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不思議な世界の記憶


 その少女が産まれた時は何も知らなかった。この世界の住民として、何も知らずに生きてきた。創作物が好き。想像するのが好き。それでもなんの違和感もなく普通に暮らしてきた。


 それは長く続くものではなく、いずれ変化はやってくる。


 少女が十歳くらいの時、一つ目の変化が起きた。それは小さな変化。

 一時間にも満たない変化。意識がどこかへ行っていたんだろうか。起きてはいた。なのに目の前の時間は知らないうちに流れていた。その間何があったのか。何を見ていたのかわからない。


 でも、確実に変化は起きていた。


 知らない記憶にアクセスしたかのような。初めは創作物を思いつくだけのような変化だった。


 それが何か考えずにずっと過ごしてきた。ただの想像なんだと。

 その時は何も思わなかった。夢で知らない世界を見てもただの夢と思い気にしなかった。まだ安定していなかったこともあるんだろう。

 それからも夢は不思議なことが多かった。

 それ系の夢では羽根を出して空を飛ぶ。でも、少しでも気を抜けば羽根が消える。理由は不明だが、低い場所しか飛べない。

 防御や回復系の魔法を使う。攻撃系は使えない。


 それでも、それは夢だと気にしなかった。


 生きづらさは感じていた。でも、それとこれは関係がない。奇跡のようなことが起きても関連性は感じていなかった。


 気にしなくても、少女に不思議なことは起き続ける。少女には誰にも言われた事はない。創作物で見たわけでもない。なのに、忘れられない言葉や願いがいくつか存在していた。


 その言葉が、少女が考えるきっかけになった。まだ安定はしていない。それでも変わらずに知っていたことはある男の子に救われたこと。その男の子はまっすぐで優しくて平和を夢見ていた。少し不器用なところもあった。理由はわからない。でも、その男の子が暑さに弱いということはずっと知っていた。その理由を知ったのはもっと先。


「——が笑っていられて、誰よりも幸せだって言ってくれる。そんな世界をつくりたい」


 男の子はそんな感じのことを言っていた。少女は不思議と大体の意味を理解できる。でも、正確な翻訳は時間を要した。


 少女はその言葉があったからだろう。その男の子が夢の中の髪の長い少女を好きなんだと考えた。恋人だったんだろうと。まだほとんど思い出せてはいないから。


 それでも、その髪の長い少女が出会った人物を何人か浮かんできた。関係性も何もわからなかった。


 浮かんでくるきっかけはまだ何かわからない。いやなことがあったから。年齢を重ねたから。いいことがあったから。どれも当てはまらない。ただ、ぼーっとしていると浮かんでくる時がある。夢の中で浮かんでくる時がある。理由に共通するものを少女は見出せていない。


 次に待っていた変化は、知らない言葉と知らない道具。知らない薬。魔法の知識。なぜか持っている知識。この世界には存在しないものの知識だ。


 自然と魔力の関連性や、魔力認識の方法。少女はそれを知っていた。もちろん少女の生きる世界には存在せず使えはしない。


 次第に少女は自分が現在生きている世界の人なのかと疑う。それを誰かに話せば頭がおかしいと思われる。少女は自分が生きている世界の常識も知っている。


 その答えを待たずに知る新たなこと。長い髪の少女が生きていたのは滅びと創世を繰り返し続ける世界。そこには多くの世界があり、多くの人や人外が暮らしている。そこでの人という基準は心もありよう。

 その世界では転生が常識のような認識。記憶を持っているかいないかは個体によるもの。転生すぐに記憶がなくとも、きっかけがあれば思い出す。


 それから、長い髪の少女が愛情の認知が甘いこと。その理由は知らない。でも、そんな長い髪の少女が好きな男の子がいた。それはあの救いだった男の子とは違う。


 仲のいい女の子がいたを知ったのもその頃だろう。


 それからは人ではなく、その世界の仕組みや歴史について少しずつ知っていった。


 そういえば、いつだったか。少女は不思議な夢を見た。それは炎の柱が立つ建物にいる夢。そこで長い髪の少女は暑い場所がきらいなあの少年に助けられた。氷の魔法で自分たちの身を守りながら外へ向かって走る。その夢の意味を知るのはずっと後のこと。


 話は戻して、世界の仕組みだ。先ほども述べたように世界は破壊と創世を繰り返す。少女の知る最も新しい世界の歴史では、三大種族が世界で最も権威のある存在であるというのが表向き。一部の者は、五大種族と伝えられている。それは、天族、魔族、精霊。それに人間は神とも呼んでいるエリクルフィア。神の獣と呼ぶヴィングジェア。


 エリクルフィアとヴィングジェアは協力関係にあり、全ての種族の頂点に立とうとしている。


 天族は魔族を滅ぼそうとしている。精霊は基本無干渉。時々人に力を貸す。


 人間は下の下。全てに干渉されながら生きている。


 それが最も新しい世界で残る歴史。


 世界は互いに干渉し合う。だが、それを阻止する方法も存在する。阻止しなければ稀に多くの被害をもたらされる。


 世界では魔法が主流。魔法を使った技術で多くの国は栄えている。


 簡単にいえば世界の仕組みはこんな感じだ。次からは少し、長い歴史を見れば新しい方の歴史を話そう。

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