リラックスは大事
「それでどうするのです?このままというのも退屈になりそうですが」
「そうなんだよな、暇つぶしになりそうな事もここじゃないだろう?」
私達以外誰もいない牢屋にボリボリ、バリバリと乾いた音が鳴る。
「うえっ、喉詰まった」
「そんな詰め込むからですよ、ほらお茶」
すっとお茶を差し出されるのでゴクゴクと飲み干して一息つく。
コップを机に置き、頬杖をつく私と私に撫でられて満更でもない顔をしているバルキリー。ちなみにワルキューレは寝てる。
「・・・あの、いい加減言ってもいいか?」
そんな声が牢屋の外から聞こえる。そちらを見れば槍を持った軽装の鎧を纏った青年がいた。
「あー、見張りか。ご苦労様ー」
「いえいえ、これも仕事・・・って違う!そうじゃなくて!」
「声が大きいわ、耳に響く」
ただでさえ狭いんだから音が反響してうるさい。
「ここ牢屋だよな!あんたら捕まってんだよな!?」
何を当たり前な事を。牢屋に入っているのに捕まって無いわけなかろう。
「なんで色々充実してんだ!なんで当たり前のようにお菓子食べてお茶飲んでリラックスしてんだ!」
そうそう、アイテムボックスから色々取り出して牢屋をリフォームしたんだった。本当はハウジングて家を持った時に使う家具なんかもあったからついでに置いてる。
いやー、ゲームの頃から見た目に拘ってるとは思っていたがお菓子すらこうして食べると絶品なのだから驚きだ。
「まあまあ、そう言わずに君も食べる?煎餅美味いよ?」
バリバリと食べる。うん、美味しいね。
「要らんわ・・・手錠はどうした、あれは魔力をカットするはずだからお前には外せないはずだ」
「ん?ああ、手錠?それならブチっとここにいる方が」
そこで優雅にお茶飲んでるバルキリーさんが一瞬で壊しました。私は悪くないです。
「・・・もう知らん。大人しくしてろよ!マジで!分かったな!」
そう言って見張りの青年は上に上がっていった。しかしこうして待つのはいいが、暇だ。いっそ脱走してみるか・・・いやいや、それはナツミさんが責任問われそうだし。
しかし、これナツミさんのせいか?あの人はいい人っぽかったんだけどなー、だとしたら悲しい。あの部隊の様子を見る限り、私の事をどうしても捕まえたかったように見える。理由もだいぶ強引だし。
これがよく聞く貴族なんかの私欲によるものなら私も何も考えずぶっ飛ばせるんだけどな。
「勢いで竜と戦うのはやめた方がよかったか、そのせいでこんなことになったっぽいし」
「そうでしょうか?失礼ですが主人は破天荒ですし、遅かれ早かれこうなっていたような気がします」
それを言われると言い返せない。その場の勢いで色々決めるのは私の悪い癖だ。いずれこうなっていたかもしれない。
「・・・誰か来ますよ主人」
そこですっと視線を牢屋の外に向けるバルキリー。ん、誰だろう?
「無事かレイカ殿・・・ってこれは一体」
そこに現れたのは息を切らしているナツミさんだった。ここに入ってから数時間くらいだが、何かあったのか。
「あ、これは暇だったから弄ってただけだ。煎餅食べる?」
「そ、そうか・・・もう大抵の事では驚かん。急いでここを出るぞ、来るんだ」
懐から牢屋の鍵を取り出して扉を開けるナツミさん。助けに来てくれたんだろうか?
「お、ありがたい。だけどいいの?ナツミさんって騎士じゃないの?」
こんな事したら後が怖いと思うんだけど。
それに自嘲気味に笑うとナツミさんは言った。
「ここに私が求めた正義はなかった。どこもかしこも腐っていたよ。今まで私は正義だと盲信し、真実を見ようとしなかった。しかしもう決めた。それなら私は自分の正しいと思ったことをすると」
「なるほど、ならいこうか。それがナツミさんのやりたい事なんでしょ?」
あ、バルキリーがまだ寝てるワルキューレを蹴ってる。可哀想に。
「ああ・・・それとすまなかった。私のせいでこんなことに」
「気にしなくていいよー、私がやりたい事をやった結果なんだし私は気にしてない」
王都には行ってみたかったが、こうなったなら流れに任せよう。
「来てくれ、異変に気づかれる前にここを出たい」
「了解」
そうしてナツミさんと私達は牢屋を出て階段を走っていった。ちゃんと牢屋にあったものは全て回収しておいたけど。




