第101話:えっ!?セシリアまさかのご開帳!
「さて。……綺麗になったところで、メインディッシュといこうか」
ポチを撫で終えた晶は立ち上がり、大浴場の中央にある巨大な円形ジャグジーへと向かった。
立ち上がった晶の肢体が、湯気に濡れて露わになる。
透き通るような白磁の肌。
無駄な肉の一切ない、引き締まったウエストのライン。
水滴が鎖骨の窪みに溜まり、そこから滑らかな肌を伝って、平坦な腹部へと滑り落ちていく。
その華奢で儚げな姿は、まるでガラス細工のようだ。
「あ……アキラ様……」
思わずセシリアが見惚れて、ごくりと喉を鳴らした。
豊満さとは対極にある、完成されたスレンダーな美貌。
中身こそおっさんだが、目の前にあるのは、守ってあげたくなるような可憐な少女の体。
それが惜しげもなく無防備に晒されているのだ。
セシリアにとって、その破壊力は想像の遥か斜め上をも越えていた。
「ん? どうしたセシリア。顔が赤いぞ、のぼせたか?」
「い、いえ! その……あまりに白くて綺麗なので、つい……!」
「何を言う。女同士だ、隠すもんもないだろう」
晶はバサリとタオルを肩にかけ、男らしい足取りで湯船へと進んでいく。
その無防備さが、逆にサディスティックなほど扇情的であることにも気づかずに。
「はぁ……。アキラ様には敵いませんわ……」
セシリアは溜め息をつき、自分も湯船に向かおうと足を踏み出した。
だが、彼女は見逃していた。
足元にタイルと同色の、四角い固形物が落ちていることに。
誰かが落とした石鹸だ。
「あっ」
ツルッ。
その瞬間、世界がスローモーションになった。
セシリアの足が、物理法則を無視するかのように滑らかに跳ね上がる。
バランスを失った体は宙に浮き、重力に従って仰向けに倒れていく。
そして、最も残酷な運命が、彼女を包んでいたバスタオルに襲いかかった。
ふわり。
遠心力によって、唯一の守り布が無慈悲にも宙を舞ったのだ。
「きゃあああああッ!?」
ドテンッ! パカッ!
盛大な音と共に、セシリアが濡れたタイルの上に叩きつけられる。
衝撃で跳ね上がった両足は、抵抗する術もなく左右に大きく開かれ――。
そこに現れたのは、芸術的なまでに美しい『M字』の構図だった。
「…………」
湯気が、まるで空気を読んだかのごとく、サァッと晴れていく。
晶の目の前で、聖女のごときお嬢様の「秘密の花園」が、これ以上ないほど大胆に、そして無防備に御開帳された。
真珠のような白く艶のある肌と、その中心にある、草一本すら生えていない秘境。
白とコーラルピンクの鮮烈なコントラストが、湯気の中で妖しく浮き上がっている。
恥じらいに震える太ももの内側まで、余すところなく晒されている。
それはまさに、神が与えたまいし絶景だった。
「う、うぅ……?」
視線の集中砲火を浴びていることに気づき、セシリアが震えながら顔を上げる。
目の前には、腕を組んでその光景を「鑑賞」する晶と、目を丸くするリナたちがいる。
数秒の沈黙。
セシリアの全身が、茹だるよりも早く、頭のてっぺんから足の先まで沸騰したように真っ赤に染まった。
「い、いやぁぁぁぁッ!! 見ないでぇぇッ!!」
セシリアは手で顔を覆ったが、肝心な場所は全開のままだ。
羞恥のあまり、隠す場所を間違えている。
「はしたない……! こんなあられもない姿……お母様にも見せたことありませんのにぃ……! んぐぅぅぅ!」
涙目で身をよじるたびに、水音がピチャピチャと卑猥な音を立て、さらに秘部が見え隠れする。
もはや、完全なる羞恥プレイだ。
「もう……もうお嫁にいけませんわぁぁぁ!」
「……安心しろ。見事な開脚だぞ。芸術点、10点満点だ」
晶はサディスティックな笑みを浮かべ、親指を立てて称賛した。
リナも「すげぇもん見た……」と顔を赤らめて拝んでいる。
セシリアが泣きながらタオルを回収し、芋虫のように丸まって震えが止まるまで、あと数分を要することになった。
◇
「お風呂、気持ちいいのだ」
「そうじゃな、この体の芯からあったまる感じが、なんとも言えんのじゃ!」
「あーっ、良い湯だなぁ」
ポチ、タマ、リナ。
気を取り直して湯船に浸かった三人は、入った瞬間に「極楽モード」突入である。
「……。」
セシリアだけはまだ、違う意味で赤面している。
ひとりだけ反対側を向き、膝を抱えて小さくなっていた。
そして最後に、晶が足を入れた。
その瞬間だった。
カッ……!
ピカーッ!!
「うおっ!?」
「きゃあ!?」
晶の肌がお湯に触れた途端、浴槽全体が激しく発光したのだ。
乳白色だったお湯が、内側からLED電球を仕込んだように輝き始めた。
しかも、ただ光るだけではない。
赤、青、緑、紫、ピンク……。
色が高速で変化していく。
「な、なんだこれは!? お湯がゲーミングPCみたいになってるぞ!?」
晶が驚愕する。
原因はすぐに判明した。
晶の持つ称号『美容神の加護』の影響だ。
『美容神の加護』から生まれた美肌効果、それが古代のハイテク入浴剤と化学反応を起こし、過剰な「視覚効果」を引き起こしてしまったのだ。
「ああっ……! なんて神々しい……!」
さっきまでの涙も羞恥心もどこへやら。
セシリアが涙目のまま、胸の前で手を組んだ。
目の前の奇跡に、彼女の信仰心と現実逃避スキルがフル稼働したらしい。
「虹色に輝く聖水……! これはきっと、転んで傷ついた私を慰めるために女神様が……! ああ、聖なる泉です!」
(……立ち直るの早ぇな)
リナが呆れる横で、お湯からはキラキラした光の粒子が舞い上がり、浴室全体がディスコのような様相を呈している。
(落ち着かない……! 非常に落ち着かないぞ!)
晶は七色に明滅するお湯の中で、一人頭を抱えた。
リラックスしに来たはずが、なぜエレクトリカルパレードの中心にいなければならないのか……。
◇
「……アキラ殿、なにか光ってないか?」
風呂上がりのロビーで合流したエルウィンが、まじまじと晶を見て言った。
男性陣はホカホカに整っているが、女性陣はキラキラ光っているように見える。晶に至っては、物理的に薄ぼんやりと発光していた。
「気にするな。……それより、風呂上がりといえばこれだ」
晶はロビーの自販機で購入した、冷えた小瓶を全員に配った。
中身は黄色い液体――『フルーツ・オレ』だ。
「腰に手を当てて、一気に飲め。それが作法だ」
「こ、こうか?」
ボルスがおっかなびっくり腰に手を当てる。
全員で、天井を仰ぎながら一気飲み。
「ぷはぁーっ!!」
冷たく甘い液体が、火照った体に染み渡る。
「うめぇ! なんだこりゃ、果実の甘みが凝縮されてやがる!」
「生き返る……。これぞ命の洗濯じゃな」
心身ともに、完全にリフレッシュした一行。
古代遺跡の探索に来たことを忘れそうなほどの充実感だった。
「さて、そろそろ部屋に戻って休むか。明日は工場エリアへ進むぞ」
晶の号令で、一行は宿舎へと戻ることにした。
夜の静寂に包まれた公園を歩く。
その時だった。
ガサッ……。
歩道の脇にある茂みから、微かな物音がした。
「ん?」
ポチが、足を止めた。
頭の上の犬耳が、ピクリと動く。
「……何かがいるのだ」
ポチが低い声で唸り、茂みを睨みつけた。
ポチの視線の先には、こちらをじっと見つめる、ふたつの赤い光があった。




