【Side】マクギリウス 4。
♢ ♢ ♢
「絶対にダメだ。そんな危険なことさせられない!」
「どうして? そりゃぁ下町はあんまり治安はよくないかもしれないけど、ラウダ工房だったら前にも行ったことがあるもの。以前にもデザインのお話を直接詰めたこともあるし、ラウダさんは信頼のおける腕の良い職人さんだったわ」
「それはわかってる。俺だって何度も君の使いで工房にも顔を出しているし、彼の人柄とかもある程度把握しているつもりだ。でも、そうじゃないんだよ、今心配しているのは」
「ブラウド商会の横槍が入ることを心配してらっしゃるのよね?」
「まあ、そう言うことだ。わかってるならそれ以上は言わないが」
「それなら、わたくしは変装するしセバスにもついて行ってもらうから。ニーアさんにも護衛をお願いするわ」
「ダメだ」
「どうして!」
「とにかくダメだ。セバスにもニーアにも言い含めておく。絶対にアリーシアを出すなって」
「そんな!」
「泣いてもダメだぞ。なあわかってくれ。本当に危険なんだ。今は大人しくしていてくれ」
下町に頻繁に魔人が出没するようになった。
体が楽になる。体力が回復する。力が強まる。
そんな利点だけを謳い大黄粉を売り捌いている売人がいるらしい。
その結果、人としての心まで壊れ魔人となってしまう者がいるというのに!
売人の足取りを追いその大元を突き止めた。今夜真夜中にそのアジトに乗り込もうとしていたその日。
アリーシアとそんな言い合いになった。
もちろん魔人は危険だ。
だけれど、その魔人の原因にラインハルトがブラウド商会が関わっているだなんていうことを、アリーシアに言えないでいた俺。
どちらにしても。今夜だ。
今夜アジトに踏み込み一網打尽にすれば、あるていど片がつく。
騎士団と共に踏み込む先は、王都にあるマクベス伯爵の別邸。
そこがその売人たちのアジトとなっていたのだった。
真夜中。
なんとか伯爵を追い詰めるだけの証拠を確保し、マクベス伯爵もろとも売人たちを一網打尽にしたところで。
その製造工場の場所、そしてそこにラインハルトが出資していること、トマスが何度もその工場に足を運んでいることまで突き止めた。
「ではマクギリウス。明日は早朝からトランジッタ侯爵家に踏み込むという段取りでいいのだな」
「ええ。ガイウス兄さん。俺も屋敷の周囲を見張る。踏み込みのメインは兄さんに任せるよ」
「しかしな。内部の人間が魔人化してしまえば抑えるのは容易ではないぞ?」
「そうだね。その場合は彼らを殲滅するのも仕方ない」
やけになったラインハルトが大黄粉に逃げる可能性だってある。
そうなった場合はもう俺たちにはどうしようもない。
仮にもアリーシアの妹の伴侶なのだ、ちゃんと人として罪を償ってほしい。
そういう思いはないではない。
でも。




