ふたりの美少女
オレは浅井瑞希と吉井愛香によって駅前に有るアイスクリームショップへと連行されて行った。しかし、オレに対するふたりの態度はとてもフレンドリーで、傍目には仲のいい三人に見えているのだろう。どう見てもアイスクリームショップの席に座って仲好く談笑している高校生グループにしか見えない。
「嵯峨君って何処中?」
「嵯峨君って何処に住んでいるの?」
彼女達の質問は特別なものでは無かった。初対面の男女がごく普通に交わす会話以外の何ものでもなかった。しかし、オレには全てが尋問に聞こえていた。
オレはこの現状をどう理解していいものか悩んだ。悩んだあげく出した結論はとにかく謝っておく事だった。
「吉井さん、浅井さん、昼休みの事は本当に申し訳ありませんでした。決してわざとやった事では無く、不幸な事故だったのですが、全ての責任はオレに有ります。本当に申し訳ありませんでした」
オレは深々と頭を下げた。
「嵯峨君、もう良いんですよ。わざとじゃない事は解っていますし、私には怪我も有りませんでしたから……。それより、嵯峨君は大丈夫でしたか? 鼻血、いっぱい出ていたみたいだけれど……」
そう言って微笑む吉井愛香はとても可愛かった。
「オレは大丈夫。自業自得ですから……」
愛香の笑顔にドギマギしながら、どうやら許されたみたいだと思った。
「嵯峨君、私の事は『アイカ』って呼んでね」
「アタシは『ミズキ』ね。嵯峨君は友達になんて呼ばれているの?」
「親しい奴らは『ショウタ』って呼んでいるけれど……」
「ショウタねぇ、でも、他の男の子達と同じって言うのもねぇ……」
「サガンにしようよ! 『悲しみよ、こんにちは』のサガン。嵯峨君だからサガン!」
「それ良い! サガンにしよう。ね、いいでしょう?」
「オレは別に良いけれど……」
サガンは恥ずかしいと思ったけれど、なんとなく逆らえない雰囲気だった。
そんな訳でオレはミズキとアイカに『サガン』と呼ばれる事となったのだ。
そんなミズキとアイカの容姿は学年ではツートップ、全校でもトップファイブには入る程だった。そのうえ、ふたりはオレの事を『サガン』と呼び、自分達の事を『ミズキ』『アイカ』という具合に呼び捨てにするよう要求したのだ。そして負い目を感じているオレの言葉使いから敬語を禁止した。
更にふたりは、オレと腕を組んだり手を繋いだりする。だから、一見するとオレがふたりの美少女と三角関係の恋を謳歌している様に見えるのだった。
しかし実態はそんなに甘いものでは無かった。翌日からオレの生活は一変することとなったのだ。




