バンパイアロード オリアーティの悪業とロクジョウ強襲
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ラッキの遺体は用水路周辺を定期巡回していた兵士によって発見された、遺体は役人に回収されて現在調査中だという。役人が回収したということは相当酷い状態だったに違いないと町のみんなは騒ついている。
仲の良かったターニャ達や商店の店主は悲しみに暮れていた。愛想が良く働き者のラッキは評判がよく誰からも好かれていて、住み込み先の商店の店主は跡取りの嫁にと本気で考えていたらしい。
ただ遺体を役人が回収した事が若干気になるが、夕方には綺麗に整えられた遺体が葬儀場に運ばれ知人達によるささやかな葬儀が行われ共同墓地に埋葬された。
綺麗に整えられていたのは酷い状態だったのだろうか?それとも何か秘密があるのか?埋葬が終わった時には日が暮れかけていた。1人の女性が死んでも町はいつも通りに機能している。
仕事を終えた労働者は食事して酒を飲み、飲食店や銭湯は人で賑わっている。さっきまで泣いていたターニャもいつも通りの笑顔で接客している。悲しくても前を向いて生きる姿勢は素晴らしいと思う。
きょうはジュリーさんの店でナシゴレンみたいな米料理と串焼きを食べている、白虎亭っていう正式名称を忘れてしまいそうだ。
この世界では不条理に若くして死ぬことは珍しく無いみたいだけど地球でも発展途上国や紛争地帯では似たようなものか。それだけ日本が平和だってことだよな。
ここの人達は若い娘が不条理に命を落としたって事で納得しているし、遺体を綺麗に整えてくれて良かったって感じてるけど俺としては気になる事が多過ぎる。
どれだけの情報を持ってるか分からないけど、明日バランさんに聞いてみようかと考えながら家路につく。ムタミの館に着くとムタミさん、カムリ、キースが俺の事を待っていた。
「待っていたよダイチ、葬儀に参列していたようだが猫娘の死に不審な点を感じたのだね。私の自室に来なさい、知り得る限りの情報を教えよう、カムリとキースもダイチと情報の共有をしたいようだしね」
ムタミさんの自室はギルドの会議室並みに防音処置がされていた、ギャバン卿が時々相談に来るみたいだから秘密の話が漏れないようにしてるんだろう。
「まずはカムリに昨日の夜の事を詳しく聞くのが良いだろう、おそらく賊と接触している。立場はあるだろうが私とダイチには話してくれないだろうか」
「ムタミさんとダイチになら話して協力してもらった方がいいだろうな。ムタミさんは知っているんだけど俺とキースはコーガ王国の出身で祖国を奪還する為の組織の構成員なんだ、ギャバン卿やヤースの王族の支援を受けて活動している」
「えっ、じゃあ俺が王族だって噂が流れるのが都合がいいって言ってたのは本当の王族の存在を隠すのにちょうどいいからなのか?」
「正解だ、王族と貴族は旧コーガ領で活動しているか、ヤース王族に保護されている」
「今のコーガとツゲ領は呪われた土地とシテ誰も近づかない、見たコトノ無い魔道具や魔法を使う集団がイテ魔獣を召喚して野にハナチ呪いヲ振り撒いテイる」
「この町を狙う組織とコーガ、ツゲ両国を滅ぼし呪われた土地に変えた集団は同一のモノだろう。だからギャバン様はカムリのいる組織、コーガ解放軍と共闘することにしたのだ」
「実際の話旧コーガ、ツゲ領での活動は手詰まり状態だからな。前線の拠点はこの町だから拠点防衛でもあるのさ」
色々と聞きたいことはあるけど今はロクジョウの町の防衛とこれ以上、犠牲者を出さないことが最優先だ。カムリ達やコーガ王国絡みの事は終わってからにしよう。
「昨日の夕暮れ刻に屋根の上を渡り歩いて巡回していたら女の悲鳴が聞こえたんだ、口を押さえられて声がほとんど出ていなかったけど耳を鍛えているから聞き取れたんだ。様子を見に行くと猫の半獣人の女が人気の無い路地で4人の男達に拉致されるところだった。人攫いなんか珍しくも無いから普段なら放っておくんだが・・・・」
カムリは苦虫を噛み潰した顔をして暫く黙り込むと両拳を握りしめ言う。
「4人共バンパイアだったんだ、しかもその内の1人はバンパイアロードで知ってる奴だ!俺は怒りのあまり無謀に戦いを挑んじまった!」
カムリはプロのエージェントだ、怒りに我を忘れるなんて余程深い因縁のある相手なのだろう。キースの顔色も悪く大量の汗をかき細かく震えている。
「マサカあいつナノか?あいつは禁呪で国とイッショに消えタンじゃないのか!?そんな!何かの見間違イじゃないのカ!?」
「見間違うはずがあるか!?霊力の強いお前の一族を実験と言ってオモチャのように嬲り殺し、王の親衛隊長だった俺の親父を!騎士や隠密をしていた兄貴達を八つ裂きにした極悪人の顔だぞ!お前の目だって!障害が残ったことだってアイツがやったことだろうがぁぁ!」
カムリが怒りを隠さず叫ぶしキースは顔面蒼白だ、こんなに感情を露わにした2人を見るのは初めてだ。いつもの冷静で理知的なカムリと何事にも動じずマイペースなキースから今の狼狽えようは想像出来ない。
「オリアーティか?」
ムタミさんが表情を変える事なく静かな声でカムリに尋ねた、冷静な問い掛けにカムリは少し落ち着きを取り戻したようだ。
「ああ、思わず飛び出しちまった。しかもムカつく事にアイツは俺を覚えていやがったんだ!「2度も住んでいる国が滅びるのを見れるとは滅多に無い体験が出来て幸せ者だなカムリ君」だと!?ふざけるな!」
「落ち着け!カムリ!」
再び感情的になったカムリに対しつい声が大きくなったが3人共俺の方を見て静かになった、ここは俺が話を進めた方がいいだろう。
「親や祖国の敵を前に激昂するのは分かるけど、今はこの町を守ることが最優先だ。カムリ、的確に事の顛末を説明してくれ」
「情け無い話だが激昂した俺は4人で連携した瘴気波に当てられて戦闘不能になって哀れな猫娘はヤツラのディナーだよ、畜生!」
「それから先は儂が話そう、調査の結果猫娘は一晩中嬲られながら血を吸われ続けたようだ。相変わらず胸糞の悪いことをするな、あのど変態め」
「オリアーティって言うのは何者なんだ?聞いていると相当アブナイ奴みたいなんだが」
「ツゲ王国の宮廷魔導師長だった男だよ、人族至上主義が謎の組織の操り人形だったなら奴が組織の一員でコーガ、ツゲ王国滅亡の黒幕に間違い無いな。全バンパイアのコアを使った超破壊の禁呪を発動して今も生きている事が何よりの証拠だ」
ムタミさんが冷静に分析すると、カムリが感情的になって言う。
「アイツは不死のバンパイアロードになる魔道具を発明して自らに使い、ツゲの王族や国民を操り人形にしてコーガに攻め込んだんだ!」
「オレの一族は占い師やヒーラーをシテイタんだけど、オリアーティが村を占領してから毎日酷い拷問ヲ受けテいたんだ、頭がオカシクなる薬を飲まされたタリ身体をきざまれたり変な儀式の生贄にされたりシテイタ!チカラの秘密を探るタメって言ってたケドただの弱いものイジメダ」
要約するとオリアーティって奴はサディストでマッドサイエンティストってわけか。2つの国を滅ぼしてロクジョウの町とヤース王国を狙うなんて絵に描いたような悪の組織の一員だな。
「話を元に戻そうか、ダイチは遺体を役人が回収して調べたことが気になっていたようだがバンパイア化の可能性があったから慎重に調査、処置したからだ。結果は単なる食事と娯楽だったよ」
ムタミさんが冷静に報告していると、顔面蒼白だったキースが見えないはずの目を見開いている。暫く硬直していたので心配になってきた時、唐突にに口を開いた。
「バンパイアロードが町の周囲を取り囲んでいる!全部で8体もいて一斉に侵入しょうとしている!町の中に3体!こちらはまだ動きが無いけどその内1人は間違いなくオリアーティ!あと其々に数体のバンパイアが従者みたいについている!」
「もう入っているのか!」
カムリの問にキースは再び目を見開き少しして答える。
「早くて10分、遅くても20分後!」
ムタミさんは緊張感が溢れる表情をしているが極めて冷静に魔道具を取り出して迅速に指示を出す、相手は現代官の息子さんだろう。
「ミクニ!大至急町に非常事態宣言を出せ!バンパイアロードの集団が町に侵入しょうとしている!住民の避難を最優先にし、正門に騎士団、北門に兵士と神官を配備!西門と東門は冒険者ギルドと傭兵ギルドに依頼する!」
対バンパイア用の装備は用意されているらしいがロードが8人もいると相当分が悪いようだ。
「8人はこの町の制圧、3人は間違い無くギャバン様が狙いだ!カムリ、キース!ギャバン様の元へいくぞ!」
ムタミさん達はギャバン卿の館に向かって走る。
「俺はギルドに協力する!死ぬなよみんな!」
3人と別れてからソルコマンダーを開く、やはり敵の数と町への到着時間には差があるようだ。とりあえず人口密集地に近い所から行くとするか、ギャバン卿は暫くは大丈夫だろうけど急いだ方が良さそうだ。
俺は走りながら簡易変身ポーズを取る「陽着!」そして「ブーストダーシュ!」掛け声と共に加速する、時速80キロは出るはずだ。
「ブーストジャンプ!」速度を落とさず屋根の上を駆け抜けて行く。ソルテラスの全能力を使ってこの町とギャバン卿を護るんだ!
次回はギャバン卿視点です




