第2話
メルトゥグから別の街へ向かう時の景色は、まるで太陽に向かっていくようだと言われる。
事実、地表より大分低いこの街は全体的にほの暗い。列車で移動するときは上り坂となり、その過程で外の光が円形に広がる場所を通るからだ。
とはいえ、ウケがいいのは地元の子供くらいだ。わざわざ旅行に来るものもいないし、ましてや3人が今さらはしゃぐことも無い。
「それにしても、何か急じゃないっすか?」
黒いシャツに白衣を重ねた男は、やや不機嫌そうに言った。どこか中性的な顔立ちをしたヒュームは、普段から睡眠が足りてないこともあり、大分しおらしく見える。
「急?この斜面がか?」
「仕事っすよ。いくら何でも4日以内に報告しろっていうのは」
「確かにね。……焦ってるのかしら、セレさん。横取りされたくないとか?」
「それはあり得るな。議会堂はエルダムス帝国の機関だから、情報統制は自分たちの手で行えない。よっぽど重要なものなんだろ、俺らにお鉢が回るくらいなんだから」
イガラシは人差し指を横にブンブン振った。セレスティアさんも、あんまり大きなキャラバンの指揮権はあげられない……と、偉い人に言われたのだろうなと思う。
「何かそう聞くと……結構、重要な仕事?」
「それにしては軍勢の飛蝗から報告が来たってのが気になるんすよね。……あんな大規模なトコがやらない仕事っていうのが」
フロントラインにおいて、軍勢の飛蝗と護国の隼は1、2を争う規模のキャラバンだ。今回の報告も、支部の一つが行ったものだという。一応、二つとも魔獣の討伐が主な仕事なため、調査の肩書きは無い……が、何しろ人手が多い分いくらでも出来そうなのだ。
「ま、何とかなるだろ。わざわざ新参キャラバンを騙して貶めるようなとこでも無いし。後、セレスティアさんにもいい加減楽な思いさせてあげよう」
月一で怒られるのもかなり辛いし。
「それは賛成。……そうだ、誰が一番活躍したかちゃんと書きましょう。私、勝ったらセレさんに褒めてもらいたいな」
いたずらっぽく笑うベズリーの提案に、二人は鋭く反応した。
「ベズリー!?それはズルいぞ、お前がいないと調査にならないんだから!俺だって荒事担当だし!」
「そうっすよ!僕なんか連絡と事後商談が主だからどうやったって勝てないじゃないっすか!」
「私がいなきゃ仕事にならないんだもん。アルバイト含め、少しはありがたみを知るのね」
3人が話し込んでいると、いつの間にか車内の人混みは倍以上に増えていた……が、この時の3人は全く気付いていない。




