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【Unique Online】  作者: 地味な男
第二章 第二層攻略編
23/31

第23話 アレンvs.エディス

 俺の目の前で、カインが殺されそうになった。

 カインとエディスの両手剣の剣先の間に、黒い陰――アスカが割り込んだ。

 そして。

 エディスの両手剣は、アスカとカインの二人を貫き、二人を葬った。

 その瞬間、俺の目から、涙が溢れた。




 ―――




 一通り笑ったエディスは、ヘディを見た。

 見られたらヘディは、小さな悲鳴を上げて後ずさった。

「ああ、そう言えばそうだ」

 何かを思い出したように、エディスは口を開く。

「君がヘディか。グレムって言うんだっけ?あの二丁拳銃使いの銃士。あいつが死んだのは、知ってる?」

 ヘディは、目尻に涙をためる。

「なんで……グレムが死んだって……言いきれるのよ……」

 ヘディは、一歩一歩、後ろに下がる。

 その時の俺は、自分でも驚くくらい、冷静だった。勿論、涙は流れてるけど。

 涙を拭い、少し考えてみる。

 エディスはグレムを知っていて、グレムが死んだと断言した。

 それはつまり――

「なんでって…僕がそいつを殺したからさ」

 やっぱりか。

「どうして……そんなことを……」

 ヘディは、ついに涙を流し、その場に座り込んだ。

「だって……ほら」

 エディスはメニューから、二丁のハンドガンを実体化させ、ヘディに投げた。

 ヘディはそのハンドガンを見て、嗚咽を漏らし始めた。

 その時。確かに俺は、聞こえた。


「これ……グレムの……ハンドガン……」


 ヘディの、泣いているせいで震えている声。

 そして。

 俺の何かが切れた、ブチッという音。

 その音を聞いた直後、俺はサンダースと雷帝剣の柄を握りしめ、立ち上がった。

 エディスを睨み付ける。

「ん?どうしたんだい?ああ、そうか。君も、グレムとか言う奴の知り合いなのかい?」

「知り合いじゃない」

 俺はゆっくりと歩く。

「知り合いじゃないけど……」

 走り出す。

「俺の大事な、友達だァァ!!」

 俺は全速力で、エディスに向かって突っ込んだ。




 ―――




 アレンの剣と、エディスの剣。

 それぞれの剣が衝突し、弾かれる。その度に、剣の衝突する音とは思えない爆音が鳴り響く。

 アレンは、鬼の形相で。エディスは、楽しそうな笑顔で。

 今、ヘディの目の前で行われている戦闘は、システムに頼っていない、ただの剣術の戦いだった。

 その戦いに、ヘディは見入っていた。

 二本の剣があるからとは言っても、あれほどの連続攻撃が、しかも己の力だけで出せるアレン。

 その連続攻撃を、どうやったら両手剣一本で防ぎきり、反撃にでるエディス。

 二人の相対する剣士を見て、ヘディは感動していた。

 いやいや、と、ヘディはかぶりを振る。

 そんなことを考えるだなんて不謹慎だ、と。

「くぅああああああ!!」

「ヒャッハァハハハハハァ!!」

 アレンの哮り声と、エディスの笑い声。そして、連続する爆裂音。

 すでに二人の剣は、残像が残るほどの速度にまで達している。だが、本当に僅かだが、アレンの剣の方が確かに速度は上回っている。

「くっそおぉぉぉぉぉ!!」

 アレンが怒号をあげて約一秒後、サンダースと雷帝剣は雷に包まれる。そして、剣の速度が、さらに上昇する。

 だが、そこまでで、剣技は発動させない。己の剣の腕だけで、エディスに斬りかかる。

 ……が、しかし。

 エディスはそれに対抗して、刀身を黒いオーラのような何かで包み、アレンの剣をいなす。

 ただでさえ激しい剣と剣のぶつかり合いに属性が付与されることで、さらに激しさを増す。

 そのまま暫く斬り合いが続くが、アレンとエディスは、一旦剣を止めた。

 アレンはサンダースと雷帝剣を振り上げ。

 エディスも、アレンと同様に両手剣を振り上げた。

「う……おおおおおお!!」

「クッヒャハァーー!!」

 アレンは二本の剣をクロスさせるように、全力で振り下ろす。それとほぼ同時にエディスも、黒いオーラに包まれた両手剣を、全力で振り下ろした。

 ――ドッガァアアアン!!

 剣と剣の衝突で生じたとは思えない音を周囲に響かせ、アレンの剣とエディスの剣が衝突。そのまま鍔競り合いになるかと思われたが、衝突と同時に生じた衝撃波で、二人は吹き飛ぶ。

 砂浜に二本の溝を作りながら、何とか着地して勢いを殺す。

 ――今なら……剣技を発動できる!

 双剣の剣技は、ほぼ全てが連続技だ。故に一度発動してしまうと、剣技通りに剣を振り終わる、もしくは、剣の軌道をずらされた場合だけしか、剣技を中断できない。

 そう言うわけで、連続する斬撃の数が多ければ多いほど、かわされると危険なのだ。

 それが分かっているから、必然的にアレンはある剣技を発動させることに決めた。

 剣の柄を逆手に持ち替え、叫ぶ。

「剣技発動……『双雷逆刃』!!」

 サンダースと雷帝剣の刀身が雷に包まれたのを確認した後、アレンは強く地面を蹴り、エディスに向かって飛び出した。

「剣技発動……『黒刃剣(ブラックソード)』!!」

 エディスの両手剣の刀身が、漆黒のオーラに包まれていく。

 完全に包まれたとほぼ同時に、エディスは前に飛び出した。

 ……アレンとエディス、二人が飛び出したのは、ほぼ同時だった。




 ―――




「おおおおおおおお!!」

 雄叫びをあげながら、俺は全力でエディスに向かって走る。それはエディスも同じく、俺に向かって走ってくる。俺と違うところと言えば、雄叫びではなく、奇声にも似た笑い声を出していると言うところか。

 俺とエディスが互いに肉薄するのに、僅かな時間しか必要としなかった。

 充分に肉薄し、先手を打ったのは、俺だった。

 刀身が雷に包まれたサンダースを、一気に振り上げる。

 鋭い風切り音を鳴らしながら放たれた斬撃は、エディスの胸を斬り裂いた。

 血を思わせる赤いエヘェクトが、飛び散るように光る。

 エディスのHPを削り取ることはできなかったものの、彼の残りHPは、十%をきった。

「これでぇぇぇ……」

 ――殺す!!

 エディスを――美野里と宗とグレムの命を奪った、エディスを葬るべく、俺は雷帝剣を振り上げた。

 だが、振り下ろされたエディスの両手剣と衝突。そして、俺の雷帝剣が、弾き飛ばされた。

「なっ!?」

 思わず、驚きの声を上げた。

 そんな俺を見て、エディスは凶悪に頬を歪める。まるで、勝利を確信したかのように。

「ハァッ!!」

 完全なごり押しで雷帝剣を弾き飛ばした黒い両手剣が、まるで仕返しだと言うように、俺に傷つけられた場所と全く同じ場所を斬り裂いた。

「う゛ぁああ!!」

 呻くような悲鳴を上げ、チラ見で俺の今のHPを確認した。

 どんどんHPは削られていき――残り僅かと言うところで、減少は止まった。

 このままじゃマズいと思い、右足で、全力でエディスの腹を蹴り飛ばす。

「うぐっ!?」

 蹴られた腹を左手で押さえ、エディスは後退。俺はそれと同様に、エディスから距離を取るようにバックステップで離れる。

 何とか着地し、顔を上げると、エディスは自分のHPを見て驚いていた。

 まさかこれほどダメージを受けるとは思っていなかった、とでも言いたそうな表情だ。

 エディスの表情を見ていると、突如、エディスは笑い出した。

「ヒャハハハハ!良いねぇ良いよ!!僕のHPを残り50まで削ったのは君が……アレンが初めてだよ!!」

 エディスら楽しそうに笑う。

 ふと、俺はあることが気になった。

「なあ、エディス。一つ訊きたいんだけど……」

「なんだい?」

「お前さ、バーテンディと対峙してた時、なんであんなに震えてたんだ?」

 俺がそう問うと、エディスはまた笑った。

「ハハ、あれはただの遊びだよ。もしも僕が怖がったら、バーテンディはどういう反応をするんだろうって思ってね。でも、つまんなかったよ」

 そう吐き捨てるように言ったエディスの表情は、本当につまらなさそうなものだった。

 言い終わると、彼の表情は笑顔に戻り、だけど、と言った。

 刀身が漆黒のオーラに包まれた両手剣を、振り払いながら。

「まさか、第二層の時点で、君みたいなすごいプレイヤーと会えて、殺し合えているんだ。久しぶりにエキサイトしているよ」

「……俺は全然楽しくないけどな」

 ――むしろ、早くお前を殺して終わらせたい。そう付け足した。

 すると、エディスは再び楽しそうに笑う。

「いやぁ、最高だよ君は。僕を殺すことしか考えていない、君の目。それが一番良い」

 だけど、とエディスは言葉を繋ぐ。

「本当に不本意だけど、ここいらで僕は撤退させて貰うよ」

「逃げるのか?」

「否定はしないね。だって君は、僕の剣の速度を上回っている。それに、二本の剣を使えて、尚且つ、それを最大限に生かすスキルを持っている。武器の数でも、速度でも、僕は君より劣っているんだよ。このまま戦い続けても、君には勝てないだろう。だから、僕は逃げる」

 ――だから、ごめんね。

 本当に、すまなさそうにそう言うと、エディスは背を向けて立ち去っていった。

 その時の彼は無防備だった。だから、殺せた。

 そのはずなのに、何故か俺は、一歩も動かなかった。




 ―――




 あの後、俺は泣いた。

 ヘディも、俺の隣で、泣いた。

 大切な人を失った悲しみで、押し潰されそうになった。

 だけど、ヘディは俺を慰めてくれた。彼女は、泣くのを止めて、俺を慰めてくれた。

 その日、俺はヘディの優しさに、泣きやむまで甘えた。

 翌日。

 俺たち二人は、誓った。

 三人の命を奪ったエディスを――必ず殺して、現実世界に帰ると。






To Be Continued.

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