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第九章 第二話
二藤次は悩む。
それは頼朝を殺す決意が揺らいだからではない。……死ぬには若すぎる曽我の二子を憐れんでのことだ。
……刻々と、日は近づく。
とある月の夜、二藤次は最上級の酒を買い求め、それを虎御前に呑ませた。……彼女は決して酔うことはないのだが、さすがに遊女だっただけのことはある。……しかし、この時ばかりは酔ったふりをした。わざとごろ寝をして、少しだけ片目を開く。
これまで寝ているふりをしていた曽我の二子は静かに起きだす。……二藤次は虎御前を庵の部屋に置いたまま、二人のいる寝床へと移る。
布団の上、三人は胡坐をかき、神妙な面持ちで互いの顔を見る。……顔といっても、庵の部屋を分かつ襖から漏れ出る光しか明かりがない。ほとんど見えもしないが、神妙だということぐらいわかる。……三人は外の見える木窓もあけないので、寝床は月の光すら遮られている。
二藤次は、二子に問う。
「心に、揺らぎはないか。」
二子は、同じくして頷く。
二藤次は、憐れむ。




