二組のプロポーズ
ウォーターズ帝国への援助は、着々と進んでいる。
わたしは、いったん祖国に戻ることにした。
そして、力を使うのである。というよりか、祖国にただ行くだけでいい。
わたしは、そこにいるだけでいいらしい。祖国に行けば、いまの状況がいい方向に好転するかもしれない。
祖国に行く。帰るや戻る、ではなく。
わたしは、すでにこのオーディントン国の人になっているのかもしれない。
それはともかく、祖国に行くことはせめてもの罪の償いだと自分では思っている。
偽善とか自己満足の感は拭えない。それでも、なにもしないよりかは精神的に楽なことはたしかである。
そんなわたしに、ヴィクターたちもついて来てくれることになった。
オーディントン王国の国王として、というよりかはオーディントン王国の将軍として、ウォーターズ帝国の混乱を鎮める為である。
というのは建前で、はやい話がヴィクターはわたしのことがいろいろな意味で心配らしい。というよりか、離れたくないらしい。
出発を明日に控えたこの日、みんなで食事をした。
双子の姉妹たちは、明日王都に戻るらしい。
彼女のお目当てのパーシーとチャーリーは、ヴィクターとわたしといっしょにウォーターズ帝国に行ってれることになっている。ということは、彼女たちが駐屯地にいる目的がなくなる。
今日の料理は、料理長のシドニーと一緒に作った。
オーディントン国の伝統的な料理ばかり。
分厚い肉のステーキ、揚げジャガイモ、新鮮な野菜のサラダ、トマトの冷製スープ、トウモロコシパン、チーズ。デザートは、アップルパイ。
みんなでワイワイ話をしながら食事をした。
元夫と義姉に会ったその夜から、ヴィクターといっしょに食事をするようになった。
もちろん、今日も彼と一緒である。
食後、居間に場所を移した。
チーズとクッキーをおつまみにし、ヴィクターとわたしはお茶を、わたしたち以外は葡萄酒を、それぞれ楽しんだ。
「それで、いったいなんなのかしら?」
双子の姉のビアトリスが急に尋ねてきた。
「ほら、勝負のことよ」
そして、妹のアイリーンが言った。
(そうだったわ。勝負で勝った方が負けた方に望みをかなえてもらうのだったわね。バタバタしていてすっかり忘れていた)
キャロルと顔を見合わせた。
ヴィクターの双子の姉は、その美しすぎる顔にいたずらっぽい笑みを浮かべた。
おそらく、わたしの顔にも同じような笑みが浮かんでいるに違いない。
「それでしたら遠慮なく。ビアトリスさん、アイリーンさん。あなたたちには、あなたたちがほんとうに愛する人と結ばれて欲しいのです。といよりか、結ばれなさいって命令します」
居丈高に見えるよう、長椅子に腰かけている状態で全力で胸をはった。
悲しいかな、全力で胸をはってもキャロルや双子姉妹の豊満な胸には遠く及ばないけれど。
「なんですって?」
「なんですって?」
二人は、おたがいの顔を見合わせた。
そして、すこし離れた椅子に腰かけているパーシーとチャーリーもまた、ハッとした表情で顔を見合わせた。
「勝者であるサエの命令だ。なんなら、おれも命じるが? おいおい、ごまかしや嘘はやめてくれよ。おれたちは知っている。というか、気がついている。そうだな。レディの口からは告白しにくいだろう。パーシー、チャーリー。男であるおまえたちから彼女たちに告白しろ。これは、国王として将軍としての絶対命令だ。そして、サエの心からの願いでもある。せっかくの機会だ。おれとサエ、それから姉上も協力するから、くだらない因習や因縁は断ち切り、あらたな一歩を踏み出すというのもいいかもしれん。それに、サエとおれだけがしあわせになるのも心苦しいからな」
ヴィクターがすぐにフォローしてくれた。
すると、パーシーとチャーリーは無言で頷き合った。それから、パーシーは長椅子に座っているビアトリスの前に、チャーリーはアイリーンの前に、それぞれ片膝をついた。
「ビアトリス。こうなったらウダウダと長台詞は抜きにする。たった一言だけ告げさせてくれ。『きみを愛している。おれと結婚してくれ』、と」
「アイリーン。おれもまわりくどいことは大嫌いだ。だから、一言だけ言わせてくれ。『きみのことをずっと愛している。おれと結婚してくれ』、と」
彼らは、間髪入れずに告白した。というよりかプロポーズした。
双子の姉妹は、驚きの表情で固まってしまっている。
彼女たちがどう応じるのか、緊張してしまう。
すると、隣に座っているヴィクターにそっと肩を抱かれ、引き寄せられた。
「イエスに決まっているわ」
「イエスに決まっているわ」
双子の姉妹は、いつものようにヴィクターのあたたかさとやさしさを感じるまでの間に同時に応えた。
こうしてあらたなカップルが誕生した。しかも二組も。
彼らの結婚への道は、けっして平坦でも楽でもない。むしろ問題ばかりの険しい道である。
それでも、みんなで力を合わせればどうにかすることが出来る。
ヴィクターとわたしは、そう信じている。
キャロルも含め、その為の協力は惜しまない。




