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【Unique Online】  作者: 地味な男
第二章 第二層攻略編
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第22話 憤怒

 リヴァイアサンとの戦いの果てに勝利した俺たちは今、砂浜に到着していた。

 砂浜とは、西の海に入ってすぐの所にある、あそこだ。

 俺たちは二人の命を失った。だけど、死を無駄にすることなく勝利できたことが、皆は嬉しかったのだろう。楽しそうに会話をしている。

 ――俯きながら歩く、俺を除いて。

 俺は、犠牲者を出したくないと、そう言った。だけどそうは言っても、結局のところ、犠牲者は出てしまった。

 ――犠牲者を出さずにゲームをクリアすることなんて、無理なのだろうか。

 俺はそう思っていた。

「そう言えばさ」

「どうかした?」

 アスカがヘディに質問したのが聞こえたから、俺は顔を上げ、隣にいた二人を見た。

 カインも俺と同じことを考えたのか、アスカとヘディを見ている。

「今日はグレムと一緒じゃないの?」

 ああ、誰かいないと思ったら、グレムがいないのか。

 アスカの質問されたヘディは、突然俯いてしまった。

 質問したら、相手が俯いた。そんなことになったら勿論――

「え?ど、どうしたの?」

 若干パニック状態に陥る。勿論、陥ったのはアスカだ。

 ヘディは、ゆっくりと口を開いた。

「実は……ね。あいつ、一昨日から、連絡が取れないの」

 彼女の声は震えていて、とても弱々しいものだった。

「それで……フレンド登録を見ても、名前が……ないの……」

 今にも泣き出しそうに、それでも言うヘディを見て、カインとアスカは驚きのあまり、絶句している。

「そん……な……」

 俺は思わず、そう言っていた。

 だって、フレンド登録から名前が消えているということは――

「誰だ?あんた」

 突然、先頭を歩いているプレイヤーたちの方から、威嚇するような誰かの声が聞こえた。

 どうしたのかと、声がした方を見てみた。すると、バンさんがあるプレイヤーに話しかけていた。ここから見る限り、どうやらそのプレイヤーは、バンさんの前に立ちふさがっているらしい。

 そのプレイヤーの髪は、限りなく黒に近いグレー。身に付けている白い防具は、髪と色のバランスがとれいていて、よく似合っている。腰の左側には、鞘に収められた一本の剣が帯剣してある。

 この距離から見て何とか分かるのだが、どうやらあのプレイヤーは、男のようだ。

 どうしたんだろうか。て言うか、なんかあいつ、どこかで見たことがあるな。

「なあアレン。あいつ、前に俺たちが助けた奴じゃねえか?」

 後ろから、カインに話しかけてきた。

 俺は顔だけを後ろに向けて、カインを見る。

「あー、そう言えば。どこかで見たことがあるなーとは思ってんだけど、思い出せなかったな」

 リヴァイアサンとの激しい戦闘で、細かいことは忘れてしまったようだ。

 まあ、俺は病気ではないけど。

 それにしても、なんであいつは、こんな所にいるのだろうか。

「だとしても、なんであいつ、ここにいるんだろうな」

 カインも、俺と同じことを考えてたんだな。

 そう俺が思っていると、白の防具を付けたプレイヤーが、右腕を隠すように背中に回した。

 何をするつもりなのだろうか。

 そう思って彼を見ていると、彼の右手に、刃渡りが十五センチほどの短刀が実体化し、握られた。

 彼はその短刀を持った右手を前に突き出し、そして――バンさんの腹部に、根本まで突き刺した。

 突然すぎて、俺たちは、全く動けなかった。

 バンさんは驚愕に目を見開き、短刀を抜こうとした時。HPがなくなり、ポリゴンとなって消滅した。

 そして、白い防具を身に付けたプレイヤーのカーソルが、赤に変わった。

「あの野郎……まさか!?」

 そう言い終わるや否や、カインは悪刀を抜刀し、走り出していた。

「お、おいカイン!」

 俺の呼びかけも無視して、カインは走った。

 白い防具を身に付けたプレイヤーに一瞬で肉薄したカインは、悪刀の剣先を彼に向けた。カインの表情は、今まで見たこともないほど、怒っていた。

 恐らくカインは、何の躊躇いもなく人の命を奪った奴を、許せなかったのだろう。

「てめえ……何のつもりだ?」

 カインは怒りに震える声で、バンさんの命を奪った張本人に問いただした。

 するとそいつは、絶体絶命の状況に置かれているにも関わらず、口の両端を吊り上げ、頬を凶悪に歪めた。その表情に俺は、本能的な恐怖を覚えた。

 その時。奴が、凶悪に頬を歪めた、その時。

 それがまるで合図かのように、ぞろぞろと周囲から沢山のプレイヤーたちが、俺たちを囲むように出てきた。その数、およそ三十人。

 彼ら彼女らの手には、それぞれの武器が握られている。

 それを確認したカインは驚き、数歩ほど後ろに下がった。

 奴は、それによって生まれたカインの隙を逃さなかった。

 素早く剣を抜刀し、カインを斬り裂くべく、斬撃が放たれる。

 カインはそれを紙一重でかわし、バックステップで俺がいる所まで下がってきた。

「カイン。あいつらは……?」

「間違いねえ。あいつらは、闇ギルドの連中だぜ」

 闇ギルド。

 全てが謎の、怪しい集団。

「そんな奴らが、なんでここに……」

「さあな。あいつらが考えてることなんざ、俺にはさっぱり分かんねえよ」

 分からない……か。

 なら。

「だったら、聞き出せば良いな」

 そう言いながら、俺はサンダースと雷帝剣を、鞘から抜いた。

 本当は、相手が闇ギルドと言えど、俺は戦いたくない。戦っている暇が――殺し合っている暇があるのなら、ゲームクリアに向けて協力したい。そう思っている。

 だけど、闇ギルドの彼らは、俺たちを殺す気でいる。理由は分からないが、殺す気がないと、バンさんを殺したりしなかっただろう。

「殺し合うしか……ないのか」

「なんか言ったか?」

「いや、何でもない。それより、一旦アスカとヘディの所へ行こう」

「そうだな。見方は多い方が良い」

 そう言って、俺たちは走り出した。

 それは、闇ギルドのプレイヤーたちが行動を開始したのと、ほぼ同時だった。




 ―――




 闇ギルドのプレイヤーたちが俺たちの前に姿を現してから、数分が経った。いや、もう数十分は経ったかもしれない。

 その間、俺たちは必死に抵抗した。

 だけど、一人、また一人と、プレイヤーは死んでいく。

 そして、もう暫く時間が経った頃には、生き残っていたプレイヤーはかなり減少していた。

 闇ギルドのプレイヤーたちの数は、残り十人。それに対して攻略者は、俺とカイン、アスカ、そしてヘディの四人だけが、残った。

 十対四。数的には不利だ。

「アレン。腹、括れよ」

 腹を括る、か。

 カインは恐らく、『人の命を奪う覚悟』を決めろと言っているのだろう。

「ああ。そんなの、もうとっくにできてるさ」

 俺は頬を少しだけ緩め、そう言った。だけど、すぐに真面目な表情にする。

「良いか?俺とカイン、アスカとヘディの二人組で戦う。お互いに、お互いの背中を守り合うんだ」

 数的な問題で、前衛と後衛に別れてた戦うという戦法は使えない。魔導士であるアスカが狙われて、集中攻撃をされる可能性が高い。だから、さっきの戦法を選んだ。

 それを、カインに説明した。アスカとヘディにもすぐにメッセージを送る。すぐに返事が返っていたから、大丈夫だろう。

「それから。アスカとヘディから、なるべく離れないように戦う。何が起こっても、すぐに駆けつけることができるように」

「なるほどな。確かに、何が起こるか分かんねえもんな」

「説明はした。……行くぞカイン」

「おうよ!」

 サンダースと雷帝剣の刀身が青白い雷に包まれ、悪刀・黒翼の刀身が紅の炎に包まれた。

 それを一振りし、俺たちは敵陣に飛び込んだ。




 ―――




「おらああああああ!!」

 刀身が炎に包まれた悪刀を、真一文字に振り抜く。

 炎属性太刀専用剣技、『水平斬り』。

 刀身を包む炎は刀身を離れ、炎の刃と化す。その刃は何の迷いもなく直進し、カインの前方にいた闇ギルドのプレイヤーたちに直撃。直後、爆発が起こる。

 それに対して、アレンは素早く動き回り、敵を斬り裂いていく。

 カインのように攻撃力が高いわけではないため、一撃では倒せない。だがそれでも、雷属性特有の『麻痺状態付与』を行うには、充分すぎる。……とは言っても、百%付与できるわけではないが。

 アレンが麻痺状態にした敵を、次々とカインの炎の刀が斬り裂き、ポリゴンへと変えていく。

 麻痺状態にできなかった敵は、アレンの二振りの剣が相手をする。

「剣技発動……『雷刃』!!」

 雷が刀身を離れ、雷の刃が、敵を斬る。

 アレンが麻痺状態にできなかった一人をポリゴンへと変え、周囲を見渡した。すると、いつの間にか、自分たちを囲んでいた敵を一掃していたことに気づく。

 ――闇ギルドって言うからどんなもんかと思ったけど……大したことないな。

 そう、アレンは思いながら、アスカとヘディの方を見た。

 そうして、アレンは驚く。

 アスカとヘディが、押されていた。

 二人のHPは、すでに三分の一をきっている。それに、まだ敵は三人いる。

「女子二人に、四人相手は無理強いだったか!」

 そう叫びながら、アレンは全速力で二人の下へ走っていった。

「お、おい!?アレン!?どうした……っ!そう言うことか!!」

 カインは全てを察し、アレンに続き、走り出した。

 二人は駆けつけるなり、三人の敵を斬りつけ、瞬殺した。

 カインとアレンが三人を瞬殺できたのは、三人のHPがアスカとヘディの戦闘で、すでに半分以下になっていたからだ。

「大丈夫か!?」

 カインはそう言いながら、アスカとヘディに駆け寄る。

 二人は大丈夫、と言って、カインを落ち着かせた。

「二人とも……ごめん。男女で組むべきだった」

 アレンのすまなさそうな発言に、ヘディが答えた。

「そんなことないわよ。誰にだって、ミスはあるんだから」

 人の命がかかっているのだから、ミスなんてしたらいけない。

 アレンはそう言おうとしたが、口を閉じた。ヘディの優しさに、甘えたのだ。

「それより、アレン。まだ、戦いは終わってないでしょ?」

 ヘディがそう言った直後。どこからともなく、拍手が聞こえてきた。

 その拍手は最初ゆっくりだったが、徐々に早くなっていき、一定の早さになった。暫くその早さで拍手をした後、とたんに止んだ。

「クク……ははは」

 拍手が止んだ後に、すぐに、奇妙な笑い声が聞こえてきた。

 声がした方を見てみると、白い防具を身につけたプレイヤーが、俯きながら笑っていた。

「ははは……。いやあ、最高だよ、君たちは。さすが、攻略者と言ったところだね」

 そう言いながら、彼は顔を上げた。

 彼は鞘から両刃の剣を抜き、アレンたちがいる場所に歩み寄ってくる。

 剣の刀身は長く、その長さ、およそ一メートルほど。

 その両手剣を両手で握り、ある程度近づくと、足を止めた。

「さあ……どこからでもかかって来なよ。僕を……僕を楽しませてくれぇ!!」

 まるで、発狂したかのように言い終わるなり、彼の刀身が、漆黒の何かに包まれる。

 その剣を振り上げながら、彼はアレンたちに斬りかかった。




 ―――




 白い防具を身につけたプレイヤーの斬撃を、俺たちは散り散りになることでかわした。

 その際、俺は奴を凝視した。そして、やつの名前を確認した。


名前・エディス


 それを確認した後、俺たちはすぐに体勢を立て直した。

 その後、暫くエディスと俺たち四人は睨み合い、沈黙が訪れた。

 その沈黙を破ったのは、カインだった。

 カインは刀身を炎で包み、斬りかかる。それに対して、エディスも同じように刀身を黒い何かで包み、迎え撃つ。

 ――ガッギイイィィン!!

 凄まじい効果音をたてながら、炎の刀と黒い剣は衝突した。

「て……めえ……。なんでこんなことを……なんで闇ギルドなんてもんに……入ったんだ!?」

 カインの問いを聞いたエディスは、カインに刀を突きつけられたときと同じように、凶悪に頬を歪めた。

 その時、俺は走り出した。

 今なら、こいつを殺せる。そう思った。

「さあて、なんでだろうねぇ!!」

 そう言って、エディスはカインの胸を蹴飛ばした。

「うぐっ!?」

 カインはよろめき、そのまま尻餅をついた。

 エディスは振り返りざまに、俺の斬撃を両手剣で相殺。いや、相殺ではとどまらず、破壊力を上回った。それにより、俺は後方へと飛ばされた。

 地面に転び、した高背中を打ち付けた。

「アレン!」

 そう言って駆けつけようとしたヘディに、俺は「俺は良いからカインの所へ!」と叫んだ。

 ヘディは頷いき、カインの方を見た。

 俺も体を起こして、カインの方を見た。

 エディスは、とても楽しそうな笑顔で、カインに両手剣を突き立てようとしていた。

「ヒャッハァーー!!」

 発狂したかのような笑い声を上げ、両手剣をカインに突き刺そうとした。

 突き刺さる寸前、黒い陰が剣とカインの間に割り込む。だが、それに構わず、エディスはそのまま、突き刺した。

 その、黒い陰ごと、カインを。

 その、黒い、陰は――










「美野里ーー!!宗ーー!!」










 アスカとカイン……いや、美野里と宗は。ポリゴンとなって、消滅した。






To Be Continued.

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