生の一人である。決して珍しい存在などではないのだが、愛川と言う少女を見た後では、そのような存在は愚かしく思えてくるので、小夜月は敢えて愛川の話題には触れず話の中心を別へと変えた。
「うっ、うっさいな~!お前なんて、いつも大河の母さんに作って貰ってるって言ってたじゃんか!」
小夜月は大河と夏火の弁当を交互に見つめ比べてみた。二人のお弁当は弁当箱は違えど中に入っているおかずは全て同じ物で作った人物が同一人物であることは疑いようのない事だった。そんな指摘に対して、まず反応したのは話題になっている弁当の製作者である母を持つ大河だ。
「ん?別に母さんは気にしてないぞ。料理作るの好きだし作る量増えて嬉しいみたいだぞ」
大河の説明に、なっ、なんて優しいお母さんだと小夜月は少し感動してしまった。何なら自分の分も頼もうかとも一瞬思ったが、流石にたった二週間の付き合いしかないクラスメイト(正確には母親)にそんな事を頼むのはあまりに図々しいので思い止まった。
「でも、わざわざ友達の母に頼まなくてもいいだろ?お前が作ってもいいし、親は作ってくれないのかよ?」
「あっ、!朝日ちゃ…」
小夜月の提案に愛川はピクッ、と反応し小さな声で何か言いかけたが、それよりも夏火が答える方が早かった。
「そう言ってもな~。……作ってくれる親がいねえからな~」
ポツリと呟くように言った短い返答だったが、それを聞いた小夜月は言葉に詰まり何のリアクションも出来なかった。知らなかった事とはいえ、自分の親が作るはずの弁当を友達の親に作って貰っているなんて、何かそれなりの複雑な理由がある事くらい少し考えれば察せられるはずなので、下手に触れずにもっとオブラートに包んで触れる事だって出来たかもしれない。なのに、なぜ自分はその尋常じゃない理由をこんな平然と聞いてしまったのか。小夜月は口に出さないが、その顔はやってしまったというという後悔の表情がにじみ出ていた。ただ、小夜月は一つ誤解していた。
別に夏火は自分に両親がいない事に対して何らかのコンプレックスや引け目を感じてはいないので、今の言った事も特に暗い想いを含んで言った訳ではなかった。なのだが、その後夏火が何も言おうとしなかった事もあって(別に喋る事がなかっただけなのだが)小夜月は夏火の心へグサリとナイフを突き立
ててしまったと考えたらしい。別に必要ないと言うのに妙な責任感を感じ夏火の気が紛れそうな何か気の利いた事でも言わなければと頭をフル回転させたが、残念な事に急な事でテンパってしまい何一つ思い浮かばなかった。
因みに彼女は知る訳がないが、入学式に保健室で健康診断の場に出くわしてしまった時の大河のテンパり具合は今の彼女のそれと同じくらいである。と、どうでもいい情報はさておき、小夜月は必死に知恵を絞っていたのだがその努力が報われる事はなかった。と言うより、報われる前にガラガラッ!と、大きめ音を立て教室の扉が開いて皆の視線がそちらへ集中した。
「よっ、よう!森田!どうしたお前も昼飯か!?」
扉を開けた人物を見た小夜月は上擦った声でその人物に話しかけた。
扉を開けたのは別のクラスだが、知り合いである森田正信。
入学式に大河と夏火が出会った小夜月や愛川と同じ一年生である。
今回は一番初めに声を掛けたが、実際には特別に仲が良い訳ではない。入学式から暫く経ったある日、大河と夏火を訪ねて来た時が最初の顔合わせである。その為、ちゃんと言葉を交わしたのは、それから何度目かに二人を訪ねて来た時にしたちょっとした会話だけで、話した回数でいったら三回にも満たないとても浅い関係でしかなかった。しかし、今の小夜月からすれば、そんな事はどうでもよかった。今のこのやらかしてしまった雰囲気(小夜月が勝手に思っているだけ)をなんとか払拭出来るなら例え初対面の人とでも親友となるそれくらいのフレンドリー精神で森田に話しかけたのだが、部屋に入って来た森田は、何故か仏頂面で挨拶した小夜月に返事もせずに大河と夏火の元にズカズカと近づくと、
「お使いだよッ!」
ドンッ!、昼食を取る二人の机に何通か重ねられた手紙の束を叩きつける。
白い和紙を包み紙に使い古風にも筆で二人の名前と『果たし状』と書いているところを見ると、どうやらラブレターの類ではなさそうだ。
「あぁ…また?」
「わ~今回もいっぱいだね~」
森田の持っていた手紙を見るなり、愛川と小夜月はそんなことを漏らしていた。
「はぁ、皆さんわざわざご苦労なこって…」
「そんなことする気はないんだけどな~」
受け取り人である夏火と大河がウンザリとした感じにそう口にした。だが、もっとウンザリしていたのは森田の方であった。
「ホントいい加減にしてくれないかな!?ちょっと二人と仲良いからって昼に昼食買いに行く度に先輩達に呼び止められては、これを渡せって脅される日々ッ!!あぁ、もう!なんで僕だけこんな目に遭うの…!?」
頭を抱えながら目に若干の涙を溜めて自身の運命を呪う森田のその姿は、不憫としか言いようがなく、周りから同情を買うには十分なモノだろう。
しかし、そんな姿を前にしても二人は、
「仕方ねえだろ…だってお前、森田だもん」
「だよな~」
労いの言葉一つ掛けなかった。
「何でだぁぁ!?何がいけないって言うんだぁ!?」
「いやだって、何かもうお前そういうキャラじゃん…」
「なにその諦めモード全開は!?」
「気にすんなよ森田…オメェーはよくやったよ…」
「それに何に対する称賛!?」
夏火、その次に大河と、立て続けに放たれる本気なのかボケなのが分からない二人の返しに対し乱暴だが的確なツッコミを入れていく森田。その姿からは、もうこの3人の中におけるツッコミポジションが当たり前となっていると表しても過言ではなく。気のせいでなければ森田もその役を進んで買っているようにも見えた。
「はぁ、もういつもの事だけど、あいつも可哀そうだな。二人に振り回されちゃって…」
そんな森田、それに大河や夏火の3人を見ながら小夜月はそっと愛川に耳打ちする。すると、今度はそれを聞いた愛川が小夜月の耳元へ口を近づけた。
「そんなことないよ~。朝日ちゃんも振り回されてみれば分かるけど、結構面白いよ~」
「…なによ。振り回されたことあるみたいな言い方ね?」
「ふふんっ、まぁ、色々あったんだよ~。イ・ロ・イ・ロ・ね~」
と、愛川がわざとらしく意味深な感じに語るので、小夜月は一体に何があったのかを言いたいのだなと想像出来た。正直もの凄く興味があった訳ではなかったのだが、言いたいのなら聞いてあげるべきだなと判断した小夜月は語りやすい状況を作る為、「何があったの?」と言おうとしたが、言いかけたところで、
「まぁそういう訳でさ…森田ちょっと焼きそばパン買ってきてくれないか?」
「何でだァァ!?何でここまで来て更にパシられなきゃいけないんだァ!?」
目を離していた大河達の会話が急展開を迎えていた。
「おかしい!!それは絶対におかしいぞッ!!」
「おい、森田!」
激情し今にも襲い掛かりそうな雰囲気を森田が醸し出していると不意に大河が肩を掴んだ。
「止めないで大河君!こんな理不尽な事から陰湿ないじめに発展するんだ!今ここできっちりと止めさせておかないと!」
「俺、何かクリームの入ったパン頼むわ」
「って、君もかいッ!!」
「…あっ、じゃあついでに私飲み物忘れたから、お茶買ってきてくれない?」
「イヤッ、なに丁度いいからみたいなノリで頼んでの!?」
何気にちゃっかりと小夜月にしっかりとツッコンでいると、ふと視線を動かした先で森田を申し訳なさそうに見つめている愛川の姿が目に留まった。
まさかこの子まで自分をパシる気か!?っと一瞬構えたが、
「ちょっとみんな、そんなの森田君に悪いよ~」
そう言った瞬間、愛川の背中に天使の羽根が見える気がした森田。このクラスで唯一の味方は彼女だけ、と彼女の存在を勝手に心のオアシスのように思った。だが、
「もっと持ちやすい物にしないと~だから私はパックのイチゴ牛乳で~」
前言撤回。オアシスはただの蜃気楼だった。
「ウワアアァァンッ!!世の中みんな敵だァァ!!」
完全にパシリポジションとなった事が原因か、それとも一瞬でもオアシスに感じた湖が幻だった事が原因なのかは分からないが、森田は普段学生が流さないであろう大量の涙を流しながら、ピシャァンッ!!という扉を乱暴に開ける音と共に廊下へ飛び出して行った。
以上です。まぁ、途中ですね。
ちょっとしたギャグを書く感じなので、
「幻想殺し」のあいまに書くと結構息抜きになるんですよね。
ただ、一か月はあけすぎですね。
そこはちょっと反省を…。
まぁ、今はそんなに楽しみにしている人がいないのでいいんですが…
って、そんなに人気でないかな……テヘッ
さて、完全に次回に続く状態なのに申し訳ありませんが
また暫く「幻想殺し」に集中すると思うので、
こっちを載せるのが遅れると思います。
どうでもいい情報ですが、
一応、読んでくださっている皆様の為に伝えておきます。
まぁ、正直これを書いてるという事は
あっちがイマイチ気分じゃないという事なので、
こっちが進むと進むで問題なんですが、
と、長々とブログみたいになってきたので、
とりあえずあとがきはここまでで、
誤字脱字に気づかれましたら、
どうぞご指摘ください。
では、次回もがんばります。
あっ「幻想殺し」の方ね…