アレン少年との別れ。また会おう。
階段を上がると詰所の兵士達が床に転がっていた、どうやら気絶しているようだ。
「ここの兵士達には眠ってもらった。気づかれる前に急ぐぞ」
「急ぐったってどこに行く気なんだ?隠れる気か?」
「急いでこの街を離れる、追手は来るだろうがここよりマシだ」
ふむ、まあ仕方がないのかな。本当は大会に出たかったんだけど。
「アレンや親方も君に会いたがっていたぞ、こうなってしまったのは残念だが」
「あ、アレン少年忘れてた。ちょっと行かせてもらうよ」
「そんな暇はないぞ、早くしないと気づかれる」
「まあ最悪気付かれても押し通るさ、ナツミさんの立場があったから何もしなかっただけだし」
ナツミさんが覚悟決めてこうして私を助けたんだ。私も自重はしないよ?
「・・・実際そうなのだろうな、君が抵抗していればこの街は今頃廃墟だ」
流石に周りの影響くらいは考えますよ?考えなくていい時はその限りではないけどね。
「アレンと親方なら…多分工房だろう。急ぐぞ」
詰所を出てナツミについていく。いくつも細い裏路地を抜けて工房へと急ぐ。
「アレン、親方!いるか!」
ちょうど工房の裏口に当たるのだろう。人がいない。扉を叩き声を掛けるナツミ
「お、その声は」
ガチャっと扉が開き中から出てきたのは親方だ。反応の速さを見ると来るのを確信していたのかもしれない。
「おぉ、レイカも案外元気そうだ。何かされたわけじゃなさそうだな」
「親方も特に何もなさそうで安心したよ、しかし待ってたのか?」
「ああ、本当は俺も手伝ってやりたかったが力がねぇからな。代わりといっちゃなんだが餞別だ、ほれ」
布を纏った何かを投げ渡される。受け取るとそれは思いの外重くズッシリと腕にのし掛かった。
「なんだこれ、重くない?」
「弟子達も含め全員で急ピッチで仕上げたブツさ、助けてもらった礼もあるんだ、受け取ってくれ」
中に入っていたのは様々な武器防具だ。私が使えそうなものもいくつか見えた。せっかくの好意だ、ありがたく貰おう。
「ありがと、大事にするよ。それでアレン少年は?」
「ん?ああ、アイツなら・・・おーい!少年!きてるぞー!」
何やら後ろに声を掛けるとドタバタと走る音が聞こえ、こちらにきた。
「レイカさん!無事でしたか!?よかったぁぁぁぁぁ、酷いことされたんじゃないかって心配したんですよぉ!」
そういうアレン少年の顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
「少年が一番心配してたんだぞ、止めなきゃ詰所に突撃してたほどだ」
「そうだったか、すまんねアレン少年」
「付き合いは短いですけど、レイカさんはそんな事する人じゃないと思ってましたからね!」
「ありがとね、とりあえずこの街を出ることになったからその挨拶に来たんだ。アレン少年とはここまでになりそうだ。それとアレン少年、プレゼントだ」
「え?」
私の都合でここまで振り回した訳だし、その礼はしっかりしないとね。妹の為にやってると言ったし、これをプレゼントだ。
「ほれ、受け取りな」
「あ、はい・・・こ、これって」
「うん、解呪アイテムとか回復アイテムを適当に入れておいた。これで妹さんを治してやんな」
一通り入れたからどれかは効果発揮するだろう。どうせアイテムボックスの中で眠るだけならあげた方がいいし。
「あ、ありがとうございます!」
そう言うアレン少年はまた泣きそうになっている。案外泣き虫だな?
「次会う時までにその泣き癖は治しておきなよ?魔法使いを目指すんだろう?」
かっこいいって言ってたもんな。私としてもそうして目指してくれるのは嬉しい。
「・・・はい!」
「レイカ殿、そろそろ行こう。気付かれてもおかしくない」
肩を掴み後ろを気にするナツミさんに私も返事をしてついていく。その姿が見えなくなるまで、アレンはずっとお辞儀をしていた。
レイカにとってアレンは振り回すのが楽しい子供って感じですね。先に立つ者としてアレンが魔法使いになるのを楽しみにしてます。




