98 金星 4
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
裏切り者に奪われた最強機体の設計図を取り返すべく、ジン達はその後を追う。
裏切り者自身は討ち取ったものの、設計図はさらに奥。そこでジン達を待ち受ける物は――。
山間の谷を奥へとCガストニアは進む。
切り立った崖が左右に聳える天然の通路……その途中でジン達は戦艦から出撃した。修理と補給は大至急で終えている。
艦の前を走るジン達の機体。その視界が大きく開けた。
奥には巨大な翼竜がいた。全身に金属板の装甲が張り付いた、やけに胴体の大きな翼竜が。地面に両の足を降ろし、翼を畳んで首をもたげている。
リリマナジンの肩で叫んだ。
「あれ、戦艦だよォ!」
「まぁ魔王軍だって持ってるだろ」
部隊ごと来ているのだから、それを運ぶ物があってもおかしくはない。そう考えるジンの前で、翼竜の腹部にあるハッチが開いた。
『奴では相手にならなかったか。そのせいで俺の相手をせねばらなんとは、お前達もまた不幸な奴だ』
ハッチの奥から通信が届く。
姿を現すのは、黄金の装甲を鎧にしたケイオス・ウォリアー……!
「あいつは……スクク基地を吹き飛ばした黄金級機の!」
そう言うジンの前に現れたのは、確かに魔王軍四天王の一人・ジェネラルアルタルフが駆る黄金級機、Gアビスキャンサー……!
「ディーンがおかしくなったのはお前のせいか?」
ジンはアルタルフに訊いた。
相手は「ククク……」と嘲るように笑う。
『裏切る奴を信用するのは馬鹿げているからな。そのための「措置」をとらせてもらった。暗黒大僧正が直々にくださった「薬」を注入したのだが……まぁやる気に満ち溢れて良かったではないか』
『やはり……奴らのせいか……!』
怒りの滲む声で呟くヴァルキュリナ。
だがアルタルフはそれを気にした様子も無かった。
『こちらに近づいてきたのは奴の勝手よ。あいつが倒れた今、俺自らがスイデン国を滅ぼしに行かねばな。お前達の命をその狼煙としよう』
黄金級機によって滅ぼされた国など、歴史上枚挙にいとまがない――それを思い出しながら、ジンはスピリットコマンド【スカウト】を放つ。
いつも通り、相手のステータスがジン機のモニターに表示された。
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ジェネラルアルタルフ レベル33
Gアビスキャンサー
HP:40000/40000 EN:265/265 装甲:2370 運動:135 照準:200
HP回復(小) EN回復(小) オールキャンセラー
射 ヘルホール(MAP) 攻撃4300 射程1―6
格 ゴールドシザー 攻撃4800 射程P1-2
射 ヘルホール 攻撃5300 射程1-8
HP回復(小):一定時間ごとにHPが10%回復する。
EN回復(小):一定時間ごとにENが10%回復する。
オールキャンセラー:あらゆるバッドステータスを無効にする。
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「HPが……40000!? 白銀級機が一万や二万なんだから次は三万じゃねぇのか? スジが通らねえ!」
一足飛びに上がったステータスを見て歯軋りするジン。
(なるほど、一国を滅ぼす事もできるわけだ。そこらの量産機じゃ掠り傷しか負わせられない装甲に、そんなもんをいくら食らっても帳消しにする再生能力。それでENは半無尽蔵……並の量産機が何百何千いてもこいつには絶対に勝てねぇ!)
「なによォ! 強い機体に頼って!」
リリマナも頬を膨らませた。
だがアルタルフはその言葉をせせら笑う。
「ならば俺のステータスも見てみたらどうだ」
自信に満ちた声に嫌な予感を覚えつつも、ジンは画面を切り替えた。
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ジェネラルアルタルフ レベル33
格闘222 射撃222 技量239 防御174 回避132 命中152 SP116
ケイオス9 アタッカー 指揮官4
アタッカー:気力130以上で与ダメージ20%上昇。
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「ケイオス9レベル!?」
目を疑うジン。
他世界から召喚された者が持つ次元の力、異界流。それを0~9までの十段階で表示したのが、モニターに映るスキル名とそのレベルだった筈だ。
目の前の敵は……召喚された戦士として、最高の能力を開花させている事になる。
モニターにアルタルフの顔が映った。口髭をたくわえ、ターバンを巻いた浅黒い肌の中年男の顔が。鋭い眼光を放つ双眸は、余裕と侮蔑を籠めて笑っていた。
『黄金級機に乗る物はほぼ全て最高の異界流をもつ。この世に初めてケイオス・ウォリアーが誕生した遙か古代よりな。なぜこの世界の巨大ロボがケイオスウォリアーなのか、真の意味が理解できたか? 異界流の真髄を極めた究極の戦士……それが黄金級機の聖勇士!』
機体解説
Gアビスキャンサー
深海型の黄金級ケイオス・ウォリアー。カニをモチーフにした黄金の鎧に全身を包み、背には8本の脚が折りたたまれて一見翼のように見える。
エンジンに使われた「深淵」の神蒼玉により、「存在を検知できないほど深いどこか(検知できないので詳細は一切不明)」から直接エネルギーを取り出し、事実上「無からのエネルギー補給」を常時行っている。これにより無尽蔵の再生・回復能力を有する。
同アイテムの力により空間の深度に干渉して重力を異常増大させ、範囲内の分子構造自体を破壊する武器が「ヘルホール」。この攻撃は視覚的にはあらゆる物を呑み込む黒い球体に見える。
この能力は近接戦闘にも応用され、腕部装甲と一体化したハサミ「ゴールドシザー」で敵を切断する時には、ハサミの硬度ではなく秘宝の魔力で敵装甲の分子結合を「斬って」いる。
水中適応Sをほこる機体であり、人魚の王国を一夜で滅ぼした。
だが大概の文明種族は陸に拠点を構えるので、水適応が役に立った事はその一国相手ぐらいしかない。
陸上(適応A)でも無敵の強さを誇ってはいるので操縦者本人は割と気にせず地上で戦っている。




