最終章 第二話
唖然とした。攻めてきたのならば、ひとたまりもなかっただろう。誰もが命が助かったと思った。
祐先は立とうとするが。……しかし、立てなかった。しかたないので家来の三上に肩を貸してもらい、門前へ向かった。その状態のまま、安東の兵らに叫ぶ。
「役目、大儀である。」
こう、言うしかなかった。
祐先は最大の屈辱を味わった。どのような展開であれ、仇は討てないばかりか、敵に制せられた。引きずられるような格好で屋敷の中に入る。そこへさらに、曽我広忠が心に槍を刺した。
「工藤殿。私は二藤次の養子である前に、曾我兄弟の従兄弟にあたりまする。二藤次のいない今、親族である私を殺しますか。」
くっ……
「本来、義父上があなたに恨まれる筋合いはない。いくら育て守ったたといっても、手を下したのは兄弟です。それでも恨むのなら、私を殺しなされ。いつでもお相手いたします。」
“なんだと……お前は知らないのだ。私は江馬殿から聞いたのだ。真実を。お前ごときに言えるか。”
このとき、祐先は重大な事実に気づいた。二藤次を御家人にしようと推挙した人物は誰だったか。
同じ頃、外にでた真備は考えていた。
“しかし……この心変わりはなんだ。腑に落ちない。ただ一つ言えることは・・・殿はとてつもなく運がいい。それだけだ。”
そのまま、安東の兵らは屋敷の警護についた。いまだ屋敷の中で起ころうとしていたこと知らないかもしれない。真備は大将らしき見知った人物に駆け寄った。
「これはどうしたことですか。」
「小野殿。こちらにいらしましたか。たいそう主君がご迷惑をかけたようですな。」
「それはもういいのだが……殿に何かありましたのか。」
その大将は、果てしなく広がる夜空を見上げた。
「本心のまま、生きるべきだと。かつての因果は考えずに、次へ進む。誰が何を申せど、気にすることはない。」




