綺麗な空と醜い我欲
少し長い会話回です
「待ってくださいよ!自由すぎる!」
アレン少年が後ろから走ってついてくるのを見つつ、私はダンジョンを離れ次の街へと足を進めている。森の中だから地図がなきゃ迷ってたな。
本当はまたペット召喚してさっさと行きたいが、リヴァイアサンとか見たらアレン少年が気絶しかねないし自重した。前も姿見られて周りを混乱させてしまったし。
「何か考えがあると思ってついてきましたけど!野営の準備とかしなくて良いんですか!?」
「はて、野営か。考えたことなかったな。まあなんとかなるでしょ、多分」
「適当すぎる・・・!」
軽くついてきたことを後悔しつつあるアレン少年はため息をつきながら懐のポーチから物を取り出す。
「もう暗くなりますし、ここらで野営しましょう。これがあれば火とかは問題ないですから。テントはないですし野宿になるのは仕方ないですけど」
それは魔石と呼ばれる石と鉄の棒のようなものだ。魔石はモンスターからドロップするアイテムで換金アイテムだが雀の涙ほどしか価値がなかったものだ。
「アレン少年、それは?」
「火付けの道具です、棒で擦って火を起こすんです」
「はえー、便利なもんだなぁ」
「逆に知らずにどうやってきたんですか・・・」
ゲーム時代は簡単に移動できたからね、野営なんて考えることすらない。しかしキャンプなんて何年ぶりだろう?学生の頃に林間学校やった時以来か?
そんな事を思い出して懐かしむ私を他所にアレン少年はテキパキと周囲の枝を集めて組み合わせ、火をつけた。最初は小さかった火もあっという間に大きな火になり、枝が爆ぜパチパチと音を立て始めた。
「レイカさんは食料とかありますか?」
「いやあったかなぁ、ちょいと待って」
食料なんてゲームのとか必要ないし、持ってたかなぁ・・・代用できそうなものは・・・あ、これなんかいいかも。
アイテムボックスから取り出すのはゲーム時代に攻撃力強化の効果があった骨つき肉の料理だ。単純な効果とはいえ戦力につながる為結構人気があった。
「今どこから出したんです!?」
ん?もしかしてアイテムボックスとかないのか?私限定?
「あー、魔法だよ魔法」
「はぁ・・・食料はあったんです?」
「うん、これなんかどうよ」
そう言って皿にのった料理を渡す。ゲームの頃は無駄にグラフィックが良くて腹が減るとは思っていたが、こうして現実に食えるようになるのは嬉しいな。どんな味がするんだろう?
「ふんふん・・・匂いも問題なさそうです。ちょっと食べてみますね」
そういって懐からナイフを取り出し肉を切り分け少し食べるアレン少年
「う、うまい・・・なんですかこれ、食べた事ないくらい美味いんですけど」
「ほうほう、どれどれ」
私も切り分けられた肉の一切れをパクリと口にする。
「・・・うまいな」
脂の乗った肉に主張しすぎないよう掛けられたスパイスが調和し、口の中で溶けていく肉の感触。私も今まで口にしたことが無いほど美味かった。
「まだあるから食っていいよ、ほれ」
もう一皿同じものを出して私も焚き火を挟みアレン少年の向かいに座る。
「いただきます」
そう手を合わせてから食べ始める。その肉の味を心から楽しんで数十分。腹が満たされふっと息を吐いた。
そういえば・・・今日1日で色々とあったが、私はこの世界に来てまだ1日目なんだよなぁ。既に色々と振り返ることが出来るほどの濃い内容だと笑ってしまうな。
ゴロンと地べたに寝転がり空を見上げる。
そこには満天の空が広がり、これでもかというほどに星々が光を放ちその存在を示す。
「綺麗だなー」
そんな私の様子に気づき同じように空を見上げるアレン少年
「そうですか?いつでも見れるものですけど」
不思議そうな顔で空を見上げるアレン少年に私は少し苦笑する。
「まあ確かにそうだなー、空はいつでも見れる。でも私の出身地ではなんていうか・・・空を見る人はいなかったんだよね」
「え、なんでですか?」
「勿体ないよなぁ、空はいつだって綺麗なのに。みんな時間に追われてて必死でさ、光や音に掻き消された空なんて見る余裕なかったんだよ」
いまや過去になったあの世界。立ち並ぶビルに行き交う車、いつのまにか人は下を向くようになった。今こうして見る空はあの空よりも綺麗で隅々まで澄み渡っている。
「そうだったんですか・・・」
「うん・・・そういえば聞いてなかった。アレン少年はなんでまた桜の涙を欲しがったの?」
何か深い訳があるんだろうとは思っているが、気になるしこの際聞いちゃおう。
「・・・僕が冒険者になったのは、病に倒れた妹を治す為なんです。それも不治の病と言われて見放された病気を」
「ふむ」
「それでも世界にはまだそんな病気を治せる可能性がある魔法や物があるかもしれない、そう思って冒険者を始めたんです」
「なるほど、それで桜の涙か」
空を見ていたアレン少年は俯く。
「ええ、それがあれば妹の病気を治せるかもしれない。そう思ったらレイカさんに飛びついたんです・・・そんな不純な理由です。軽蔑してもらってもいいですよ」
「なんでさ、立派な理由じゃんか」
「え?」
アレン少年は私の顔を見る。ふっと笑いかけ私もアレン少年を見る。
「人間なんて単純でさ。世界を探検するとかそんな理由で動けるほど優しくないのよ。私だってあの仮面の男と戦ったのも誰かの為とか思ってないし。私がやりたいからやっただけ」
いい人も悪い人も、結局は各々がやりたいと思った事をやるだけ。その結果を、過程を見て周りが勝手に悪だの善だの決めるだけだし。ならこうしたいと思った事に手を伸ばす姿は好きだ。きっとそれは醜い欲だろう。でもその方がらしい。
「アレン少年が助けたい、って思ったんでしょ?ならそれは立派な理由さ。むしろ人々の為にーなんて言ってる奴の方が信用できんさ」
「・・・変わってますね」
「ま、変人とはよく言われるよ。頭おかしいとか言われた事あるし」
「同感です、レイカさんは少しおかしい人ですから」
アレン少年はそう言って笑った。
「あー、酷い言い草だなぁ。全く」
「ふふ・・・。もう夜も暗いです、寝ません?」
「それもそうだなー。おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」
たまに見上げる空は案外綺麗で、悪くないと思いますよ?




