謎の穴と二人の冒険者。なんかニヤニヤしたくなるね
一通り誰もいない所で悶絶した後、落ち着いてから辺りを見回す。あの男は何の目的でここに居たんだろうか。あの強さならここのボスに挑戦する意味もないように感じるが・・・私みたいな物好きなら別だけど。
このまま帰るのもあれなので調べてみると、ボスが本来待機している場所の床が取れており空洞になっていた。隠し階段かと思ったが人一人入れるだけのスペースはなく物などを隠す為のように見えた。
「これは知らなかったな、ゲーム時代は床とか調べる事なかったし」
実際攻略情報みても腕試しボスとしか書かれておらずここに調べようなんて人はいなかった。
いや、ここに何かあったとして・・・ボスがそれを守ってたって事か?それなら他のモンスターと比べて遥かに強い理由もつく。
ふーむ・・・ま、考えても仕方がない。いずれ分かるかもしれないしここはさっさと行こうか。
そういえばアレン少年はどうしたのかね、リザードマンを護衛に向かわせて外に脱出した筈だけど。結構時間経ってるはずだ。
メニュー画面を開き確認すればリザードマンは帰還している。どうやら命令を達成し帰還したようだ。倒されているなら召喚がしばらくできない仕様だからすぐに分かる。
「大丈夫か!助けに来た・・・ぞ」
と、そんなことを考えてたら早速来た。そういえばまだ何も片付けてないからこの辺死体の山とか削られまくった岩肌とかヤバいのでは?
「こ、これは・・・」
服のように見えて要所は何重にも重ねた布と木の皮に鉄をつける事で防御力を上げている緑色の装備を来た髭面の男がきた。こっちをみて目を点にしているが。
どうやら入り口で騒いでいた冒険者たちを連れてきたようだ。アレン少年はどうしたのかね
「あー、うん。ごめん襲われたんだけど襲った奴逃しちゃった」
「君が話に聞いていた冒険者か、この死体の山は?何も判別できないほど切り裂かれているが・・・」
「私は魔法使いなんだ、敵と戦うとだいたいこんなことになる」
私の得意スタイルは風を使ったリーチの長さと斬撃を利用した格闘だから、戦うとこうなる事が多い。ゲーム時代は仲間にもドン引きされたなぁ。
「なるほど…この規模。相当ギリギリだったんだな」
それで理解したのか、彼は周りを見渡し頷いた。
「君が無事でよかった、俺の名前はノバン。話に聞いた不審者について聞きたいのだがいいか?」
そうして手を差し出してくるので手を握り私も答えた。
「私はレイカ、ここのボスに用があって来たんだが見ての通り巻き込まれてね。相手の容姿くらいしか教えられる事がないんだ、すまない」
「いやそれだけでも十分だ。冒険者を襲うなどろくな奴ではないからな・・・」
ふむ、ゲーム時代の倫理観と同じでPKをよく思わないのは一緒らしい。ちなみにPKとは略称でプレイヤーキルの略だ。
私はよく狙われたから返り討ちにしてたな。まあ不意打ちに弱いし、魔法使い。対策のしようがないわけではないがね?
「とりあえずここを離れないか?少し疲れたんで外の空気を吸いたい」
こんな死体まみれのとこで話すなもあれだしね?ちなみに、ドロップ品がないかなーなんて思ったけど流石にそこまで都合がいいわけもなく、召喚された魔物故かドロップ品はなかった。
チッ、金になると思ったのに。
そんなこんなで外に出たら人だかりが出来ていた。助けを呼べとは言ったがここまでとは思ってなかったよ?
「ちょっとどうだったの!?」
ダンジョンから出て来た私とノバンに野次馬と思われる集団の中からかき分けてこちらにくる女性が話しかけて来た。
その姿は普通の服の上から鉄の胸当をつけて手足に皮の具足をつけた軽装で、茶髪のショートヘアが特徴的な女性だ。
「ああ、とりあえず言われていた人は見つけたよ。それで不審者は逃げたらしい」
「そう、良かった。死人が出るのはあまりいい事じゃないし」
そうなのか、ぶっちゃけ冒険者なんて高難易度のボスなんかに挑んだりとかで死ぬこと多いと思うんだけどな。
「で、その人が言ってた人?子供に泣き付かれた時は何か思ったけど。その後には爆音と揺れが起こったし」
あ、やっぱり外にも影響あったかー・・・自重した方が良さそうだ。強いんだけど周りへの影響が凄いわ。
「どうも、私はレイカ。そちらは?」
「あ、紹介を忘れてたわ。私はドルビー。そこの冴えない髭面の仲間よ」
「ひでぇ言いようだな!そんなだから未だに結婚できねぇんだぞ?」
「うるさいわね、時代が私に追いついてないだけよ。それにあんた、美人だからって鼻の下伸ばしてんじゃないわよ」
ドスドスと腹を殴るドルビーに苦笑いでそれを受け流すノバン。なんだろうこの幼なじみのような気やすさを感じる絡みは。なんか二人のやりとりを見えない所からみてニヤニヤしたくなるな。




