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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
47/353

47 黄金 5

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

この世界最強の兵器の設計図を運んでいる艦の護衛を続けるジン達。

彼らは巨大艦を集めて作られた基地へやってきたが、そこにも敵の魔の手が伸びて来た――。

 揺れ続ける基地の中、クロカの案内でジン達を乗せたゴーレムは基地の中を走った。ドスドスした走り方は決して速く無かったが。

「ジン、大丈夫? このぐらいしかできないけど……」

 そう言いながら、ナイナイは自分の服をナイフで切り裂き、それを包帯代わりに止血する。揺れる荷台の上だというのに、器用にやってみせた。

「ああ、すまねぇ。助かる」

 礼を言うジン。

 爆音と喧騒、混乱の中、ほどなく治療術師達がいる医務室には辿り着いたが――


「うわちゃ……順番待ちだね……」

 額を抑えるクロカ。

 魔王軍の奇襲はかなりの成功を修めているらしく、大きな部屋はケガ人でいっぱいだ。白いローブを纏った術者達が負傷兵の間を走り、片っ端から回復魔法をかけてまわっているが、寝転んでいる者、座り込んでいる者、膝をついて呻いている者……後どれだけいるのかわからない。


「なんだ、このゴーレムは! 邪魔……っておい、ゴブリンやリザードマンがいるぞ!」

 兵士の一人が怒鳴りながら剣を抜こうとした。治療術師が慌ててそれを圧し留める。

「なんなんですか、貴方達は? ここは忙しいんです、出て行ってください」

 別の術師が――ゴブオ、ダインスケン、ジンの異形の右腕を気味悪そうに見ながら――言う。ジンが負傷しているのは見えている筈だが近づこうとしない。


 ジンは溜息をついた。

「わかった。薬だけ適当にくれ」

 近くで警戒していた術師の一人がポーションを一瓶渡す――クロカに。

「悪いな」

 ジンは術師にそう言うと、クロカから薬を受け取った。

「何も悪くないよ……!」

 悔しそうに小さな声で呟くナイナイ。

 だがそんな声は部屋で飛び交う叫びや呪文の詠唱で消えるだけだ。

 治療する者もされる者も、自分の事で手一杯なのだから。怪しい魔物じみた連中への労わりなどあるわけがない。



「よし、機体は準備できてるな!」

 巨大艦の格納庫。その片隅でジン達は自分の機体を見つける。

 周囲ではスイデン軍の兵士達がおおわらわでケイオス・ウォリアーに乗り、開けっ放しのハッチから次々と飛び出していた。出撃命令は絶える事なく怒鳴り声で出続けているが、ちゃんとそれを聞いて指示通りに出ているのかどうかは怪しいものだ。

 クロカがジンに言う。

「私らはヴァルキュリナを探すよ。しばらく独自判断で戦って」

「わかった。気をつけてな」

 クロカとゴブオにそう言うと、ジンはBカノンピルバグの操縦席へと駆け込んだ。リリマナも宙を飛んでそれに続く。

 シートベルトで体を固定し、機体のハッチを閉じる。ジンの視界がケイオス・ウォリアーの物に切り替わった。左右を見れば、ナイナイとダインスケンの機体も動き出している。

『ジン、ケガは大丈夫なの?』

 ナイナイの心配する声が届いた。

「あの回復薬、安物だから。体は本調子じゃない筈だよ?」

 リリマナにも不安があるようだ。

「まぁ傷は塞がったからよ。さすが魔法の薬だぜ」

 言って笑うジン。その言葉は嘘ではない。

 痣は薄くなった。痛みも無い。出血も止まった。行動に支障は無い筈だ。

(安物という割にはよく効いたな。それともナイナイの応急手当が効果あったのか? ま、ともかく……)

「こちらジン、出るぞ!」

 周囲へそう叫んで、ジンは巨大艦のハッチへ機体を走らせた。その頃には艦の搭載機はあらかた出ており、他の部隊を気にする事なく出撃する事ができた。



 山間の荒野へ飛び出すジン。

 緑などほとんど無い、土の上と岩の間を風が吹き抜ける不毛の地。

 そのあちこちで煙があがり、爆音が轟き、剣が打ち合わされている。魔王軍とスイデン軍は乱戦状態になっており、撃破されたばかりのケイオス・ウォリアーがそこかしこで残骸を晒していた。

『ジン、どうするの?』

 追いついてきたナイナイが訊く。

 ジンは自分の目で戦闘MAPを睨み、機体の眼で周囲の戦闘を見渡した。

 少数同士での乱戦はいつ終わるともなく続いている。魔王軍の機体には、ジン達を見つけて接近してくる物もあった。

(NPCと敵軍の混戦……ゲームならMAP兵器でまとめて吹っ飛ばすんだがな)

 実際にやれば、お咎めどころの話ではないだろう。

「とりあえず固まって、近づく敵に応戦するぞ。混戦がもう少し収まるまではな」

 そう言って射程に入った敵へ容赦の無い砲撃を撃ち込む。被弾し、よろめく敵を、援護に入ったダインスケンのBクローリザードが鋭利な爪で叩き斬った。


 近づく敵小隊を二組ほど撃破した辺りで、戦場の混乱も静まって来た。

 両軍、その数をだいぶ減らしたのである。しかしその数は――明らかに魔王軍の方が多い。奇襲の影響はずいぶんと大きかったようだ。

 敵味方とも、まだ戦闘続行な機体は大きな岩を盾に、或いは巨艦の陰にと少しでも有利な地形を利用し、相手を戦闘MAPで探しながら戦い続けている。

 ジン達も岩場の裂け目を天然の塹壕として利用し、戦場を窺っていた。

「次に近い敵……岩山の麓かなァ?」

『出て行くと狙い撃ちされないかな。このままパンゴリンが出てくるのを待とうよ……』

 MAPを見るリリマナにナイナイの不安そうな声が届く。


(気のせいか? ナイナイが妙に消極的な気がするが……)

 少し違和感を覚えるジン。

 ナイナイは元々強気な性格ではない。だが敵との交戦を嫌がり、どこにいるかわからない助けを待とうとまで言うとは……。


 だが違和感を追求する暇は無かった。

「敵増援! あっちの山陰!」

 MAPを見て叫ぶリリマナ。

「一機?」

 訝しむジン。MAPに映るのも、機体の眼で確認しても、そこにいるのは一機だけだ。

 鎧状の胴体装甲はBランク機よりも豪華で頑丈な物である。白銀級機(シルバークラス)なのはそれでわかった。しかしやたら平たい頭に力ない垂れ目、半開きの厚ぼったい唇……まるで強そうには見えない。

 一見ふざけてさえいるかのように見えるその機体――鎧を来たエイ型のケイオス・ウォリアーから、周囲へ声高に通信が放たれた。


『ようこそ皆さん。私こそが魔王軍海戦大隊最強の親衛隊マスタービショップ。君達を埋葬しに来た聖職者です。死までの短い時間、ご自分の宗派に合わせた祈りを唱えておきなさい』

 そう言うと、白銀級機(シルバークラス)は無造作に前進を開始した。敵と味方があちこちに潜み、撃破された残骸が無数に転がる戦場へ、堂々と。


 もちろんそんなマネをしてタダで済む筈も無い。スイデン軍のケイオス・ウォリアーが照準を合わせ、射撃武器を撃ち込もうとする。

 それに対し、魔王軍側は慌てて再度の攻撃へ移ろうとした。自軍の親衛隊を守ろうとして。


 だがそれらの中央で、エイ型のケイオス・ウォリアーは激しい光を放った。

 とぼけた頭部の両側から、無数の稲光が放たれ、周囲一帯を焼き焦がす!

 通信機を通して、いくつもの悲鳴が重なった……。


 マスタービショップの笑い声。稲光が収まった時、交戦しようとしていた()()()ケイオス・ウォリアーは黒焦げの残骸となっていた。

 思わず呟くジン。

「MAP兵器で……味方ごと、かよ!」

『それも彼ら兵士の仕事のうち。私が信仰する神は言われました。死は全ての命に平等である、故にいかなる死に方も大きな差は無い、と』

 呟きをききつけ、マスタービショップから聞いてもいない返答が入る。

「どんな神よ、それェ!」

『死神の一柱、殺戮の神マーダウスです。昔の魔王にも信者がいた由緒ある宗派ですよ』

 憤慨するリリマナに返ってきたのは、実に楽しそうな笑いながらの声だった。

GAイバーの降臨者テクノロジーはなんでもかんでもバイオ系技術で「なんでそんなに生体への信頼が厚いんだよ」と思っていた。

だが近年、それは間違いではないかと考える。

惑星の環境なんて様々だ。資源量だって地球と同じではないだろう。


もし金属埋蔵量が(地球比で)メチャクチャ少なく、逆に生物量がヤケクソに豊富で数・質ともにいくらでも選べる星があり、そこで知的生物の文明が栄えたとしよう。

そりゃ何でもかんでも生体素材で作るわな。それを使うのが当然だし、他に使う物無いんだから。

コントロールメタルに使われた僅かな金属量が、実は母星では希少素材をふんだんに使った高級部品なのかもしれん。

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― 新着の感想 ―
[一言] ク□ノス(←伏せ字になってない)って、ほぼ唯一の「世界征服とその後の支配に成功した悪の秘密結社」なんですよねえ。 オーバーテクノロジー持ちの秘密結社が真面目に世界を支配しようとしたら、一般市…
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