6話 行動開始
あれから約一年、ついに女神から許可が降りた。
「アオォオオオン」
シュバルツが動き始めた。シュバルツには二つ、この街を滅ぼすということ、マリー(今回の目標、観察する過程でわかった)を連れてくればやめるということ。この二つを言ってもらう。
人は基本的に自己保身に走る、それが圧倒的多数ならば尚更だ、武力行使をしてでも捕まえ連れてくる。そうすれば、彼女も人間は危険だと言うことがわかるだろう。あとは連れて来る過程で取り返すなり、連れてきてから話すなりすればおしまい。彼女を殺せば街が終わるので殺せもしない。完璧じゃないか
姿を消し、現場を近くで見る。
「まずは集まってくれて礼を言う。現在我々は過去に類を見ない危機に瀕している。相互不可侵の約束をした黒狼シュバルツが攻めてきている。ギルドとしてはシュバルツの討伐、もしくは撃退の方針で行こうと思う」
「ギルマス、それでは被害が大きすぎます。相手は『人ではない娘』を差し出せばてを引くと言っているのですから、そちらの方で検討した方が…」
相手は魔物だ言ったことを守るかどうかも分からない。これが一つ目の理由だ、二つ目は…ギルドは既にその娘を保護している」
そんなことを言う奴がいるとは、まずいな
「なら、なおさらそれを使ってやればいいじゃないか。どっちにしろ戦うなら、その前に打てる手を打っておいた方がいいんじゃないか?」
「そうだ、そいつを出せ」
「すこしでも生き残る希望があるのなら試してみる価値はあるじゃないか?」
「「「そうだ‼」」」
「確かに、合理的に考えるならそうだろう。だが、その子はまだ、成人していない子供なんだ。そんな子と引き換えに自分が助かることが君たちの望む姿か?」
「「「…」」」
「違うだろう、なら…」
「俺たちにだって守りたい人がいる、ここにいる大半が冒険者という生業の都合上家族がいないものがほとんどだろう。だが、町で出会った人がいる。宿の娘さん、酒場のおっちゃん、道で挨拶をした坊主、そんな身近な人たちを守るためなら、悪魔にだってなる、それが俺らなんじゃないのか」
「そうだ、見ず知らずの人のためにやすやすこのまちの人を危険に晒せるか」
「そうだ」
「そいつを出せ‼」
いいぞ、その調子。このままギルマスが裏切ってくれれば万々歳だ
「これが俺たちの結論だ、ギルマス出してくれ」
「…」
「ギルマス、なんとか言ってくれよ」
「…」
「このまま逃げられても困る、これが最後だそこを退いてくれ」
「…」
「ちっ、しかたねぇ。おまえらぁ」
いい感じ、こんなことで裏切るような奴らはすぐ裏切るからな。こいつらも今ではなくてもいずれ裏切っていただろう
「止めてっ‼私があなた達が探している人だからギルマスに暴力を振るわないで‼」
「…捕まえろ…」
全くの想定外が起きた、本人から言い出すとは。これが吉と出るか凶と出るか




