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7.王都への帰還

 また、白竜の再封印作業が始まった。幸い、あれ以降は大きなミスもなく、封印の修復作業は順調に進んだ。


 ハワードもティオも元から真面目な二人だが、あのワイバーンの襲撃以来、作業に対する慎重さが大きく変わった。危ないと感じた場面では手を止め、こちらの指示を仰ぎ、面倒な手順も辛抱強くこなした。


 封印の破損は大きな失敗だった。だが、二人は危険を軽視しなくなった。その彼らの変化だけでも、あの失敗に意味はあったのかもしれない。


 次はアルベルトがいなくても、きっと二人を中心にして、再封印をすることが出来るだろう。そう確信できたことは、アルベルトにとって一番の収穫だった。


 そして、封印の強化魔法もかけ終わり、全ての工程が予定通り終わった。




 その夜、また屋敷で晩餐会が開かれた。3回目ともなれば、若者たちはわいわい楽しそうに飲んでいる。その後、アルベルトは再びリチャードの執務室にいた。ふたりで話すのは居酒屋ぶりだ。再封印と結界修復の報告を簡単に行う。その後、再びグラスが用意され、前回と同じ地元の蒸留酒が出された。


「いい香りだな。」

「宮廷魔導士団長のお墨付きとは、嬉しいね。」


 しばらく氷が入った酒をゆっくりと回してみる。ふたつの大きな氷がカタカタと狭いグラスのなかでぶつかり合う。もう沈黙を重く感じることはなかった。


「そうだ。レオの式の日程が決まったら、知らせてくれ。」

「お、来てくれるのか。」

「流石に来るのは難しいが、何かはしたい。」

「分かった。あいつも喜ぶだろう。」

「やっぱり、あいつが時期当主って、本当に大丈夫なのか。今回も、ガキみたいに、いつまでもはしゃいでさ。」

「この変わり映えのない辺境の地では、ワイバーン討伐なんて吉報があったら、1ヶ月はお祭り騒ぎだぞ。レオなんて、落ち着いている方だ。」

「そうか。そんなもんなのか。」


 その後も、ぽつぽつとお互いの近況を話し、夜が更けきらぬ前に解散した。



 宿へ帰る道、アルベルトは、ばばあの店に寄り、残しておいた酒瓶を受け取った。中身はもう多くはない。そして、そのまま、酒瓶を片手に大樹のところまでやってきた。さっきの酒が効いているのか、生暖かい夜だった。


「ここの領主様は、まだお前に未練があるみたいだぞ。」


 そう言って、木の根元に寄りかかるように座り、瓶から直に飲み始めた。背中に当たる根が妙に温かく感じられた。


「そのために、修行の旅に出たいんだと。笑っちまうよな。……それに俺も誘われた。」


 リックは気づいているのだろうか。この与太話に俺がどれだけ救われたのか。


 あいつを捨てて、王都に出た。だからこそ、その選択に悔いたくなかった。その結果、俺は誰よりも、「アルとリック」に縛られていた。


 でも、お前はそんな縛りはくだらないと笑い飛ばしてくれた。「アル」じゃなくて、俺を誘ってくれた。


「いつか、老いぼれ冒険者が二人、お前を迎えに来るかもしれん。それまで、ここで大人しくしてくれよ。」


 瓶を逆さにし、残りの酒を木にかける。


「お前の分だ。また来る。」


 そして、そのまま真っ直ぐに宿に帰り、寝床にもぐった。




 翌日。宮廷魔導士団の3人は、門の前に揃っていた。


「リチャード殿。お世話になりました。」

「こちらこそ、貴殿らの仕事に感謝しております。これで我々も安心して生活ができる。また、ぜひ十年後もお願い致します。」


 お互いに二、三歩前へ出て、アルベルトとリチャードが握手を交わす。その時、リチャードがさらに一歩踏みこみ、アルベルトの耳元で何かを囁いた。それにアルベルトが返す。


 元の位置に戻ると、リチャードがいった。

「では、お気をつけて。」

「では。」


 そしてアルベルトたちは背を向けると、振り向くことをせず、城門をくぐり、帰路についた。


「導師様、先ほどリチャード様と何をお話されていたんですか。」

「ああ、大したことではない。」


 さっきのことを思い出す。


「俺は、本気だぞ。」

「あほか。」


 大真面目な顔で、あいつは最後までふざけていた。


「でも、嬉しそうですね。」

「そうか。」

「伝説のふたりは……」


 アルベルトが鼻で笑いながら、足早に通り過ぎていく。


「おいていくぞ。」

「待ってください!」


 三人は足早に石畳の道を通りすぎ、細い山道を下っていった。


ここまで読んで頂きありがとうございました。よかったら、感想も教えてください。

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