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第七章 第八話
兼任率いる五千の軍勢は八幡平より平泉を目指す。北上川を南進し、胆沢に陣を構えた。かつて悪路王の本拠があったという。
……何を思ったか。兼任は弟たちを呼んだ。次弟で僧侶の大円と、末弟の大河二藤次忠季である。
曇る夜、松明が陣中の白地に影をなす。三人は丸いござに座り、真ん中に酒を一瓶置く。
兼任はまず、大円に命じた。
「お前は坊主である身分を使い、坂東へもぐりこめ。鎌倉方の話をこちらへ送れ。」
大円は“御意”と返し、軽くうなずく。次は二藤次だ。
兼任の口は、急に重くなる。辺りは静まり返る。……すると兼任は酒瓶を持つなり、封を素手でこじ開けた。次に言う。
「お前は、裏切り者になれ。」
そう話すなり二の句を告げさせず、酒瓶の注ぎ口から直接飲み干そうとする。だが決して若くはないので、途中でむせた。兼任の顔は赤くなるが、忠季の顔は青ざめる。大円は二人を静かに見守る。
…………
兄弟ゆえ、訳はわかる。
二藤次はは兄の持っていた酒瓶を奪い、残りを勢いよく飲み干した。




