弟みたいなもの
「前にテッドの舟で爆破騒ぎを起こして、魔導エレベータで飛ばされた子でしょ?」
少年の言葉に、クロンカイトは息を飲んだ。
かつてのクロンカイトがそんな失敗をした。
この少年が言うように、知らない土地に飛ばされたことがあったのだ。
そんなクロンカイトを助けてくれたのが……
「誰だっけ?」
クロンカイトがどう頑張っても、目の前の命の恩人の名前を思い出せなかった。
「でも、よかった。噴火に誰か巻き込まれでもしたのかと思ったよ」
少年がそんなことを言った。
「ん? 俺のために来てくれたの?」
「まあ、そのつもりで来たけど、結果的には無駄足だったね」
クロンカイトの問いに少年は頷く
「わざわざありがとう。まあ、この通り万全の準備をしてきたし、俺は大丈夫」
と、話してるうちに、空がまたどんよりしてきた。
「まあ、帰りながら話そう。雨が降ってきても嫌だし」
クロンカイトはヘルメットをかぶる。
忘れ物がないか確認する。
「どうせ坊やも居住区に帰るんだろう。歩きながら話そう」
クロンカイトは歩き出す。
少年も一緒に歩き出した。
* * *
「弟って?」
シズクがリューオスに聞き返す。
「シズクの弟みたいなもんだって、シムが言ってたけど?」
リューオスの説明にシズクは考え込む。
少し前に、アッゼに地上のシミュレーションドールについて聞かれた。
『その子の名前は?』
アッゼの質問にシズクは答えられなかった。
シムが弟みたいなもの?
ふと、シズクの脳裏に竜繭に包まって眠る少年の姿が浮かぶ。




