歩くの面倒になった
今回短いです。
夜が明け、鳥が鳴き木々の隙間から光が漏れる。そんな朝に私とアレン少年は再び街を目指して歩く。
「晴れて良かったです。これで雨だと最悪ですから」
「まあびしょ濡れで目覚めるのは嫌だな」
野宿でも寝ることに苦労はなかったがこれで雨だと確かに面倒だ。どっかでテントみたいなものでも買うべきか・・・覚えてたら買おう。
「さてアレン少年、空か陸か。どっちがいい?」
「はい?なんの話です?」
「いいからいいから」
「はぁ・・・陸ですかね」
困惑しながら答えるアレン少年に私は笑みを浮かべメニュー画面を開く。
「ならこいつだな」
ペットのアイコンを押し、召喚する。
もはや見慣れ始めた魔法陣を通して出てくるのは・・・私の目線ほどの高さほどある体に太い4本足、白い整った毛並が特徴の狼『フェンリル』である。
「久々だな、フェンってちょい待てやめろ!私の髪を咥えんな!」
フェンリルは私の顔を見るや興奮した様子で顔をベロベロと舐め回し始める。
「ほらほら落ち着け!長い間ほっといてすまなかったから!」
舐められながらも首元をモフモフと撫でて落ち着かせる。すると尻を地面につけてお座りのポーズでこちらを見てきた。
「よしよし、落ち着いたな。まあ頼みがあって呼んだんだけど・・・とりあえず背中に乗せて私の言う方向に走ってくれ」
ワウ!と吠えると私に背中を向け顔だけをこちらに向けてくる。ちなみにさっきから箒で地面掃除してんのかってくらい尻尾を振ってたりする。
「レ、レイカさん。この狼ってもしかして・・・」
その様子を見ていたアレン少年が恐る恐ると言った様子で聞いてくるので私は軽く答える。
「ん、フェンリルだ。長い付き合いなんだ」
ゲーム時代では一時期フェンリルが流行ったことがあった。そんな時に私も欲しくなりフェンリルが子供の頃から育成したんだ。
「フェ、フェンリル様ぁぁぁぁぁぁあ!!?う、嘘ですよね!?神聖な狼とされ神の使いとまで言われているんですけど!」
「はえー、そんな扱いなのか。別に嘘つく理由ないし本当だぞ。なー、フェンリル」
背中を撫でながら聞けばフェンリルもワウ!と答えた。しかし神の使いて、それだとゲームの頃は神の使いが山ほどいた事になるんだけど。
「ほ、本当なんですか・・・はぁ、いやもういいです。なんか一々驚いてたら疲れてきました」
「そうか、ほれ乗るぞ」
背中に乗り、アレン少年の手を掴み私の後ろに乗せる。
「レイカさんって本当に非常識ですよね、まるで四賢者みたいだ」
「そうか?私にはよく分からんなぁ、やりたい事やってるだけだし」
そんな事を言ってるうちにフェンリルは私達を背中に乗せて走り出す。うおっ、すげぇ揺れる!
思わずフェンリルの背中にしがみつき、体毛を握る。この時、それにより嬉しくなったフェンリルが更に加速している事に気づかなかった。お陰で街に着く頃にはアレン少年も私もグロッキーになるのであった。
書いてて飼っている犬を思い出しました。昔は撫でるだけで満足してましたが、飼い始めると親バカみたいになりますね。可愛くて仕方ないです。




