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episode 03|スキルカード

 いつも思う。フィリアの才能を無駄にしていないか、使い潰していないかと。本来であればフィリアは、王国のお抱えの魔法使いとして迎えられているはずだ。下手をするとそれ以上の地位を与えられていてもおかしくはない。それほどの実力がある。


 当然、多くの人からの勧誘があった。しかし、事あるごとにフィリアはその勧誘を断り続け、今もこうして俺の隣にいる。フィリアには感謝している。いや、感謝という言葉では余り有るくらいだ。だからこそ思う。


 フィリアの居場所はここでいいのかと。



「ねぇ!あれ見て!」



 そんなことを考えながら帰路についていると、フィリアが声を上げる。何かを発見したみたいだ。



「あれは…宝箱?」



 帰り道の途中、脇道の奥にポツンと宝箱が置かれていた。



「開けに行こうよ!」



 無邪気に宝箱のもとへ駆け寄ろうとするフィリア。しかし、俺はそれを制止する。



「待て、フィリア。どう見てもおかしい。」



 そう、どう見てもおかしい。なぜなら俺たちはこの辺の道に関して熟知している。これまで10年以上という年月を修行に費やしてきたが、中でもここメウスト森林はよく使用している修行スポットだ。にもかかわらず、俺はこの脇道を知らない。見落としていた?ありえない。これまで何百と通った道だ。


 こんな脇道など今まで存在していなかった。明らかにおかしい。だがそれ以上におかしいのはフィリアだ。



「あっ、そうだよね。罠かもしれないよね…」



 俺に制止され、考えを改めるフィリア。俺が修行で使うということは、もちろんフィリアもこの辺の道を熟知している。それなのに無警戒で宝箱に近づこうとした…普段のフィリアなら俺に言われるまでもなく警戒していただろう。



「らしくないな、フィリア。目先の宝箱にがっつくなんて。」



「あー、うん。ちょっとどうかしてた。ダメだね私、しっかりしないと。」



 そう言って自分の頬をぺちぺちと叩くフィリア。叩かれると同時に柔らかそうな頬がぶるんと弾む。もしかしたらまだ本調子じゃないのかもしれない。ここは大事をとって宝箱をスルーするのもアリか。



「罠である可能性が高いと分かっている以上、踏み抜く必要もない。このまま帰るぞ。」



「えっ!待って!開けてみようよ!」



 俺の言ってることが分からないフィリアじゃないと思うが……



「リスクが高い。ただのトラップならまだしも、宝箱のトラップはやっかいなものが多い。フィリアも分かってるだろ?」



「それはそうなんだけど……わざわざ脇道まで作って用意された宝箱なんだよ?本物の宝箱だったらすごい物が入ってるかもしれないじゃん!」



 やけに食い下がるな…盗賊系のスキルがあれば、リスク無しで宝箱を開けることができるが、あいにく俺たちは持っていない。だから開けないに越したことはないんだが……



「…はぁ、俺が開ける。フィリアは後方で待機。それでいいな?」



「うん!大丈夫!ありがとう、レイ!」



 普段自分の意見などめったに言わないフィリア。彼女がここまで言うのなら何かあるのかもしれない。それに内容はどうであれ、フィリアが自分の意志を持って主張してくれたことが嬉しかった。


 最悪、罠だったとしても最初から警戒していればどうにかなるだろう。そう考えながら宝箱に近づく。



「開けるぞ。準備はいいか?」



「うん、気を付けてね。」



 俺は剣を、フィリアは杖を構える。そうして宝箱に手をかけ、開ける。罠であればこの段階で何かしらトラップが作動するはずなので、とりあえず本物の宝箱だったらしい。


 ギッギィィィと木製の宝箱がゆっくりと口を開く。そうして宝箱の中身が露わになる 



「これは……!?」



「「スキルカード!?」」



 俺とフィリアの声が重なった。


【スキルカード】はスキルの情報や内容が込められた一種の記憶媒体だ。使用することで、そのカード内に込められたスキルを習得することができる。


 スキルや魔法の習得方法は大きく3つ存在する。1つ目はスキルカードや魔導書などの記憶媒体を用いた方法。2つ目は修行や鍛錬による方法。最後に、遺伝や先天的な方法がある。フィリアの神秘的な天眼通ミスティック・クレアヴォイアンスはこれに当たる。


 それぞれに特徴があるが、スキルカードによる習得は最も例が少ない。その理由は希少性にある。


 アイテムにはそれぞれ1~20の【tier】というものが割り振られている。例えば、どこでも採れる薬草や水はtier1であり、スライムやラットなどの弱い魔物のドロップはtier3だ。一方で、ベヒーモスやドラゴンなどの強い魔物のドロップはtier10以上の価値がある。


 そしてスキルカードだが、最低でもtier10、過去にはtier18の物も存在した。そもそもの流通量が少ないということはもちろん、本来であれば莫大な時間をかけて習得するようなスキルであっても、誰でも、一瞬で、習得することができるという、実用性も相まってこれほどのtierが付いている。


 tier10のスキルカードでも、1枚で1週間は食べていける。まさに、棚からぼたもちだ。



「フィリアのおかげだな。今日はご馳走にしようか。」



「やったぁーー!!ね?私の言う通りだったでしょ?」



 トラップの可能性も十分あったが…まぁ、ハイリスクハイリターンってやつか。そんなことを考えながら、スキルカードを手に取る。そして、文字が刻まれていく。



「…っ」



 俺は目の前の現実を疑った。なぜなら、そこに刻まれた文字は


【二刀流】 その三文字だったからだ。





 



 

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