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理を穿つ!  作者: 李・テイナ
普通世界編
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9/9

正論という名の重力

投稿に期間が空いて申し訳ございません。



「B級1位……ヨシアキ……!!」

ルナの声が震えていた。



トーヤが先ほどまで立っていた場所には、黒髪のセンター分けのスクエアメガネをかけた男が10cm程の短剣を持って立っていた。


「何故お前がこの世界にいる。破斬りトーヤ。」


「今度はなんだよ!!っかB級ってなんだよ!!」

深夜のプライムにトーヤの声が響きわたる。



「なるほどな。お前はこの世界について知らなそうだ。」

ヨシアキは刃物を持ちながら腕を組んで立っている。


「何言ってんだよ!!この世界ってなんだよ!」


「……」


「チッ。無視かよ」


ヨシアキは何も答えない。答える気はなさそうだった。


「おい。そこのエージェント。」


紫色の瞳で私の方を見た。

丸腰で野生動物の前に立っている感覚だった。



「はい……!?」


「どうやってコイツを連れてきた。お前の異能なのか?」


「いや……違います……」


「……お前どこか、見覚えがある。」

じっくりこちらを睨みつける。


「……まぁどうでもいい。お前に聞きたいことがある。嘘偽りなく答えろ。」


「なぜB級の暗殺対象であった破斬りトーヤがこの世界にいる。どうやって運んだ?」


「それは……彼が跳躍時計を使えたからです……。」


ヨシアキと距離を取り刀を構えているトーヤの腕には確かに跳躍時計があった。


「なるほど。お前が言いたいことはわかった。コイツの親はエージェントで間違いない。」


「そうです……」


「つまり異能使いの可能性がある……いや跳躍時計を使える時点で覚醒しているのか。」


「……コイツの暗殺理由は他世界の存在を知ったからだと記憶している。学生という身分にしては少し不自然だ。なるほど……上は混血だから始末したいのだな。」


「おい破斬りトーヤ。お前の両親は健在か?」


「あぁ?急になんだよ!さっきは殺そうとしてきたのによ」


「その件は詫びる。今は答えろ、殺したら違和感が排除できなくなる。」


「気に入らねぇな。ここで答えたところで殺すのは確定かよ。」


「譲歩。してるつもりなんだが?」


彼を中心に空気が重くなったように感じる。

ヨシアキの眉間にシワがより目がより鋭くなった。

続けて話す。


「お前と俺には圧倒的な実力差がある。行使しても構わない。」


「ああそうかよ。今気分悪りぃんだわ、お前がその気なら容赦はしねぇよ。」


ヨシアキに向け刀を強く握る。


「ッ!」


撃たれた肩が熱い。

上手く力が入らない。


「お前の両親が気になるが気に留めるほどのことでもない。特に恨みはないが仕事としてお前を殺す。」


お互い武器を構えてゆっくり間合いを探り始める。


「……」


ルナはその場に置いてけぼりであった。

ただ突っ立っているだけ。



(あの人はB級1位……トーヤが勝てるわけない‼︎ どうにかして止めないと殺される‼︎)


(私に何か出来ることはないの?探さないと‼︎)


「ごめんトーヤ!!」

その瞬間後方に振り返り全力で足を踏み出した。


「おい!ルナ!」


(ごめんトーヤ逃げたって思っても仕方ないよね。でも絶対助けるから…!!)


とにかく早く、早く時間がない。殺される前に!!


「見捨てたのか……? 自分で連れてきておいて」

一瞬ヨシアキは呆気に取られていた。


背後を見た。

(大丈夫……追ってきてない。)


「黒髪のエージェント。自分の行動に責任を持て。責任から逃げるな」


ズシン!!!!!!


彼がそう放った瞬間身体中が重力に押し潰されるような感覚に陥った。


(重い!!走れない……!!)

一歩一歩が重い。歩きづらい。今にも押し潰されそう。


「ルナに何したんだよ!!」


「ただ俺が思ったことを言っただけだ。」


「黒髪のエージェント。お前を殺す気はない。逃げるといい。コイツを見捨て責任から。」


ズシン!!!!


「きゃあ!!」


さらに全身を押し潰される。


(立ってられない……︎‼︎)

地面に手をつけた。両手で支えて耐えることで限界。


「重……い。」


(それでも前に進まないと……‼︎)


地面に手を擦り削られようと這いつくばってでも前に進む。

私に出来ることがそれしかないのだから。



「……」


(ルナ……何か考えたんだろ。俺はお前に賭けるぞ。)


「……黒髪のエージェントはなぜ逃げるのに必死なる?いや逃げるという考えが間違えかもしれない。だが俺の異能にかかっている以上下手なことはできない。」


「なんだっけお前、B級?1位?の割に能力ショボいんだな。」


「B級は他世界の人間の暗殺メインだ。戦闘になることなどまずない。」


「なら奇襲をミスったお前は、アイデンティティを失ったも同然だな。」


「アイデンティティ?誰も奇襲が武器とは言ってない。お前知っているか……」


(残像!!)


奴の残像は高速で手首を動かしたその瞬間残像は消えた。


(はぁ?途切れやがった。チッ、どういうことだよ。)


死の攻撃ではなくなったのか。とにかく予測しろ。奴の動きを読め。


ヨシアキは残像通り手首を動かした。


(クソッ!)

横に飛ぶ。


シュンッ!!


刹那短剣が高速で飛んできた。


コンマ速く飛んでいなければ確実に喉仏に刺さっていた。


(……死を予知するんじゃねえのかよ。動かなかったら確実に死んでたじゃねぇか)


「話の途中に投げんじゃねぇよ!」


「やはり避けるか。それがお前の異能か?」


「知らねぇよ。お前がノロマすぎて止まって見えたぜ」


「ガキが……。しかし理由もわからず殺されるとか哀れだな。」


「勝手に哀れんじゃねぇよクソメガネがよ。」


「………冥土の土産に教えてやろう。お前の暗殺理由は混血だからだ。」


「はぁ?」


間が開く。


「この世界には異能と言った特殊な力を持った人間が生まれる。」


「異能を持った人間はもれなく他局というクソ組織に引き取られる。そこで訓練を経た人間をエージェントと呼ぶ。」


「なんだよ!急に」


「エージェントは任務で他世界に行くことがあるが、他世界で他局が禁忌としていることがある。それは他世界の人間とエージェントでガキを作ってはいけない。」


「もしガキでも作ったらガキごと抹殺される。つまりお前は……」


「何が言いたいんだよ!俺は生まれるべき人間じゃなかったってことかよ!」


「そこまで言うつもりはなかったんだがな。お前の暗殺理由はおおよそこんな感じだな。詳しくは知らないが」


「意味わかんねぇよ!全部あのクソ親父のせいかよ!!」


「なるほど。お前の父がエージェントだったのか。」


「だが、もうどうでもいい。俺は仕事を全うする。運が悪かったな破斬りトーヤ。」


ヨシアキは胸元からもう一つの短剣を取り出した。


「言って置くが生まれるべきじゃないって誰が決めた?それはお前の勝手な想像だろ?」


ズシン!!!



(チッ。なんだよクソ重めぇ。)


即座にヨシアキは足を動かした。

早すぎて動きが見えない。


気づくと背後で短剣を振り下ろそうとしている。


カキンッ!!


「やっぱりそう来るよなぁ!。」


間一髪トーヤの刀はヨシアキの短剣を防いでいた。


(奴は急所しか狙ってこない!)


「チッ。これだから永続型は好きになれん」


短剣と刀がカチカチ音を立てて押し合う。

そして互いの顔を睨み合う。


「なに俺が異能使ったと勘違いしてやがる。」


「なら、なぜ受け止めた?そもそもなぜ動ける?」


(仮にも俺の異能を1段階受けているはずだ)


「そんなの決まってるだろ。勘と気合いに決まってんだろ!」


パシンッ!!


短剣を押し返した。ヨシアキは勢いで後ろにのけぞった。


「その辺のエージェントより才能があるな。」 


その瞬間、のけぞっていたヨシアキは瞬時に体勢を立て直した。


「!、、」


気づくと視界にはヨシアキはいない。


「終わりだ。」

恐ろしく冷たい声だった。


既に奴は背後にまわっていた。

体を落として首元に短剣を突き刺そうとしている。


「クソッ!」


短剣は首元ギリギリ間に合わない。

だが、刀を背後に向かって振り下ろすしかない。


「はっ?」


足が何か引っ掛けられた。

直後視界が回った。


「俺の異能がかかっている以上体勢を崩せば一気に崩壊する。」


今まで支えていた足が地面から離れて一気に叩きつけられた。


ガン!!


「グハッ。」


体が地面に叩きつけられる。

吐血し周囲に血がまき散った。


高所から着地失敗し全身で受けたような感覚が行き渡る。


(やべぇ意識を持ってかれる…)


(来るっ!!)



ヨシアキの残像が一瞬見えた。

一撃で命を奪える部位心臓、首、頭のどれかを狙ってやがる。


(いや首だ!)


カキン!!


間一髪短剣を受け止めた。


最後の力を振り絞り握っていた刀を両手で押さえる。

左手に刃が食い込む。


(長くは持たねぇ!!)


「なんでお前は首しか狙わねえんだよ!首に執着しなかったらいくらでも殺せただろ!」


「……俺がB級1位になってから下の順位の人間に命令してることがある。」


「勝手に語り始めんな!!」


「黙れ。お前が問いに答えてやってる。」


ズドン!!

さらにトーヤの体に重力がかかる。


(さらに重く、、もう会話が入ってこねぇ。)


左で支えている刀がヨシアキと重力のせいで余計に食い込みやがる。


意識がぼんやりする。もうヨシアキの短剣を受け止めているという自覚はない。

体が勝手に反応しているだけだ。


それをお構いなしにヨシアキは喋り続けていた。


「命じていることそれは、一撃でかつ相手に気づかせないこと。」


「我々、他局とかいうクソ組織の都合で他人様の命を奪うわけだ。せめて恐怖、痛みを感じさせるわけにはいかない。」


「だが破斬りトーヤお前が初めてだ。対象と口を交わしたのは……俺に余計なことを考えさせるな。」


「何?意識がないだと。」


破斬りトーヤは既に意識はなかった。喋ってるのに夢中で対象が意識を失ってるのに気づかなかった。


「意識を失ったか。ならば俺の異能の効果は切れていた。」


すると対象が持っていた刀が手から滑り落ちた。このままではトーヤの首に刃が当たる。


パリン!


無意識に刀を蹴飛ばしていた。


「なに?」


(蹴飛ばす必要などなかった。余計なことをしなければ殺す手間が省けてたはずだ。)


「……」


(対象の異能が未来視。それも死だけ見える永続型の未来視それがわかった時点で首以外を狙うべきだったか?)


(いや少なくとも俺が今まで正気を保ってられてたのは、相手をなるべく苦しませずに殺すこと。それを破れば俺自身の重みが増えるだけだったか。)


(もう考えるな。思考は重みに変わるこの話題は終わらせろ。とっとと目の前の対象を殺すことだけを考えろ。)


ヨシアキはトーヤの前に立つ。

手には短剣。

一気に息を吸い込む。


「恨みはない。破斬りトーヤ。」


勢いよく短剣を振り下ろした。


トーヤの喉仏に短剣が突き刺さる瞬間。


スパンッ!!


何かが勢いよく当たり刀が手から消えていた。


すると他局の本部の方から人影が現れた。


「おー危ない!間に合いました!!」

妙にテンションが高い。


こちらは近づいてくる。

シルエットは20歳ぐらいの標準体型の青年だった。


「なぜA級が邪魔をする?。お前達の任務はB級を邪魔することか?」


「違います!僕は師匠に頼まれたから来ただけです!ヨシアキ先輩のことを邪魔しにきたわけじゃないですよー!」


「師匠?あの人か。だが頼まれたからって俺の邪魔したことは変わらない。A級7位……カケル。」


カケルの姿が街灯に照らされる。

無造作な茶色の髪そこに白のメッシュ。

整った顔立ちに目立つ細い眉に大きな目。瞳の中は赤く冷たい。


服装は

茶色の学生服のようなものを着崩し赤いネクタイをつけている。

左手の薬指には紫に輝く指輪が目立つ。


「やめてくださいよーーそんな殺意出すのはここで僕たちが戦ったら余計階級同士の仲が悪くなるだけですから!」


「戦う気はない。俺は破斬りトーヤをここで殺すだけだ。」


「それはダメですよ!貴方が破斬りトーヤを殺すことをやめなければ、他局を裏切ったと認定して僕がA級の仕事ととして貴方を始末します!」


「言っておくが破斬りトーヤの暗殺を命令したのは他局だ。お前の私情なのではないか?

いやあの人の私情ってのが正しいな。」


「まぁなんでもいいですけどー!とにかく破斬りトーヤを殺すのはやめていただきたい!」


「一応聞くがそれはお前があの人に命じられて動いてるってことでいいんだな?」


「そうですけど何か?」


はぁ。


ヨシアキからため息が漏れた。


「なんですか??」


「お前の師匠ついに私情と仕事を分けれなくなったみたいだ。」


「???どう言う意味ですか?」


「それはお前の師匠から聞け。」


「俺は私情を仕事に持ってくる奴が嫌いだ。

どんな仕事でも体に負荷が掛かっても逃げなかった。」


「えっーと急にどうしました?」


「いやなんでもない。いいかAK7。」


「は、はい!」


「頭の硬い奴2人に挟まれて大変だな。」


「まぁそうですね〜。」


「だが、今からもっと大変になるな。」


「まさか!」


「俺は破斬りトーヤを殺す。そのために邪魔なお前を先にやる。」


ヨシアキは落ちていた短剣を拾いカケルに対して構えた。


「もーーう。師匠、面倒なこと僕に押し付けましたね?」


カケルは制服の背中側のポケットからハンドガンを取り出した。


「一応言っておきますけどー!先輩の能力じゃ僕に勝てませんよ!」


「最近の後輩は生意気な奴ばっかで呆れる」
































































 

不定期にはなりますが連載するので、よければ応援していただけると嬉しいです。

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