26.最期に見たもの
開いてくださり、ありがとうございます!
ルイと晴の試合、いよいよ後半に差し掛かりました。
この2人の試合を、どうぞ楽しんでみてください。
※この作品には、残酷・暴力描写が含まれます
ルイくんはずっと、私の憧れだった。
「ルイくん!髪の毛三つ編みにしてー!」
「るいくんここの問題が…」
「ルイくん!」
「ルイ!」
それは、みんなも同じだった。
みんなルイくんが大好きで、憧れで、ずっと一緒にいたいと思っていた。
あの日々は、私にとって心地よかった。
でも、いつからだろ。
「ルイくん♡今日って私と…」
「うん。今日は君との約束の日だったよね」
施設の女の子たちとルイくんの行動が、成長するにつれて変わっていった。
施設の女の子たちは、小さい頃よりもルイくんに執着するようになった。
それと比例するように、ルイくんから楽しそうな雰囲気が消えていった。
「今日は私がルイくんと約束してたのよ?!あんたは邪魔なんだよ!」
「は?!お前みたいなブス、ルイくんは相手にしないわよ!」
施設の治安はどんどん悪くなっていった。
ルイくんを巡った喧嘩は、昔からなかったわけじゃない。
喧嘩を止めていたのは、いつも晦だった。
その晦が、ある日を境に変わってから、施設はどんどん壊れていった。
それでも私は、ルイくんのことが大好きだった。
話せなくても、触れなくてもいい。ただそこにいて、笑っているルイくんが好きだった。
それなのに。
晴はルイから目を離せなくなっていた。
「大丈夫、俺がいるよ」
ルイくんの甘い声が、言葉が、私の心臓を突いた。
本当に、大丈夫な気がしたんだ。
ルイくんには、なにか考えがあるんじゃないか。
だってそうじゃなきゃ、ルイくんは私に触れない、私と話さない。
施設にいた時だって、必要最低限しか話してない。
ルイくんが、私の存在を認識してるわけがない。
そうじゃなきゃ、今のルイくんが誰なのかわからない。
こんなに怖いルイくんは初めてだ。
ずっと見てきたからわかる。こんなルイくんは見たことがない。
こんなふうに、純粋な笑顔で人を使うルイくんは…。
「っ…!」
あー、怖くて声が出ない。
今はルイくんの手が私に触れてるのが、嫌で嫌で仕方がない。
晴がルイの手を振り払おうとしたその時。
ルイの、大きく細長い指が晴の首筋を撫でた。
「ルっ"…い…」
その瞬間、晴の首が、ルイの手によって圧迫されたのだ。
「あ"…ぎ…」
なんで?
なにが起こったの?
息できない。苦しい。ルイくん?
ルイくんが…?
晴は混乱によって、うまく息ができなくなった。
「いやぁぁ!!!!ルイくんやばい!!」
「マジでそこ変わってー!♡」
「やばいやばい好きすぎるやばい」
観客の声がうるさくて、まともに頭を使えない。
なんで…。今、なにが起こって…。
必死に考えていると、視界がルイくんでいっぱいになった。
「苦しい…?ごめんね。すぐ終わるから、我慢してね」
ルイは、晴に悲しそうな顔でそう言った。
晴は、そんなルイの顔を見た。
あぁ、綺麗な顔。
白い肌に、くるっとした少し癖毛の金髪、大きな目に、黒い瞳。
さっきまでとは違う純粋な笑顔。
こんなに楽しそうなルイくんは初めて見た。
「晴ちゃん。俺ね、もっと晴ちゃんと話したかったよ」
意識が朦朧としている私に、ルイくんは耳元でそう言った。
「晴ちゃんは、他の子と違ったから。」
ルイくんはそう言って、にっこりと、天使のような笑顔を見せた。
そんなルイくんに、私は見惚れてしまった。
自分でも思う。おかしいなって。
こんな死に際に、自分を殺そうとしてる人に見惚れるなんて。
ルイくんの手に力がどんどん入っていく。
私は、本格的に息ができなくなった。
それでも、もう抵抗する体力も気力もない。
手足に力が入らないから、まともに立てない。
肺の中にあった空気が抜けていくのを感じる。
ルイくんの選択は、もうわかってる。
それなら、意識があるうちにせめて…。
「晴ちゃん」
ルイは、意識がほぼない晴の首を絞めたまま、顔を近づけた。
優しく、愛おしそうな顔で。
「ありがとう。楽しかったよ」
ルイは笑顔でそう言うと、ゆっくりと晴にキスをした。
晴は涙を流し、目を瞑った。
晴の目が覚めることは、もう二度となかった。
読んでくださり、ありがとうございました。
ついに、勝敗が決まりましたね。
晴が最後に見たものは、憧れだったルイ。
彼女にとって、それが幸福だったのか、あるいは恐怖だったのか。
あっけなく終わった晴の人生は、その後もいろんな人の人生に影響していきます。
次回も、お楽しみに。




