31/77
第六章 第一話
兼任の死体が見つからない。鎌倉軍は裸になった兜味山を探したが、彼の物らしき鎧も見当たらない。
逃亡したのなら、わからなくても仕方ないのだが、やはり証拠がほしかった。乱を鎮めた証を。
しかたないので、たくましそうな顔の死体を選び、首をとる。それを塩漬けにして、鎌倉に送ることにしたそうだ。
高季は、一握の望みをかけた。もしかして奴は生きているのではないかと。
“いや、生きている。”
高季は確信していた。やすやすとあきらめる男ではない。
きっと、どこかにいるはずだ。今すぐ探し出して、ともに鎌倉を討とう。船はまた作ればいい、時間はかかるが。 兵を起こす時期も大切だ。鎌倉も前回の反省を踏まえ、ある程度の兵力を浪岡という外ヶ浜と東日流の境の地においた。かつて兼任は鎌倉軍が引き上げていった後を狙って蜂起したのだから、油断するまで待とう。
“準備はしておかねば。”
“それまで、兼任。生きていてくれ。”
しかし、いつできるだろうか。時がすぎるだけで、奴は彷徨ったまま。高季は真備を呼びつけた。
……他の者に聞かれぬよう、誰もいない雪原で打ち明ける。




