居住区
当時のアッゼは火傷と脱水症状で衰弱していたが順調に回復したらしい。しばらくは誰とも口を聞かない子どもだったらしい。
大人になったアッゼは、今、あの居住区にいた。
当然、家族も友達も知り合いももういない。
あの後、激しい噴火活動でテッドの舟は地上に戻れなかった。
天空岩の生き残りもわずかとのこと。
それなのに、今、地上の居住区がしっかりと存在していた。
こうして、地上を歩いているといろんな思いが湧き上がる。
魔導エレベータはしっかり機能している。
居住区は住居や畑、もうそこは完全に復興した町といっても遜色ないくらいだ。
そこにいるはずのシュウそっくりの機械の少年はどこにいるだろう?
アッゼは居住区の中を歩いていた。
* * *
シズクは感心していた。
その日、シズクはリューオスの家に遊びに行ったのだ。
そこにヤイノがいた。
ヤイノは熱心に読書をしていた。
焼け焦げた本でも、ヤイノは集中して読んでいた。
「なんの本を読んでるの?」
「惑星の本を読んでたんです」
「勉強熱心なんだよ。畑手伝ってくれて、その後、本読んでて」
とリューオスが水を持ってきた。
竜人たちは、一般的に客に出すものといえば、お茶より水だった。
「お構いなく」
と、言いながら、ヤイノは本を読んでいる。
「感心ねぇ」
と、シズクはヤイノを見ていた。
「惑星の本なら研究所にももっとあるわ」
「本当ですか?」
ヤイノは目を輝かせる。
「天空岩の本は結構焼けてしまってるけど、テッドの舟に行けばもっといい本があると思うわ」
「ボクでも借りれますかね?」
「……あ。そういえば、そろそろ出発するかも」
シズクの言葉にヤイノは少し落ち込んだ。
「でも、研究室の本ならいつでも貸すから」
「えぇ」
「そうか。テッドの舟も出発するのか。寂しくなるな」
と、リューオスが言う。
「えぇ。天空岩の問題も解決したし、後は、地上の問題が解決すれば出発するんじゃないかしら?」
「地上と言えば……」
思い出したように、リューオスが話し出す。
「シムって弟なの?」




