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第九章 第三話
「……私はお前らより永く生きた。故に、人の生業を知っている。人の温かさ、業の奥深さ……美しさ、儚さ。大きく笑い、大きく泣く。喚く。」
二子は黙って聞く。二藤次は続けた、少し大きめに。
「だが、腹は減る。眠くもなる。」
予想外の言葉に、思わず笑みがこぼれる。ただし隣で眠る女を起こさないように。
「……何が哀しいかって、何も知らないまま仇討ちで身を滅ぼすことだ。……止める気はない。だが、お前らは男だ。」
……一度ぐらい、男としての想いを持たないか。
ジャリジャリと、音が鳴る。二藤次は懐より束になった銭を出した。これは大円の黄金を替えたものだ。
「……女を買え。平塚や大磯でもいい。……これで女に溺れて、仇討ちが馬鹿らしくなったなら、それでいい。」
二藤次は、真顔だ。




