情に訴えよう
『双子どうし、愛し合っている。わたしにはそれがわかるのです』
そのような突拍子のないことを言えば、キャロルとヴィクターは困惑するだけである。
すくなくとも、わたしだったら困惑する。
当然、信じられない。すくなくとも、わたしだったら信じない。
と言いたいところだけど、じつはそうではない。
たしかに、わたしがどうのこうのという点においては怪し気である。自分で言うのもなんだけど、じつに胡散臭い。
しかし、である。
パーシーたちの様子をよくよく観察してみると、勘のいい人なら気がついていてもおかしくない。
双子たちは、あれだけ誹謗中傷をし合っているわりにはなにかとひっついている。
わたしが彼らのことに気がついたのは、「真実の声」の力がきっかけだった。しかし、それ以降意識して彼らを観察すると、たしかにそれっぽい挙動をしている。
例えば、ひどい言葉の応酬のわりには目がやさしかったりしている。
わたしでもそう見えるのだから、付き合いの長いキャロルやヴィクターなら気がついていてもおかしくない。
わたしは、その点を期待している。これは、充分期待出来ると信じている。
とはいえ、どちらかが口を開くまで不安と緊張でどうにかなってしまいそうだった。
「まったく気がつかなかったわ」
「おれもだ。まったく気がつかなかった」
やっと二人が言葉を発してくれた。
(って、なんですって? 二人とも、まったく気がついていなかったの?)
心の中でガックリしてしまった。
(そうよね。二人とも、とくに恋愛に関してはすごく鈍感そうだし。期待したわたしがバカだったのね)
そう自分自身に言いきかせるしかない。
「ですが、信じてはもらえるのですね?」
「そうね。言われてみればという感じはあるから、信じられないわけではないわ」
「たしかに。そう言われてみればそうかな?、という気はする」
ああ、よかった。頭ごなしに否定されるとか退けられはしなかった。
「だけど、やっかいね」
キャロルは、隣でスラッとした顎を指先でさすりながら説明してくれた。
パーシーとチャーリーのトルーマン公爵家とビアトリスとアイリーンのレッドグレイブ公爵家は、初代の時代から犬猿の仲らしい。それどころか、キャロルとヴィクターのホワイトウエイ家、つまり王家も含めたこの三家は、仲がよろしくないという。ただ、さすがに王家とはいがみあえない。表向きは、王家と公爵家という立場を貫いている。それでも、両公爵家は虎視眈々と玉座を狙っているらしい。
パーシーとチャーリーがヴィクターを慕っているのは、奇蹟に近いらしい。
というわけで、とくに関係の悪いトルーマン公爵家とレッドグレイブ公爵家の子息子女が結ばれることは、かなり難しいらしい。
「それだけは、ぜったいにありえないわね」
キャロルは、そう締めくくった。
「ところで、トルーマン公爵家とレッドグレイブ公爵家の仲が悪い理由はなんなのですか?」
だれもが抱くであろう素朴な疑問をぶつけてみた。
「さあ。いまとなっては、だれも知らないわ。知ろうとも思わないし。どうでもいいのよ」
(そんなものなの? 公爵家どうしが仲が悪いって、なにかあった際になにかと都合が悪いのではないかしら?)
例えば、オーディントン国が危急の事態に陥り、一致団結しなければならないときとか。
「ですが、どうにか結ばれないでしょうか? 愛し合っている者どうしがいがみ合わなければならない。こんなこと、あってはならないと思うのです」
力いっぱい訴えてみた。
こうなったら、情に訴えるしかない。




