光の柱。
その赤レンガの建物からたちのぼった白銀の光柱は、下町だけではなく王都中で見られたという。
♢
「ガイウス兄、やつは?」
「悪いマクギリウス。やつは大量の大黄粉を口に含み窓から逃走した」
「くそ! じゃぁ」
「そのあと同時多発的に屋敷のあちらこちらから魔人が飛び出していった。やつは従業員どもを自分の隠れ蓑にするために魔人化させて解き放ったのだ」
「しかしそれでは」
「ああ。やつもまた魔人と化して意識を失って暴れている可能性もある。追うぞ、マクギリウス!」
「ああ。兄さん!」
早朝の突入は失敗に終わった。
真夜中の捕物は極秘裏に行っていたにもかかわらず、どこからか漏れたのか。
待ち受けていたラインハルトはガイウスが突入すると同時に逃げ出して。
トランジッタ侯爵家の屋敷は、貴族街と下町のちょうど境に位置していた。
ブラウドが侯爵になった時、自身の商会の本部としても使用する目的で買い求め立て直したその屋敷から大勢の魔人が溢れ出て。
貴族街方向はもともと騎士団によって閉鎖されていた。
そのため、騎士団が追う中、魔人たちは下町に逃げ込み。
破壊衝動の赴くまま壁を家を路地を破壊していった。
こうなってしまってはもはや如何ともし難い、と。
下町全体に避難勧告を出したのち、個々の魔人を倒していく騎士たち。
魔人は、男だけではなく女性もいた。
皮肉なことに、彼らはどうやら魔國大黄粉の製造に関わっていた従業員たちなのだろう。作業をするにあたって長期にわたってその粉を摂取し続けたことで必要以上にその魂が魔によって侵食されてしまっていたのだ。
皮膚は爛れ身体は膨らみ、もはや人としてあったころの面影などどこにも残ってはいなかった。
ただその服装から、以前の姿、立場を慮ることができるだけ。
「ラインハルトはいたか!?」
「いや、こちらでは発見できていない」
「探せ。まだ下町にいるはずだ。貴族街への道は騎士団で閉鎖している」
「橋もすべて閉鎖しろ。ネズミ一匹逃すんじゃないぞ!」
もう既に正午をまわっていた。早朝からの、いや、昨夜真夜中から続く捕物に、騎士団の面々にも疲れが見え始めていたそんな時。
それは見えた。
異常な程の清浄な光の柱。
「あれは……」
「あれは、ブラウド商会よろずやの建物だ。ガイウス兄」
「行くぞマクギリウス。あの光の正体を確かめねば!」




