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わたしは鈍感すぎる?

 ヴィクターが「おれが守り抜く」と言ってくれたことで、心が満たされる気がする。


 そんな感動を覚えていると、キャロルが話題をかえた。


 彼女は、じつに切り替えがはやい。ふつうに会話をしていても、ポンポンと話が飛んでいく。


 彼女は頭がいいのだ。が、わたしはそうではない。モタモタとしてしまう。思考が追いつかず、理解するまでにしばらくかかる。


 それでも、最近は少しずつ彼女についていけるようになった。


 人間って慣れの生き物だなとつくづく感じる。


 それはともかく、彼女はウォーターズ帝国軍の捕虜のことを尋ねたのである。


「ひどい話です」


 パーシーが説明してくれた。


 わたしの元夫、つまりウォーターズ帝国帝国の皇帝が、ルビーを奪ってこいと命じたとか。うまく奪ってきたら、分け前をやると。


 捕虜となっている指揮官の領地もまた、他の領地同様災害や飢饉で壊滅的な状況らしい。彼は、領民を救う為に皇帝の命令に従うしかなかった。


 厳密には命令に従ったふりをしてルビーを奪い、自分の領地や他の領地を救いたかったらしい。


 皇帝に献上するつもりなど毛頭ない。それどころか、帝国をこんなめに合わせた皇帝は八つ裂きにしたいと切望している。


 指揮官は、そうとまで語ったらしい。


「ひとえに加護の力を持つ王妃を離縁し、その真逆の力を持つ悪女を王妃にしたからだ」


 彼は、そのように憎々し気に付け足したという。


「はい? それってわたしのことですか?」


 指揮官の告げたのは、もしかしてわたしのこと?


「確認するまでもなかろう。きみのことだ」

「ですが、ヴィクター様。わたしにはそのような力はありませ……」


 否定しかけてハッとした。


 そういえば、わたしがこのオーディントン国にやって来てから、この国は天候に恵まれ、各地は例年になく豊作である。しかも、あらたなルビー鉱山まで発見された。


 もしかして、わたし? わたしが原因なの? というか、わたしってそんな力があるの? というか、どうしてみんな知っているのに本人のわたしが知らないわけ?


 よくよく考えたら、わたしの覚えているかぎり祖国ウォーターズ帝国で国家レベルでの天候不順や災害や飢饉や大きな事件事故が起こったことはない。


 それが急に? それらがいっぺんに起こるわけ? しかも、わたしが祖国を出たタイミングで?


 信じられないけれど、実際偶然が重なりすぎている。祖国でもこの国でも。


 じつは、それらは偶然ではなく必然だとすれば?


「あの、自覚がないのです。わたしはずっとヘラヘラ笑っているよう命じられ、それを実践してきただけです。力を解放するとか護っているとか、そういう自覚はいっさいないのです」

「だろうな。力を解放とか発揮するとかではなく、きみ自身がその力なのかもな。つまり、きみの存在そのものが力だ。きみがそこにいることで護られ、幸運に見舞われるわけだ」


 ヴィクター様の説明は、これが他のだれかのことだったら信じられる。だけど、わたしのことだとにわかには信じられない。


「サエ、あなたほんとうに鈍感なのね。そこまで鈍感だとかえって清々しいわ。まぁそんなあなただからこそ、これほどの威力があるのかもしれないわね。それで、どうするの?」


 キャロルが褒めてくれた。


「ああ、姉上。そのことだが……」


 キャロルの問いに、ヴィクターはパーシーとチャーリーと顔を見合わせてニヤリと笑った。


 ヴィクターの髭面のそのニヤリと笑った姿は、彼をやけに凶暴に見せた。


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